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東京都庁職員について
個人的に衝撃的なニュースを目にしました。東京都庁事務職(1類B)の令和6年度職員採用の倍率が1.5倍だそうです。
最初は新聞の記事にさらっと書いてあり、見逃しそうになりました。数字を見て、いくらなんでも低すぎる、何かの間違いだと思ったのですが、東京都のサイトも確認したところ、確かに1次試験の受験者数が1,902人のところ、最終合格者数は1,228人となっており約1.5倍で間違いなさそうです。
都職員1類A、1類B採用試験の実施状況|東京都
採用予定者数765人のところ、辞退者数を見込んでかなりのバッファを持たせている数字ですが、3人に2人は合格するとは、かなり衝撃的です。
あまり昔の話をするのもなんですが、私が受験したときは9倍ほどであったように思います。それが今や1/6です。私も受験した身からすると、結構ショックを受けています。
世間では建設業や製造業、そして医療介護職などの多くの業種が深刻な人手不足に苦しむ一方で、事務職は人余りの状況にあると言われています。
増えた大卒、職とミスマッチ 事務希望17万人余る 人手不足の現場は敬遠 - 日本経済新聞
単純に比較できるものではありませんが、職種別の有効求人倍率は事務職で0.32で1つの求人に対して3人が応募している状況ですが、建築・土木・測量技術者の倍率は6.67で一人の求職者に6つの会社が門戸を広げて待っている状態です。
【2024年11月】職種別の有効求人倍率と採用市場の動向を解説 | エン・ジャパン株式会社
職種別で言えば、圧倒的に事務職は溢れている状態です。そして公務員は、事務職であり、本来であれば「人気」であるはずです。しかし、実際は倍率は低迷しています。正直に言えば倍率だけで言えば、うちの自治体の方が高い状態です。
いったいなぜなのでしょうか。
1 東京都にある企業
東京都には名だたる企業の本社が集積しています。そして、その大企業は軒並み初任給を大きく上げています。
初任給が40万円を超えたと話題になった東京海上日動は千代田区ですし、東洋経済の初任給のランキングで一位だったサイバーエージェントは渋谷区、2位の日本M&Aセンターは千代田区です。
東京海上日動、初任給最大41万円 来春入社の大卒、転勤が条件:時事ドットコム
40万超も!「初任給が高い100社」ランキング 人材確保のため新卒の初任給引き上げが相次ぐ | 就職四季報プラスワン | 東洋経済オンライン
いまや、初任給が30万を超える会社も珍しくありません。そして、その会社の本社のほとんどは東京にあります。
一方で、東京都職員の初任給は、最近上がったとはいえ、225,500円です。都庁に入った新入職員の方と一緒に仕事をしたこともありますが、非常に優秀な方でした。きっと民間企業に入っても問題なくやっていけるであろうと思いましたが、民間と公務員ではスタートから10万円弱の差がついています。
初任給一覧|給与関係|東京都人事委員会
もちろん仕事において、お金が全てではありませんし、公務員を目指す人が初任給を重視することはないということは分かります。
一方で、働くうえで給料は無視できるほど些末な要素ではありません。むしろ、働くうえで上位5位には入る重要なものであると思います。
また、公務員の給料は民間の平均給料に準拠して上昇するので、民間よりも上がるペースは遅くなります。現在、賃上げと言う言葉が大きなトレンドとなっている中で、その波になるのは、民間よりも遅くなるであろうと予想できます。
そうすると、給料の面から考えると、どちらにしろ東京都で働くのであれば、民間企業に入るかと考えがちになるのではないかと思います。
また、自分のキャリアを考える上でも、民間企業を選択するというのは合理的とも考えられます。マイナビで、学生に人気の会社は稼げて、かつ自分のビジネススキルがつきそうだなと思うところばかりです。
日本経済新聞連動特集 - 特集 - マイナビ2025
学生の進路相談に乗った時などに、よく聞くのは、「公務員は民間に入った後で、キャリア採用として考えたい。」と言うことです。
民間に入って、市場原理が働くところで、自分の力を伸ばし、自分には向いていない合わないと思ったところで、公務員を改めて考えたいというものです。
今の公務員試験は、民間に似てきているところもあるので、そういった考えが受け入れやすい土壌もあるように思えます。
正直、自分が学生のころよりも、今の就活生の方がしっかりとキャリアについて考えているように思いますし、人生設計をしっかりしているなと感心します。
周りに魅力的な民間企業が多くある東京都は、私が考える以上に、民間と人材獲得競争を熾烈に行わなければいけないのかもしれません。
2 東京都への憧れ
それでもやはり東京都庁での仕事は良いなと思います。地方公務員としては、やはり他の自治体とはくらべものにはならない予算規模には驚かされます。
令和7年度東京都予算案の概要|東京都
東京都の令和7年度の当初予算の一般会計の額は9兆1580億円です。特別会計などを含めた予算は17兆円を超え、これはスイスの国家予算とほぼ同じ規模です。
単純に職員数(75,508人)で割り返すと、一般会計だけでも1職員が1億円以上もの予算の権限を持つことになります。一つの仕事やプロジェクトを行うにしても、大規模な予算がバックにあるのでは責任の重さもさることながら大きなやりがいも得られると思います。
現在、私は仕事の一つで自治体のカスタマーハラスメント対策の担当をしているのですが、東京都はカスタマーハラスメント一つにしても、中小企業への奨励金の給付などを中心に59億円の予算をつけています。正直とても真似できる気がしません。
東京都 カスハラ対策実施の中小企業に40万円の奨励金支給へ|NHK 首都圏のニュース
もちろん、地方税制の偏在の問題や、東京一極集中の是非といった議論があるのも分かりますが、ただただ、同じ公務員として凄いと感心することが多くあります。
私は東京都職員ではないため、実際に都庁で働いた場合にどれだけ大変なのかは、わかりません。ただ、民間企業と比べても、これだけの予算を誇る組織の中で働くことができるのは、わずかではないかと思います。
だからこそ、より職員に報いてほしいなと思います。こうした大きな額を動かし、多くの都民を支える都庁職員は、やりがいはあるが大変な仕事ではないかと想像します。より高い給料であったりより柔軟な勤務形態であったり、とにかく働きたいと思える職場であってほしいです。
多くの人が公務員になることを望む世界が良いのかどうかは置いておいて、より多くの優秀な方が、都庁職員となってほしいなと、東京から離れた地方で働く公務員が勝手に願う次第です。