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未来人材ビジョンと公務員

経済産業省が公表した未来人材ビジョンが面白いです。

2030年、2050年の産業構造の転換を見据え、未来を支える人材を育成・確保するための大きな方向性と、今後取り組むべき具体策を示すものとして、有識者で構成される「未来人材会議」で議論された内容をまとめたものです。

たくさんのデータを紹介しており、109ページの大作となっていますが、ほとんどのページが1つのグラフのみで構成されており、国の資料にしては珍しく、余白が多くて詰め込みすぎていないため、大変見やすいです。

公務員として働く人にとっても、非常に参考となるデータがありますので、今回は少し紹介させていただこうと思います。

0 読んだ感想

・将来の公務員の雇用は少なくなりそう。
・日本人は所属組織に対する愛着も低く、自分で勉強もしない。
・動く人や学ぶ人と、そうでない人で大きく差が開きそう。

1 求められる人材が変わる?

まずは、こちらです。

(出典 経済産業省 「未来人材ビジョン」)

意識・行動面を含めた仕事に必要な能力等を、56の分野に分けて、現在と今後に必要な能力を分析したものです。

2015年と、つい最近まで求められていた事柄は、以下のとおりです。
「1位 注意深さ・ミスがないこと」
「2位 責任感・まじめさ」
「3位 信頼感・誠実さ」でした。

これは、今の派手さよりも事務作業やデータ収集、根回しなどの裏方作業が多い公務員の業務とも軌を一にします。公務員として優秀であれば、ビジネスパーソンとして、仕事をする上で求められる能力を備えていると言えるかもしれません。何となく自信が持てそうです。

しかし、将来の2050年に求められる能力は、ガラッと変わります。
 1位 問題発見力
 2位 的確な予測
 3位 革新性

2015年は、どちらかというと堅実であることが美徳であったにもかかわらず、2050年はイノベーティブな人、自ら仮説を立てて、課題を発見し、革新的な手段で解決をしていこうという意欲のある人材が重宝されるようです。

公務員にとって、非常に苦手な分野です。前例踏襲、変化を起こすのであれば理由が必要、変えるための予算もないということが日常茶飯事なことを思うと、2050年に、公務員として今備えている能力の価値はかなり減っていくのではないかと思います。

2 そもそも雇用が減る?

こちらも、なかなかショッキングです。

(出典 経済産業省 「未来人材ビジョン」)

デジタル化と脱炭素化が進展して、高い成長率を実現できると仮定すると、公務において必要となる労働者数は30%も減少すると推計されています。

この要因としては、2つだと考えられます。
・事務作業はAIやロボットで代替されやすいため
・少子高齢化で顧客である住民が減っていくため

代替により業務が効率化されることは歓迎されることですし、人口減少は個人でどうにかできることでもないため、この潮流を止めることは困難でしょう。

今自分のいるフロアのうちの3割が、30年後にはいなくなると言われると、なかなか背筋が寒くなります。

一方で、こんなデータもあります。

(出典 経済産業省 「未来人材ビジョン」)

AIやロボットで代替されやすい事務従事者は2020年よりも32%も雇用が減るとされています。「おおっ公務の減るペースとほぼ同じだ。」と思う一方で、サービス職業従事者は14%増加するとあります。

事務従事者とサービス職業従事者の違いを考えてみます。
独立行政法人労働政策研究・研修機構が公表している「労働力需給モデル(2018年度版)による将来推計」に、OECD による日本の職業別仕事の自動化リスクが掲載されています。

これによると、「一般事務員、キーボード入力事務員」や「経理・在庫管理担当事務員」については、約50%が自動化のリスクにさらされるとあります。

一方で、サービス業とは、顧客に対して形のないサービスを提供するものです。つまりは、顧客である住民に対して価値を提供できれば、サービス業になるし、ただ、決められた事務作業を行っている場合は事務従事者になると考えます。

いずれにしても、公務員は旧来型の事務作業、経理業務、書類作成のみしかできないのであれば、雇用はどんどん減っていきます。公務員としても、何らかの価値を提供する「サービス業」に回って、代替の利きにくい人材となる必要があるでしょう。

3 組織に執着しない?

雇用状態もなかなか衝撃を受けました。

(出典 経済産業省 「未来人材ビジョン」)

「日本企業の従業員エンゲージメントは、世界全体でみて最低水準にある。」とあります。
エンゲージメントは、人事領域において 「個人と組織の成長の方向性が連動していて、互いに貢献し合える関係」といった意味で用いられ、要は会社に愛着があるか、会社とともに成長できると思う、かというものです。

日本は際立って低い数値です。なんと、20人に一人しか、組織に愛着がないというものです。

さらに、こちらの表とも言いたいことは一致しています。

(出典 経済産業省 「未来人材ビジョン」)

現在と同じところで、今後も働きたいと思う人の割合は、他国と比べて、とても低い数値にあり、およそ半分の人が、継続して働きたくない=辞めたいと思っていることがわかります。

この調査は、1万人の就業者を対象に行われたものであるため、公務員といえども例外ではありません。多少、安定さを求めて入ってくる方が多いため、数値は変わるかもしれませんが、いずれ辞めたいと思っている人の割合は他国と比べて多いといえそうです。

一方で、こんなデータもあります。

(出典 経済産業省 「未来人材ビジョン」)

我慢して働いてはいるけれども、転職しようと思っている人は四分の一しかおらず、ましてや起業しようと思う人は、六分の一もいないという結果です。

5%しか組織に愛着のある人はいないが、生活のためにと思って、残りの45%は我慢して働いているようです。しかし、転職しようとか起業しようと思う人はごくわずかです。かなり、ワガママな気がしてきます。

4 日本人は勉強しない?

個人的に一番衝撃的だったのは、次の調査でした。

(出典 経済産業省 「未来人材ビジョン」)

アジア・オセアニア圏の国と比べた社外学習・自己啓発を行っていない人の割合です。他国と比べて、倍以上の開きがあり、日本人は著しく会社以外で勉強しないことが見て取れます。

以前にも、「公務員は時間外勉強すべきか」というテーマで記事を書きましたが、公務員は勉強しなくても何とかなるけれども、生じた結果は受け止める必要があります。

社外学習・自己啓発を行っていない人は、公務員といえども、評価されにくくなり、重要な仕事を任せてもらえず、給料に差は出るでしょう。先ほどのテーマでいえば、転職もしづらくなるかもしれません。

しかし、世の中のおよそ5割の人が、それでも良いと受け止めています。半分の人は自己研鑽をする気がないということです。

6 未来人材ビジョンの感想

ここまでをまとめると
・公務員は事務作業だけできる状態では雇用を失うかもしれない。
・社員・職員は組織への愛着がほとんどないが転職や企業をする気もない。
・自己研鑽もしない。

将来、組織から追い出されるかもしれないリスクがある。まぁ、もともと所属組織は好きではないが、追い出された後のための備えや努力はしないという結果です。なかなかえーって感じです。

一方でチャンスでもあります。まずは、何といっても、現在の組織で働こうと思っている人でも、勉強さえすれば、半分の人を出し抜くことができます。

さらに、努力の方向も、ある程度決まっています。どうやって顧客に価値を提供するかです。AIや機械に置き換えづらい、自分にしか提供できない価値は何か考え、自己研鑽をして能力を高めていきましょう。

代替できない価値を手に入れることができたならば、貴方は、将来も必要される労働者である15%の中に入ることができます。

そして、可能ならば、組織に愛着をもって貢献していきましょう。繰り返しになりますが、エンゲージメントは、個人と組織の成長の方向性が連動していて、互いに貢献し合える関係です。

組織が大きくなれば、あなたへの給料も増えます。組織に大きく貢献すれば、貴方は組織の中で重要なポジションを得て、肩書を手に入れることができます。それは、日々のあなたの暮らしをスムーズにしてくれるはずです。

組織とウィンウィンの関係を築きましょう。そうすれば、あなたはわずか5%の人材になることができます。

考えようによっては、とても先行き明るいとも思えます。動けば、学べば、リスクは減り、稀有な人材になるチャンスが転がっています。

私は、この未来人材モデルを見て、かなり前向きになることができました。ぜひ読んでみて、自分の感想を考えてもらえればと思います。

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