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首長出席行事の対応について
今回のテーマはマニアックです。地方公務員なら、あ~と思う人もいるかもしれませんが、万人受けするネタではありません。たまには良いかなと思うので、まとめてみようと思います。
地方公務員にとって、私が思う3大対応に苦慮する業務が、議会対応、予算編成、そして首長の出席行事の対応です。
首長の出席行事と言っても、会場に行って挨拶して帰ることがほとんどで、外から見ている分には、そんなに大変ではないだろうとも思うのですが、実際に調整をする側に立つとなかなか大変です。
まずは、行事の数が多いです。私の所属する自治体は大きな規模ではありませんが、首長が出席する行事の数は、一週間だけでも両手の数に収まり切れないのではないかと思います。
○○定期大会や記念式典、スポーツ系や観光系など、首長が何かに招かれて挨拶する機会は事欠きません。
そのような場合、さすがに外務省の「ロジ」ほど物々しくはありませんが、幹部も首長出席となると目の色が変わりますし、上手くできて当り前と思われている業務であるため、失敗したときは結構怒られます。
こうした首長出席行事は部署によって偏りはありますが、私が今所属しているところは、イベントが多く、主担当になったりヘルプに入ったりと、対応をしている感覚があります。
喜んでいいのか分かりませんが、先日、上司から「君は年齢のわりに、こうした出席行事を相当捌いているよね。」という言葉もいただきました。数年後に、noteを見返してみて、「こんなこともやっていたな」と言う備忘録もかねて、首長の出席行事対応についてまとめたいと思います。
1 まずは日程調整
どんなこともまずは日程調整から始まります。大体は、主催の相手方から日程が固まっていない段階で打診があるか、すでに日程が固まっていて招待状(招待メール)が送られてきます。
打診がある場合は、うちの首長に「どうにかして出てもらいたい」という思いが強いことから、日程候補を何日かもらって、首長の秘書に日程調整を依頼します。(●月×日13:00~16:00または●月△日10:00~12:00のどこか30分間出席希望といった感じです)
日程が決まっている場合は、行事の日程を首長秘書に送り、
①日程全てに参加できるか
②日程の中で挨拶だけでもできないか
③全く出席できないので代理出席をするか
以上の3つの選択肢からチョイスしてもらいます。大体②または③となることが多いです。
行事の開催日から日程調整のスタートまで、時間があればあるほど、出席が叶う場合が多いのですが、こればかりは相手方の都合であるため、こちらではコントロールできません。
なお、一度、うちの首長と相手方で、とある対談を設定するとき、1週間前に日程が固まったと相手方から連絡があって、日程調整を恐る恐る依頼したら、首長秘書にとても怒られた経験もあります。
大体1週間ほどで①~③のどれかになるか回答があります。
①(全体参加)の場合は、運がよかったとそのまま幹部説明の準備に入ります。
②(部分参加)の場合は、相手方と調整を開始します。
③(代理参加)の場合は、副首長が出席できるかどうかを私の自治体では秘書同士で調整してくれるため、副首長の出席が叶えば①と同じく幹部説明に進みます。
②の時間限定で出席できるとなった場合は、そのまま主催者に、「挨拶だけなら出席できる可能性があるがどうか?」と聞いて、OKが出れば幹部説明へ進み、NOならば副首長対応を模索する形になります。
2 幹部説明
首長または副首長の出席が固まった段階で、説明に必要な資料を作成し始めます。作成する資料は、①説明用ペーパー、②会場図・座席図、③誘導導線、④挨拶メモ、⑤役割表です。
①の説明用ペーパーは、自分が幹部に説明する用の概要をまとめたものです。行事の目的や、主催者の肩書、規模、自治体との関係な度に加えて、式のタイムスケジュールと首長の役割などをA4一枚にまとめます。
基本的には自分が「この一枚さえあれば説明できる。」というものであればいいので、特に様式にはこだわっていません。5分程度で中身を説明できるように、簡単にまとめます。
②の会場図・座席表は相手方から取り寄せたり、ホテル等で行う場合はホテルのサイトに会場図が載っていたりするので、参考にしたりします。時間がある場合は、現地に行って許可を取ったうえで写真を撮って、資料に張り付けたりもします。
③の誘導導線は、車から降りた首長を席まで、どのように案内するかを示した図になります。②の会場図の中に矢印を入れて、車から席まで、席から車までスムーズに移動ができるか机上で確認します。
④挨拶メモは、首長の当日の挨拶の参考用に作成します。首長は政治家であるので、当然ながら私のような一般行政職よりもはるかに挨拶が上手く内容も洗練されています。
一方で、自分にしか書けないこと、この行事に関連した最近のトレンドや県とのつながりなどは、自分でたたき台を作ったうえで、幹部にも推敲してもらい、首長秘書に提出します。(これは自治体の中でもルール・お作法がいろいろあるのではないでしょうか。)
当然ながら、行政が作ったメモを、そのまま読むことは稀で、最初の時候挨拶的な部分以外、全て異なった内容で話されることもままあります。まぁそんなもんだろうと受け止めています。
⑤の役割表は、時系列に沿って、それぞれのプレイヤーの役割を示した表です。
10:00 課長:会場到着、係長&私:誘導ルート確認、主催者:会場準備
10:20 課長:首長秘書から出発の電話受電、係長:主催者に連絡、私:受付の準備
↑のような感じで、エクセルで簡単にまとめます。
資料を作成し終えたら、係長に内容をチェックしてもらい、それぞれの幹部の説明に入ります。私の所属の場合だと、課長→担当部長→部長とそれぞれ計3回説明を行います。それぞれ、時間を取ったうえで、簡単に説明します。
基本的に上記の5種類の資料で説明しますが、幹部によって着目する資料が違うのも面白いところです。首長の導線さえわかればいいという人もいれば、スケジュールに見落としがないかを気にする人もいます。
しっかりと説明の時間を取っておくと、そこで見落としていた部分も見つかることもあるので、私は、粗々でもいいので説明を早く行ってしまおうというタイプです。
3 当日の対応
当日は、首長のアテンド役として課長、全体を見る人として担当者(私)、担当者のフォロー役として係長の3名で対応することが多いです。
大体、首長の到着の30分前を職員の集合時間として、私は大体さらにその30分前に会場に到着することが多いです。
その時間を利用して、主催者に挨拶したり、挨拶を録音するためのICレコーダーをセットしたり、首長の歩く導線を辿ります。
あとは、トイレの位置や首長が喫煙者の場合は喫煙場所、エレベーターが使用できない場合の代替ルートなどもチェックしておきます。
また、首長の役割が挨拶のみである場合は、課長が到着するころには行事が開始してしまい、会場の中に入れないということもあるので、会場が準備中の間に、中の様子が分かるように写真を何枚か撮っておいたりもします。
そうこうしているうちに30分ほど経つので、課長・係長との集合場所に向かい、合流します。上司にも、首長の歩くルートを確認してもらい、実際にチェックをしてもらいます。
大体、到着の5~10分前に秘書から連絡があるので、その後は役割表のとおりに動き、首長を迎え、席に案内し、挨拶をしてもらって退場してもらいます。
こうしてまとめてみましたが、今までに数十回ほど行事参加を調整しましたが、いくらやっても首長出席となると、緊張感があります。
これまでのハプニングとして、
「渋滞で首長が来ない」
→主催者に相談し挨拶を後ろにずらしてもらう
「SPの対応が必要になるVIPが来ることになった」
→当日現場で導線を組みなおし
などなど、冷や汗が出るような経験も沢山ありましたが、総じて、首長が席に着いたら、やるべきことの9割は終わった感じです。
今のところ致命的な失敗はしたことがありませんが、失敗したとしても怒られるだけで、死ぬことはないので、どこか楽観してもいます。
同じような経験をしている公務員の方に共感を得ていただければ嬉しいです。