#173
誰も招いたことのない、静かな部屋。
窓からは草原が見えていて、
名前の知らない花がぽつぽつと咲いている。
夜は灯りが入る。
青い、琥珀糖のような灯り。
正午の控えめな光が入る白い部屋。
窓枠のペンキは均一じゃ無い。
日に焼けた、サンルームのよう。
ソファにもたれた君が言う。
〝いい部屋だね〟
そうでしょう、私は独り言のように言葉を口にした。
君は違和感なくソファの上におさまっている。
ひとりでも十分楽しそうな君の隣にいると、
酷く安堵してしまう。
求められすぎると捻れてしまう。
君は私に何も求めてない。
***
景色を切り取って集めたような部屋の中から
きっと外へは出られないんだ。
そう、決まっているみたい。
君が笑う。
〝思い出して〟