ヴィオレ
きれいな言葉で世界を紡ぐ。
青いフィルター、夏の呼吸。
削ぎ落とした鋭角は
磨いて、磨いて、ひとつずつ夏の宝石に還す。
美しいものが好きだった。
あなたに笑っていて欲しかった。
私はわたしが生きていける世界を描きたかった。
誰かがかいたエンドロールに取り残されてしまわないように。
自分の中から取り出した美しさで
心象世界を組み立てる。
私は宝石ではないから、
補わないと削るばかりで美しさを取り出せるわけじゃない。
外側が汚れていくたび音を立てて扉が閉じる。
青い世界に赤が混じりだし、
濁りきったら真っ暗闇へ。
受け取れない毎日が続く。
誰とも違う自意識。
同じ言葉を持たない苦しみ。
話せば分かる、はもうとっくに出来なくなった。
血の呪い。
外側から瓦解する。なにもかも。
そして多分、生まれ変わる。
まったく違った別のなにかに。
心の緞帳をめくって、不純物を瓶におさめる。
サンルームの戸棚にしまうたび、
私は今日も息ができるようになる。
心が還るあの海辺の町に、
今夜も雨が降っている。