frasco
あっちもこっちも工事中。
地上が明るいから、私の街には夜が来ない。
今夜も快晴、青く、そして白く。
枕に耳を当てると地下鉄の走り去る音がする。
通りを歩く誰かの歌う声が聞こえる。
音がすると眠れないなんて、
はじめからそんな繊細にできてはいないし
9階の白昼にみた景色はまるで奥行きがない
水色の、ノートパソコンの上に突っ伏している
イヤフォンから可愛いあの子の泣いてるような歌声
才能に気づくのが早い人はいいなぁ
なんだかこのまま、酸素に溺れてしまいそう
ただ今は、静かな夜が欲しいだけ
深く眠ってみたいだけ
ただそれだけなのに、なんだかいつも叶いそうでかなわない なんでかなぁ
誰かの一瞬を切り取って、私の額縁にあてがっている
美しい人の 綺麗な人の 儚い人の 狂った人の
他人のふとした仕草は、こんなにも美しいのに。
誰かから見た私の何気ない一瞬は、美しいですか?
自分のことはわからないようになっている。
そんなルールだ。
心の澱
フラスコの底に溜まった不純物
それが私を、確かに今日まで形成してきたもの。
体が遠くへ行ってしまっても
掴まれた心は簡単に離してはもらえないようだね。
混ざらない液体を光にかざしてみている
今日も夜はあかるい。