羽根の色は。
梅雨の或る日のこと。
雨の動物園へ出かけた。
ずっと動物園が苦手だった。
幼少期の他には、学校の行事以外に一度も行ったことがない。
(サファリパークは一度あるかも)
檻や柵に囲まれた動物を見ていると、
ペットショップのショーケースに並んだ子猫や子犬を見ている時と同じ気分になる。
同じことなのに水族園はなんとなく好きだった。
水の中では生活できない性質からか、どこか神秘的で惹かれるものがある。
動物が苦手。
人間が苦手。
生き物が苦手。
多分、生が、生きることが苦手。
そんなこと話したら、何言ってんだって怒られてしまうよね。
でも本当にそう思うんだ。
拗らせてるとか、構ってちゃんだとか
どう思われようと構わないけど、
誰かの気を引きたい手段なんかで言えないくらい、
心底それを感じる時がある。
それを注視しすぎると、
たちまち毎日は生きにくくなる。
まるで檻の中に入れられた動物みたいに、
自意識の檻に囲われて、他人が酷く得体の知れない生き物に感じる。
1日の大半を過ごす仕事環境が変わって、
明るい人に囲まれていると気がつくことがたくさんある。
ありがたい事に、
「そうだよね、あなたはそう感じるんだよね。
面白いよね」ってただそうである事を受け入れてくれる人ばかり。
自分と他人の線引きをしっかりできている人は、
むやみに相手を卑下したり否定したりしない。
私は自分があまり得意じゃないけど、
絶望してhateしているわけでもないんだ。
ただみんなが言う普通と少し違ってしまう自分のことも、大切な一人の存在として大事にしたい。
それが当たり前にできるようになるまでまだ時間はかかりそうだけど、
この環境、この人たちといるとできる気がしてくる。
(前に頂いた画像)
ハシビロコウが大好きで、
雨の動物園にわざわざ足を運んだのもこの鳥が見たかったから。
羽根の色は、夢で見たハシビロコウと同じ色だった。
首元を抱きしめて眠る夢。
薄水色のフィルターがかかったような優しい夢だった。
たまに生まれてきた事を後悔したくなる気持ちになる日。
好きなものを全て撥ね退けて、一切合切忘れてしまう日。
そんな日に、たったひとすくいでもいいから
好きな人やものの輪郭を思い出したい。
これから先、苦しい気持ちになった日は何度でも思い出せたらいい。
そんな人にこれからも出会いたい。
そんなものにこれからも出会いたい。
そんなお話を、作れる人になりたいと思う。