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映画とコーヒーと彼女。
「あなたはもっと幸せな映画を観たほうがいいです」
そう言ってその子は私に、
マンマ・ミーア!のDVDを半ば強引に貸してくれた。
私はスワロウテイルとかPiCNiCが好きだから、
そのDVDの良さはその時あまり分からなかった。
数年の時間が経って、
その子が今どうしているのか どこにいるのかは分からない。
外国と映画とコーヒーが好きだったその子は、
日本に居ないかもしれない。
とてもマイペースで心根が優しい彼女と過ごした2年くらいの時間は、とても穏やかだった気がする。
真逆な思考回路を楽しんでいるように、
私と接する度に見つかる新しい感情や感覚を反芻していた。
「へぇ、そんな考え方があったんだ。
知らなかったな」
当たり前に受け入れる寛容さ。
純真な心。
もし人間の多くが彼女の様だったら、きっともっと優しい世界になるだろうな。
時々取り留めもなく彼女の事を思い出す。
あなたは今どこに居ますか。
きっと嫌なことや悲しいことは眠りの国へ置きわすれてきて、
今日もどこかで楽しくやっているのだろうね。
そうあって欲しい。
あの日貸してくれたDVDの意味がどんなものだったか、今ならちゃんとわかる気がする。
あなたのように生きれたら
いつもそう思ってた。
忙しい時期が去ったら、
美味しいコーヒーと一緒に幸せな映画を観よう。