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赤橙
蒸し暑い晴れた夕方。
静かで嫋やかな空気をたたえた居住区を抜ける。
どこまでも、歩いていく。
ACIDMANの赤橙という曲が大好きだったことをふと、思い出した。
きっと幾つも幾つも赤いレンガを積み上げてきた。
今まさに振り返っていて、
その魔法を辿っているんだって思った。
あの頃私の目に映っていた景色は
どんなだっただろう。
案外悪くなかったって、今思える。
すべての初期微動のような、
未熟で青い潔い時間。
その空気や色は、形を変えても無くしていない。
今はもっともっと、その色がはっきり見えているから、
地球の裏側にだってきっと、
思いは行けるし巡ると思う。
好きな物は数えたりしないから
忘れてしまうことも多いけれど、
何かが起爆剤になったりきっかけの合図をキャッチすると瞬時に思い出す。
そんな好きな物がまだここに沢山あってよかったな。
忘れてしまっても。
必要ならきっと失くさない。
あなたも。きっと。