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夏の始まり。

透明な体が、冷たい水を飲み干す季節を待っていた。

眠ったままの仄明るい部屋で
気がつくと原風景の中を歩いている毎日

たしかに望んだ世界の方へ時間が動き出していた

どんな時も自分は変わらない
何処にいても
誰といても
それは些細なことで

いつも一緒にいる自分の世界の端っこが
この手を掴んだまま離さない

真昼の月に近づいた、遊歩道の上
あの歌の歌詞は全然忘れられそうにない
指先の陰影
虚ろな視線の先にあった白昼夢
湿った花
一切が夏の心象になって
また思い出すサンクチュアリーの質感

境目が曖昧になる夏季は
毎年呼吸することを思い出す

深く深く潜って
また夏を泳いでいく

沢山の言葉と一緒に、
星を掬うように歩いて行く

この時間を、どこまでも

透明な体が夏のしずくを飲み干す、その時まで。



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