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メーデー

ーーーー目も眩むような夏の日。
君はひとり、この世界から脱落した。


困った顔でいつも笑っていた。
僕はそれがどこかくすぐったくて、疎ましくて、
君とまともに話したことなんて
無かったかもしれない。


〝同じクラスの女子生徒〟

僕らの接点は、その一点だけだったかもしれない。


囲われた世界。

過ぎてしまえば燃やせてしまうような、
ゴミ程の価値も残らない日々かもしれない。


浅い呼吸を気にも留めていないような素振りで落ち着けて、
一分一秒が過去になっていくのを
教室の一番後ろからいつも眺めていた。


不自由で矮小な世界。

この囲いの中で何が起きようと、自分には全てが遠くで起きているどこかの国の戦争と同じように
実感なんてなかった。


ーー何かが壊れている感覚。


それが何なのか、
正体をつかむ気力さえ出せないような
そんな毎日だ。


消え去っていく時間が、
この場所で2回目の夏を連れてくる。
夏服の裾が軽い。
ヒグラシが啼いて茜色に染まった教室の、
その机の上に花が置かれていた。

そこが誰の席かなんて、
確かめなくてもどうしてか 分かってしまうんだよ。




一度だけ、教室で君が泣いているのを見かけたことがあった。

あの日、あの瞬間が、
僕らの分岐点だったのだろうか。


君が消えたあの日から、そんな事ばかり考えている。

誰かが救われる未来は、
君がいない今日だったのかもしれない。

僕が救われていた日々は、
君がいた過去だったのかもしれない。

聞こえないはずのあの日のチャイムが、
いつまでも耳の奥で響いているーーーー。



#あの日 #過去の創作 #教室 #夏 #文章

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