この海の深くまで
好きなものほど遠ざけて、
くだらないことほど時間を割いて向き合ってしまう。
本当に仕様も無いこの癖のせいで
今まで沢山の感動や感性が失われて、
代わりに面倒なことばかり押し付けられたり、耐えなくちゃ、と思い違いをするようになっていた。
どうして遠ざけてきたかといえば、
心を奪われるのが怖かったから。
日常生活(主に仕事)に支障をきたすのではないかと心配だったからだ。
感応が行き過ぎたりすると、
現実を生きるのがキツイ時がある。
心が繊細になって綺麗なものだけを見つめていたい日に、
クレームの対応なんてしていたらバランスを崩してしまうし、
景色や温度、感覚だけに触れていたい時に、誰かに気を遣って言葉を選んでいたくない。
感覚的に深く潜っていたい。
好きなものや素敵なものに触れるたび。
しばらくはそのまま、
その世界の中で呼吸をしていたい。
やりたいことを仕事にしているわけじゃないからといって、責任を放棄することはできないし、
適当にやるのが正解なのかもわからない。(多分違う気がしてる)
諸々を考えると、
心を奪われないように、好きでもない仕事に支障をきたさないように、
好きなことを諦める。
この負の連鎖、本当に仕様も無い…。
もうずっとそんな風に感じながら、
そのままで過ごしていた。
色んなものを失って、
代わりにもならないような無駄なものばかり背負い込んだ。
もっとシンプルに生きたいな。
好きなものをもっと大切にしたい。
やりたい事しかやらないなんてきっと無理だけど、
なるべくなら毎日を好きなもので満たしていたい。
そう考えるようになって。
去年、ふと駅で見かけた海辺のポスターをみて海へ出かけた。
日常に行き詰まっていたあの時。
呼ばれるようにその場所へ出かけた。
そこで見た景色、
聴いた音、
感じた湿度や感触はきっとこの先、
忘れることはない。
心が求めていたような完璧な時間を経験した。
生まれて初めての感覚。
あれから一年経ったけれど、
その場所には何度もでかけていて
その度優しい海辺の時間に心が育まれる。
感性が磨かれるような感覚。
心がバランスを崩しそうな時、
どうにも行き詰まって苦しい時、
潮騒の囁きや水平線の広さ
波に連れさらわれるシーグラス
橙が滲んだ、バスの車窓からみえる海の色を思い出す。
それだけで心が救われる。
また会いに行こう、それまでもう少し頑張ろうって思える自分がいる。
好きなものはきっと、自分を助けてくれるんだな。
心を守ってくれるんだ。
だからもっと深く潜っていきたい。
より良い人生の為に、
沢山の好きなものに触れたい。
創ること、やっぱり大好きなんだ。
だから創ることから逃げない。
好きなことから目を逸らさない。
深く潜っていく。
感じたことのない自分に出会う為に。