#20 gift.
パズルピースがぴたりとはまるような優しさは
そんなに何度も巡ってはこない。
東京の空でもきれいに星が見えるんだな。いつかの夜に感じたことを今夜思い出している。
引っ越す前の夜はいつだって明るく、真夜中でもお構いなしにどこかしら工事をしていて、耳の底を震わす雑音にまみれていた。
都会の夜がこんなに静かだということをはじめて知ったような、新鮮な毎日。
真夜中と心の境目が曖昧になる時、自分や誰かのことを今より好きになれそうな気がした。
いつだってふいに与えられる明るさを、自分のものではないと上手く受け取れないでいる。
思ったようにしか表せない自分の輪郭を、どうやって整えていけばよかったのか。後悔しているだけでは何にも救われない。時間は今の連続。過去ばかり撫でてはいられない。
とても長い時間をかけて私の中に染み込んだ、私のMuseの声。その声と姿に嘘はつけず、あなたの存在はいつも私を過去の中へ引き戻す。
後悔することで見えなくなっていた、確かにそこにあった私の大切なものと過ごした時間。
月明かりの下、サーカス小屋のテントのような倉庫がならぶ海辺の時間。
モノクロの閑散としたメランコリーの中にある、ひと掬いの神聖。
ノイズまじりのレコードの音。洋館にさす光。
美しいと思った心を気が付くと失くしそうになる。マイペースがこんなにも苦手で、それでもどこまで行っても誰かのためには生きれない。
武器になるほど美しい感性かはわからない。
でも出来るところまで、いけるところまで行ってみよう。
自分が見たい景色が沢山あるから。
ふいに与えられる明るさを大事に受け取ろう。
そして、自分のペースで返していこう。