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音楽標本
人生の色々な場面で、音楽が流れている。
空っぽだった夏の日の午前
大切な人を失った日
壊れた欠片を繋ぎ止めた瞬間
心が求めていた物が、目の前で形を成した時
席から立ち上がった友人を見上げた視線、泣き出しそうな顔に気がついた時も
ただ呼吸を繰り返しているだけだって、
そのシーンを切り取ってみたらどんな瞬間も掛け替えの無い、
もう二度と戻らない意味のあったもの。
心が動いて、留まって、
ほんの一瞬のその時間に一生忘れないかもしれない音楽が鳴っている。
音楽が映画の印象的なシーンを引き寄せるようにして、
記憶を包むヴェールのような音楽が鳴っている。
流行りや廃りがあって、
一瞬の淡い恋心のように熱っぽく無責任な感情があって。
それでも今、この声と音楽を覚えていたい。
大人になればなるほど、人生はもっとドラマティックで在るべきだ。
忘れたくない気持ちを増やしていくべきだって感じる。
今はもう、自由なのだから。
何をしていても
どこにいても
誰といても
大切にしたいものを自分で選んでいい。
素敵な声と音楽で、私の一瞬を標本にしてくれた。
きっとずっと、忘れない。