Muse.
素敵な人や物が溢れかえっているような世の中で
欲しい物がなんだったか、
目が醒めたらもう覚えてすらいない。
それならいっそもう何も要らないか、と手を放す。
世の中と自分の間にずっと薄い膜がある。
同じ渋谷の大通りを歩いていても、
すれ違う人と自分の間には全く別の時間が降り積もり、裏と表のパラレルワールドを生きているような心地が拭えない。
境界線の外にいるのが相手なのか自分なのかは分からない。
誰かが決めた普通から乖離していく感覚は、
昔も今もやまずにここにある。
素敵な人や物が溢れかえった世界。
様々な形に惹かれては冷めてゆく毎日の中、
ごく稀に鮮烈な美しさを残してゆく、この心を掴んで離さない人が現れる。
その目から見つめる景色がどんな風か
心についた痣がどんな色をしているのか
涙の根源と、愛の在処、賞賛を浴びるその姿と
裏側に差す影の手触りを知りたい。
強い眼差しの美しい彼、彼女らを私は自分のMuseだと思って生きている。
美しいと思える人がいるこの世界なら、
私は乖離していても構わない。
普通なんて実はどこにもないことを、
みんな一人の夜に思い出している。
あなたは私のMuse。
その影がどれだけ色濃く付きまとっていても、
あなたは私のMuse。
立ち上がるその時に
前方を捉えて離さない強い視線と横顔が、
誰かの視界を通し美しく見えること。
自分自身とだけ闘い続ける人はとても綺麗だ。
誰かからみた自分が、いつかそう在れたならいいなと思う真夜中。
一番好きな季節の真ん中にいる。
意識を研ぎ澄ませていなければ、季節はあっけなくすれ違っていってしまう。
あなたの今日が、意味のあるものでありますように。
私の明日に、美しさが損なわれませんように。
あなたは、私のMuse。