紫煙に、青に。
夜を仰いで吐き出す空気。
身体の内側に抱えた夢幻にこの夜が中和すれば、紫色の幻視の続きがみえる。
日常の隣にある非日常。
夜を怖がって部屋に閉じこもっていれば、扉は閉まってしまう。
あと少し、もう少しと誰かの価値観を手放せば
自分にしかわからない夜の帳に手が触れる。
主観的な美しさは潔い。
揺るぎのない焔を宿している魂や
掴みとれない幻影のような空気を纏う人は美しい。
みんな自分に何かを架している。
他人には簡単に分からないそれぞれの十字架を背負ってる。
美しい人に出会うと、
その奥の闇を想像せずにいられない。
光と闇は表裏一体だから、
圧倒的な美しさの隣には深淵がある。
それを思うと愛おしくてたまらない。
上辺だけを賞賛するのじゃなくて、
ふと陰がさす表情や
聡明な眼差しがまた前を捉える本能的なその所作に価値を感じる。
美しさは多分その人が持つ才能。
一人一人違う形をしていて、
その人にしか持つことを許されない
たった一つの基準。
人生そのもののような、比べる事に意味を持たないものなのかもしれない。
そんな美しさが自分の中にも宿っているとしたら、それはどんな形をしているだろう。
そんなことを思いながら、
青い夜の紫色をした深淵と今に向き合っている。