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モノローグロム

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日々の記録。
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#散文

知らない感情を教えて。

知らない感情を教えて。

〝思い込みの怖さ〟は手を変え品を変え、世の中の教訓的な物の中に幾らでも溢れている。

ちょっと角度は違うけど〝人前で咳をするときは手で押さえましょう〟とか〝電車内で大声で通話するのは周りの人に迷惑です〟とか、考えるまでもないようなことが守られないことはいくらだってあって。

雨の日の朝、降車駅の階段を昇っている時、傘を後ろに振って昇っていく人が必ずいる。日常の中で〝危ない思いをした〟と色々な人が言

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春の呪い。

春の呪い。

春は呪いだ、

自分で書いた物語の最後に、確かにそう言葉が連ねてあった。

生温い記憶を呼び起こす、春は呪いだ、と。

映像に引っ張られるようにして、欠片を拾い集めながら言葉を紡ぐ。
浮かんだ情景がその輪郭を失う前に、描写することに心が駆り立てられなぜだかいつも焦っている。

もしかしたらこの心はいつも空っぽなのかもしれない。
突然現れる景色で溢れてしまわないように
欠片と言葉を束ねている間は、こ

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time to say goodbye.

time to say goodbye.

今まで生きてきた大半の時間、ひとつだけずっと苦手なことがある。
もしかしたら永遠のテーマになってしまうのかもしれないし、ある日突然パッと解消される日が来るのかもしれない。

自分ひとりで起承転結が結べるのであればどれだけいいだろう。
色々な問題に直面するとよく思う。
素晴らしい出来事もそうじゃない事柄も、私以外がいることでもたらされるのであって
相手の心があるからこそ自分のやり方だけでは解決するこ

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ヴィオレ

ヴィオレ

きれいな言葉で世界を紡ぐ。
青いフィルター、夏の呼吸。

削ぎ落とした鋭角は
磨いて、磨いて、ひとつずつ夏の宝石に還す。

美しいものが好きだった。
あなたに笑っていて欲しかった。
私はわたしが生きていける世界を描きたかった。
誰かがかいたエンドロールに取り残されてしまわないように。

自分の中から取り出した美しさで
心象世界を組み立てる。

私は宝石ではないから、
補わないと削るばかりで美しさを

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その声で、あかりを灯して。

その声で、あかりを灯して。

真っ暗闇がよく似合うその声に
ずっとずっと恋をしている。

随分と長い時間
あなたの声を聞いて私はこの夜を歩いてきた。
気がついたらいつからか
真夜中に呼吸をしやすい生き物に。

真っ暗闇にひと掬いの
柔らかいあかりを落とすようなあなたの声。

都会の夜はいつだって明るい。
本当の孤独を私はもう忘れてしまったみたいだ。

その声で、あかりを灯して。
#心象 #声 #夜 #暗闇 #あかり #散文

輪郭をなぞるように。

輪郭をなぞるように。

『私、今どんな表情をしている?』

誰かといるとき、背後にいるもう一人の自分が問いかけてくる。
俯瞰している彼女と心は共有していても、表情はそうとは言えない。

卑屈な態度の人と相対していると、
私の中の同じ部分が頭をもたげてくる。

すぐ謝るくせに、いつもどこか上からの物言いな相手と向かい合っていると、
(ああ 自信がなくて不安で仕方ないのかもなぁ。
自分もそういう側面もっているもんなぁ)

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dolly dolly dolly

ゆるやかな絶望。
ときどき頭の中が茹って変になる。

軽やかな音楽。
お終いが分かっているから、刹那的に踊ろうよ。

矢鱈に眠たい毎日。
繋ぎながら、結びながら歩くささやかな毎日が
また剥離している。

直すのはもう相当に面倒くさい。

終末に向かって 羽のような手触りで
壊れていってるみたいで少しだけ気持ちがいい。

明るい絶望。

決定的な違いの、
つなぎ目ばかりが気になって仕方ないけれど

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frasco

frasco

あっちもこっちも工事中。
地上が明るいから、私の街には夜が来ない。

今夜も快晴、青く、そして白く。

枕に耳を当てると地下鉄の走り去る音がする。
通りを歩く誰かの歌う声が聞こえる。
音がすると眠れないなんて、
はじめからそんな繊細にできてはいないし

9階の白昼にみた景色はまるで奥行きがない

水色の、ノートパソコンの上に突っ伏している
イヤフォンから可愛いあの子の泣いてるような歌声

才能に気

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whisper

whisper

〝お静かに〟

耳元で囁くような柔い声が聞こえた気がした

顔をあげると、灰色の水彩から降り注ぐ雨
プラットホームにいる人らは みんな無口だ

雨の音がする

細かい雨の紋様が 灰色のパノラマに溶けていく

その柔い囁きが聞こえると、
頭で考えていたあれこれは消え失せて

目の前にいる〝誰か〟の姿を
その輪郭を知らずしらずのうちになぞっている

煮詰まっている時ほど
絡まっている時ほど

〝わた

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伽藍堂。

伽藍堂。

音がなっている

ずっと、耳の奥で、音が

音を手掛かりにしてそれが音楽へたどり着いたとき、

胸の奥を引っ掻くような
ささやかで的確な痛みが この目を閉じさせてしまう

「あの頃に、戻りたいの?」

いつも自分に問いかける

あなたは、あの頃が恋しいの?戻りたいの?と

断続的な情景

写真のように止まった時間の内側で
また風が流れている

止まったままの被写体
モノクロの雲 それだけが薄く線を

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Fascinate.

Fascinate.

下唇の造形が圧倒的に美しい君の、
斜めから見る横顔に 気がつくと魅入ってしまう。

「魅入る」って言葉の意味、
〝魔性のものが人にとりつく〟って意味なんですって。

特に意味を持たないような、
無自覚そうな仕草のあれこれを思い出して
なるほどな、なんて独りごちている。

なにを美しいと感じるかは人それぞれ。
計算し尽くされたものに美を感じることもあれば、
無自覚な魔性に取り憑かれたりもする。

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響き

響き

言葉をなぞる癖
語感が持つ素直な響きと、
その向こうにある奥行きが持つ響き。

あなたと私は同じ言語を話しても、同じ言葉をどれだけ持っているでしょうか。
胸に響くその音が、同じ音をしていたら
分かり合えるような
許しあえるような
そんな気持ちを互いに持てるのかもしれません。

沢山の言葉をあつめて、
あなたに飾り付けてみても
その行為にはなんの意味もないのかもしれない。
伝わる心があるならば、

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