エッジの話(未完)

 マガジンエッジでの連載が終わった。わたしが配信を読んでから一晩が経つ。
 ポジティブな感想はない。ひどくショックを受けたし、このことについて整理をつけるのはしばらく難しいだろう。未読の時分に帰れるものならそうしたい。
 しかし、このコミカライズは公式のコンテンツとして発表されたものだ。正史となってしまった以上これを無視するわけにはいかない。時間がかかっても向き合わなければいけないと思う。
 好きなので。
 もやもやしていても始まらない。気持ちの整理をつけるには言葉として書き出すことだ。
 やります。


何がそんなにショックだったのか

 わたしがショックに思ったのはひとつだけだ。
 左馬刻が合歓の頰に平手打ちをしたことである。
 女の登場人物を、暴力なりマイクなり、なんらかの手段でがぼこぼこにすることがあれば、それはそれでいいと思っている。この点に関しては「女性に手を挙げたこと」自体がショックなわけではない。念のため先に言っておく。

 左馬刻が合歓の頰に平手打ちをした。
 これはわたしが、左馬刻が絶対しないだろうと思うことだ。違和感があるのである。
 わたしは平手打ちを"超理性的な行動"だと思っている。ドラマ、アニメ、様々な媒体でよくみるが、おかしいと思う。普通に生きてきて、衝動にかられたとき、”咄嗟に”、頰に平手打ちをしようとはしないからだ。どつくのは解る、殴るのも解る、頭を叩くなら解る、でも頰に平手打ちはしない。
 昔は学校で教師が生徒にすることがあったらしい。正気に戻させたり、目を覚まさせたりするときにすることもあるだろう。昔一度だけされたことがある、親子喧嘩で聞き分けのないことをわめいたときだ。どれも、”教育のため””きつけのため””叱るため”など意図があってとる行動だと思う。(正否の話はしない)
 では今回、左馬刻の場合どうだろうか。
 上記の理由により、わたしは感情に任せ咄嗟に取ってしまった行動とは思わないので、意識して平手打ちをしたものとして話をする。
 2つのパターンが存在する。彼のプロフィールに記載されている「女性には絶対に手を出さない」と決めたのが、合歓に平手打ちする前からのものであったか、後であるか。
 まず、事件の前から女性に手を出さないと決めていた場合。なぜそれを誓っていたんだろうか。左馬刻の家庭環境を鑑みるに、一番辿り着きやすいのは、”暴力的であった父親のようにならないため”だと思う。詳細は公開されていないし、彼が被虐待児であった確証はないので妄想は多分に含まれているが、プロフィールや言動から推察するに、父親からの暴力があったか、それに類似したなにかがあったんだろうと考えるのは突飛な話ではない。家庭内暴力があった家庭のことは詳しくないが、DVを受けた子供は自分も暴力を振るうようになる、というのはよく聞く話だ。左馬刻が合歓に手を上げたのは、「状況によっては、抑えていた暴力性が解放されてしまう」ということである。しかも対象は妹、一番やってはいけない相手だった。……二次創作の話をするが、この場合、今まで絶対ありえないと思っていた”一郎にDVする左馬刻”がめちゃめちゃしっくりきてしまうことになる。ショックだった。
 次に、事件の後に女性に手を出さないと決めた場合。これが一番嫌だ。だって、なんて情けない話だろうか。俺らの左馬刻さんはめちゃめちゃかっこいいんだ。こんなことがあってたまるか。このパターンを考えたとき、左馬刻のことが矮小な人間に見えてしまった。ショックだった。
 そもそも、わたしは左馬刻の「女性に絶対に手を出さない」は、もっと根源的なものであって、誓いをたてたものではないと思っていた。しかしそうであった場合、この状況でも絶対に左馬刻は合歓に手を上げなかっただろう。どう転んでも、あの行動はすごくショックだった。
 女性に手を出したことそのものがショックなのではない。彼が、そうするに足りない状況で、自分で立てた誓いをやぶってしまったことがショックだったのである。言ってしまえば、わたしという人間が勝手に積み上げてきた解釈が敗北したというだけの話だ。しかし、ならば「女性に絶対に手を出さない」という一文はなんだったのだろうか。わたしには、シナリオ進行のために彼の根源的性質部分が曲げられてしまったように思えてならない。

 この部分についてどう向き合ったらいいのか、わたしはまだはかりかねている。左馬刻が最初からそういう人だったとて、わたしは左馬刻のことを好きになっていたかもしれない。でも、少なくともその”好き”の様子は今とは違っていただろうと思う。時間がかかりそうだ。


「知らねえよ」について(まだ)

 結論から言うと、そこまで絶望的ではないと思っている。
 あの場面でこのセリフを言うことに、違和感がないからだ。
 という話は今度追記します。

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