![きりん](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/5593872/rectangle_large_f27a42fae078f0bfffd1abdf18e99b4b.jpg?width=1200)
春を待つ麒麟 2.
木々の合間からのっぷと長い首をもたげながら、常に空と大地の境界線をそっと俯瞰しているような麒麟が私は昔から好きだった。少しだけ間抜けた表情がどこか今の自分によく似ている気がして、PCを開く度に「き り ん」を検索し続けた時期が私にはあったのだ。
麒麟の表皮は丁度この時期の、枯れ木と枯れた大地に見事にフィットし己の存在を隠すには最適だ。丁度私が音楽の中にそっと身を潜め、あまり好きではない人の頼み事から身を護る時のそれに似ており、麒麟にはどこか深い愛着がある。
ここ noteで私は、ほぼ97㌫の記事を有料で配信している。
最初は荒らし除けの為にそうしていたが最近はそこに少し違う理由も加わり、著者と読者の気迫の差を埋める為に大人の取り決めである「金額」を鍵として設置し、ひと手間もふた手間も面倒なプロセスを経ながらでも私の記事を読んでみたいと思う、そんな熱心な読者にのみ記事を解放すべきだと言う私の哲学をここで押し通したいと思うようになった。
勿論私の本業は文筆ではなく音楽なので、だったらnoteで音楽作品を配信したら好いのでは?… と言う声もかつては多々あったが、noteはある種のアマチュアとセミプロのたまり場だと私は認識しているので私がそこに音楽作品を配信するには余りに場の空気が合っていない(笑)。
なので私はここではあえて「エッセイ」やコラム等を有料配信するにとどめ、余りガツガツとnote民を集めるような類いの活動も行っていない。
有料記事『春を待つ麒麟』を配信したのは数日前の2018年1月17日のことだったが、残念ながら未だこの記事を誰も読んでいない。
Twitterでこの記事を拡散する際私は、あえて中身が分かるような誘導文句をつけなかった。
思わせ振りな広告を出すよりも、この挿絵から何かを感じて記事をそっと手に取って下さる方が実は、本物の読者だと信じているからだ。
数を集めたいわけではなく、かと言って人の気配を頑固に遠ざけているわけでもなく私はただ、「格の違い」に対し敏感で慎重に振る舞うべきだと言う或る人のアドバイスに素直に従っているだけだ。
「格」とは烏合の衆と一線を画し、自らのスタンスをその時々の感情で捻じ曲げない所作をもそこに含み、私はそのスタンスを死守する為に日々戦いながら生きている。
そんな心情をそっと許してくれるnoteと言う空間が今、少しずつ変わり始めている。「数」や「ランキング」と言う視点でのカイゼンとやらが始まっているらしく、そうなれば私のように粛々と有料記事だけを配信しているユーザーは完全に不利な立場に追い遣られる日もそう遠くはないだろう。
「皆さん、お元気ですか?」等の「みなさん」向けに書かれた広告記事がきっとそのうちランキングの上位を埋め尽くし、有名人に弱い日本人は「有名そうな人」や「権力を持っていそうな人」にくっつく習性を持っているのだからそういう人たちにとってのみ、noteは居心地の好い空間になって行くかもしれない。
昨年の秋ごろ、そろそろnoteでの執筆も潮時かもしれない… と言ったのは、私の所属事務所 Didier Merah Japan の社長だった。私ももうその時が間近にあると感じており、少しずつ別空間から配信する電子書籍の執筆に取り掛かっている。
FacebookしかりmixiやTwitterしかり、いつかどこかでそれぞれのSNSの運営者はマネタイズを真剣に考え始める時が来る。noteもきっとその時を迎えたのだろう。
各記事の手数料は2割以上にもなり、オマケに有料マガジンを配信する人には月額の登録料が発生している。正直それだと記事を安く販売しても赤字になるので、記事の価格を下げることが出来なくなる。
何もかもが段々と悪循環に陥って来た。
2018年1月19日、小室哲哉(59歳)さんが引退表明会見を行った。
私とは6歳しか違わない小室さんが引退を口にする‥ と言う状況にどこか私は未だピンと来ないが、彼の現状を思うとただただ胸が痛んだ。
かと思えば一方私は、60歳を機に演奏活動を再開しようと言う計画を立てており、私は私で世間の感覚や常識とは明らかに逆行した生き方を選んでいる。
陽のあたる場所が必ずしも、人の集まる場所になるとは限らない。そこに静かにマイクを置こうと決めた小室哲哉のような人も実際、存在するわけだから。
だが世界には未だ多数の陽のあたる場所が点在しており、その中でも私はとりわけ人の居ない空間に向かって進んで生きていることはどうやら間違いなさそうだ。
私は麒麟のように、めいいっぱい首を太陽に向けてのけぞりながら生きている。次の春がいつそこに訪れるかどうかなど気にも留めず、人里を離れた穏やかな陽だまりを求め、私は夢を食んで前進している。
19 Jan. 2018 16:50 JST ⏱
追記:
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