静子 1. 不愛想な初対面
『一体いつになったら人間は、私たちの言葉を理解するようになるのかしらねぇ‥まったく。』
買い物に行く途中にどこからともなく不機嫌なつぶやきが届き、気になって自転車を止めた。
足下には一匹の見知らぬ猫。
「名前は?」と尋ねてみると、「シーコー ニャーーー」と鳴いた(と言うか、返事をした)。するとテレパシーで確かに「静子」と言う文字が届いて来る。
美しい女性の「静子さん」と言う実在人物がいるらしく、どうやら静子さんは近所の飲み屋の常連客らしい。松竹梅をボトルキープする大酒呑みだが、彼女には人に言えない秘密があるようだ。
なぜそれが分かったかと言うと、猫の「静子」が飲み屋での静子さんとママの会話を全部記憶して、それを脳内で何度もリピートしていたので私にも分かってしまった。
『ねぇ、静子‥、いいお天気ねぇ。』と声を掛けると確かに「ミャー」と鳴いて私に一瞬すり寄って来たが、「静子」は30センチ以上の距離を確保して、それ以上は私に近づいては来ない。
『猫なんて最初はみんなそう、人間嫌いなの‥。あんただって泥と埃まみれのあたしを可愛いなんて思わないでしょ。』‥
「静子」はとても不機嫌だが、そのくせ私が「静子」にかしづいて「撫でさせて下さい」とお願いするのを、心のどこかで期待している。
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