今日の気分はこの曲
Vol.5「Paint it Black」The Rolling Stones
1966年5月に発表された、
ローリング・ストーンズの10枚目(本国イギリスにおいて)のシングル。
初の全英・全米No.1に輝いた曲でもあります。
この曲の特徴は、シタールを導入していること。
シタールはインド音楽には欠かせない弦楽器で、
演奏する弦の下に別の弦があり、それが共鳴する事によって、
「ギューン」という独特の音色を出す楽器です。
はじめてポップスに使われたのは、
ビートルズの「Norwegian Wood (This Bird Has Flown)」でした。
シタールには独特な音で効果は抜群なのですが、大きな欠点があります。
それは習得するのが大変難しい楽器であるということ。
普通は師匠について、インド音楽を学ぶことから始まります。
ビートルズではジョージ・ハリソンが、
ラヴィ・シャンカル(ノラ・ジョーンズの父親)に学んでます。
インド音楽は時間によって使用する音階が変わったり、
これもまた習得が難しいモノです。
ローリング・ストーンズでは、
ブライアン・ジョーンズがシタールを担当しています。
では、彼は誰にシタールを習ったのでしょうか?
実は誰にもシタールを習っていませんでした。
つまり、独学なんです!
普通はあり得ないんですよ。
演奏の天才であるブライアン・ジョーンズだから出来たと思います。
彼は演奏ということに関しては、本物の天才でした。
ブルース・ハープは半日で習得したと言われてます。
他にもマリンバも演奏してます。
彼が演奏できた楽器は、20種類以上と言われてます。
また、彼はローリング・ストーンズの創設者でリーダーでした。
バンドの名前をローリング・ストーンズと考案したのも彼であり、
結成当時からバンドを牽引していました。
しかし「天は二物を与えず」とはよく言ったもの。
ブライアンには曲作りの才能がなかったのです。
このことがバンド内での彼の立場を崩壊させ、孤立・脱退への道を進ませ、
ひいては彼の死への遠因となったのでした。
1963年11月、
ストーンズはシングルとして「I Wanna be Your Man」を発表します。
この曲の作詞と作曲は20世紀最高のコンビ、レノン=マッカートニー。
ストーンズの依頼を受けたジョン・レノンとポール・マッカートニーは、
ストーンズの面々の目の前でサラっと曲を弾いて聞かせます。
掛かった時間は5分ほど。
これはストーンズにとって大きな転換点でした。
それまでのブルースのカバー主体から、オリジナル主体へと変わる。
ちなみにこの曲、ビートルズも歌ってます。
ライブでリンゴ・スターが歌う定番曲であり、武道館でも演奏してます。
聴き比べるとモータウンのビートルズに対しブルースのストーンズという、
両者のバックボーンの違いがうかがえて面白いですね。
この曲をキッカケに、
ミック・ジャガーとキース・リチャーズは曲作りをはじめます。
才能は花開き、1965年に「 (I Can't Get No) Satisfaction」の大ヒット!
バンドはそれまでの「イギリスのロックバンドの中の一つ」から、
「世界的なロックバンド」へと見事に変貌を遂げます。
しかしそれは同時にバンドの主導権がブライアンから、
ミックとキースの二人の手に渡った瞬間でもありました。
バンド内での行き場を失ったブライアンには、まだ演奏の道がありました。
彼はストーンズに新しい楽器を持ち込み、自らの立場を守ろうとします。
だからこの「Paint it Black」にシタールが導入されたのでしょうね。
しかし曲はヒットするものの、作ったのはミックとキース。
これがブライアンの立場を危うくし、彼は麻薬に逃避します。
それがますますバンド内での彼の立場を悪くしました。
1969年6月8日、ブライアンは自分が作ったストーンズを脱退しました。
それから間もない7月3日、自宅のプールで彼の水死体が発見されました。
今思うとこの曲でのシタールは、
ブライアンの最後のあがきだったのでしょうね。
そんなことがあってかどうかは分かりませんが、
ずっと演奏されてなかったこの曲がライブで演奏されだすのは、1989年、
ブライアンの死から20年後のことでした。
悪くはないけど何かが違いますね。
もしステージの端にでもシタールを持ったブライアンが座っていたら、
最高だったんでしょうね。
カバーですが、まずはメタルの雄、ジューダス・プリーストによるカバー。
オリジナルが持っている、闇の部分を増長したような感じですね。
如何にもジューダスらしく仕上がってます。
アイルランドの世界的バンド、U2によるカバー。
彼ららしくソツなく纏まってますね。
さすがはU2って感じです。
最後はアニマルズとのヒットで有名なエリック・バードンのバンド、
エリック・バードン&ウォーによるカバー。
よく黒人音楽っぽいのを「黒い」と表現しますが、
そういった意味では真っ黒です。
メンバーも殆ど黒人だし。
エリック・バードン自身もアニマルズ時代から、
黒人音楽への傾倒は有名ですし。
という訳でローリング・ストーンズの名曲、
「Paint it Black」についてでした。