今日の気分はこの曲
Vol.13「The Lion's Mouth」Kajagoogoo
1984年3月10日に発表されたカジャグーグーの5枚目のシングル。
同年5月に発表された2ndアルバム「Islands」の収録曲です。
彼らの最高傑作のアルバムですね。
カジャグーグーは元々アール・ヌーヴォという名前のバンドでした。
メンバーはニック・ベッグス、スティーヴ・アスキュー、
スチュワート・ニール、ジェズ・ストロードの4人。
1979年にシングル「Fear Machine」を発表したものの、
売れない日々が続いてました。
1980年、バンドはメロディーメーカー誌である広告を発見します。
クリストファー・ハミルという男が出したもので、バンド募集でした。
ハミルはシングルやデュエットで何枚かレコードを出してましたが、
売れてない男でした。
広告を見たニックがハミルに連絡を取り、
同時に送ったテープをハミルが気に入りました。
結局、ハミルがアート・ヌーヴォに加入することとなり、
ハミルはリマールへ、バンドはカジャグーグーへと名を変えました。
1981年、リマールの恋人を介して、ニック・ローズを紹介されます。
彼はデュランデュランのメンバーで、バンドをEMIロンドンに紹介します。
1982年12月に1stシングル「Too Shy」を発表。
プロデューサーはニック・ローズとデュランデュランのプロデューサー、
コリン・サーストンでした。
この曲がいきなりの大ヒット。
翌1983年1月にはイギリスでNo.1になります。
その勢いで4月に2ndシングルの「Ooh To Be Ah」と、
1stアルバム「White Feathers」を発表しました。
さらに6月には3rdシングルの「Hang on Now」も。
全てヒットし、同時期のツアーも成功しました。
まさにカジャグーグーの全盛期でした。
ところが好事魔が多しというモノで、7月にリマールが脱退します。
表向きは「音楽性の違い」ということでしたが、実際は金銭問題でした。
リマールが50%という法外なギャランティを要求したのが原因。
実質はクビでした。
8月に4人に戻ったバンドは4thシングル、「Big Apple」を発表。
ニックがベースとボーカルを兼任するようになります。
そしてこの曲に至る、という流れです。
この曲の凄いのは、なんてったって変態楽器勢ぞろいだから。
ドラムがシモンズだし、
ニックはベースじゃなくてチャップマン・スティックを弾いてます。
シモンズってのは、エレクトリック・ドラムのメーカー。
六角形のパッドでお馴染みでした。
80年代前半のダンス・ミュージックに欠かせない楽器。
今はエレクトリック・ドラムってPCM録音されたのを使ってるので、
生音に近い音が出ます。
当時のは技術が未発達ということもあり、
生音とは違うエレクトリック・ドラム独特の音が出てました。
コレが流行りましてねぇ。
輸入品だからフルセットは結構なお値段なのに、皆こぞって使ってました。
邦楽の例だと、C-C-Bの「Romanticが止まらない」が顕著ですね。
高価なので普通のドラムセット+シモンズのパッドを何個か、
という組み合わせも流行りました。
カジャグーグーも「Too Shy」の時点ではそのパターンのです。
しかし売れたのでフルセットへスケールアップ!
わっかりやす~い!
チャップマン・スティックというのは1970年代初頭、
エメット・チャップマンによって発明された弦楽器です。
ギターのネックだけのような本体に8本、10本、12本の弦を持ち、
タッピング奏法によって演奏する楽器です。
材質はギター同様、様々な木材やアクリル、金属のモデルがあります。
この楽器、一番安いモデルで1900ドルと高価かつ演奏が難しいため、
あまり弾いている人はいません。
「世界に完全に弾きこなしている人物はいない」と言われるほど。
キング・クリムゾンのトニー・レヴィンが弾いてるので有名です。
が、彼ですら「低音側の5本の弦しか使ってない」と言ってるほど。
この曲ではロバート・フィリップ御大はギター・シンセサイザーだし、
変態ギタリストのエイドリアン・ブリュ-がいるので目立ちませんが。
あ、ドラムにシモンズがw
そんな登山で言えばK2クラスの楽器に挑戦するミック、根性ありますな。
楽器の話が長々となりましたが、曲も良いんですよね。
良質のホワイト・ファンクです。
「Too Shy」でもベースラインはファンクっぽいラインでしたからねぇ。
これが本来の彼らの姿であったと思います。
日本じゃ「デュランデュランの弟分のアイドルバンド」というイメージで、
正当な評価をされてませんが。
結局このあとバンド名をカジャに代えて心機一転を図ったものの、
失敗して解散することになりました。
で、時は過ぎて2008年、再結成のステージが。
リマールと一緒にステージに立ってるやん!
まぁ色々事情があったのでしょう。
彼らももう大人だし。
許してあげるのが大人のファンの対応ですね。
それにしてもニック、カッコ良いなぁ。
という訳でカジャグーグーの名曲、「Lion's Mouth」についてでした。