クラブフィロソフィーとクラブ運営
やっぱりなかなか投稿が増えないNOTE…。
ぶっちゃけてお話しすることがなかなか窮屈なこの立場ということもありますが、そもそもSNSも含めて重要性は感じてはいるものの、自分自身で習慣化するのが難しいなと考えてしまっています。相変わらずのマイペースでいこうと思っていて、だいぶ間が空いてしまいました。読んでくれている人には伝えたいことや、内容を少しでも伝われば、と思っています。
今回は栃木SCのクラブフィロソフィーについてお話しをしたいと思います。
そもそもクラブフィロソフィーって必要なの?
僕自身はクラブ経営や運営はこの栃木SCでしか経験がありません。ですから他のクラブの方達がどう考えているかはわかりませんが、僕自身はとても重要だなと思って、2018年にクラブ内で話し合い、フィロソフィーをしっかり持ってクラブを運営していこうという結論に至りました。
スローガンの違和感とスペイン視察での気づき
2017年、当時J3に在籍していた時にJリーグの原副チェアマンの発案だと思うんですが、(たぶん…)スペインのクラブを視察する機会を頂きました。
クラブを経営することになって、以前から違和感を感じていたことがあります。毎年掲げられるスローガンです。クラブはシーズンが始まる前にスローガンを発表していました。もちろんそのスローガンがその年の目標にもなるし、ビジネス面においてもスローガンを様々な面で活用できることもあります。ただ、毎年決定するプロセスも曖昧だったり、せっかく掲げているのにその言葉の持つ意味や目的をクラブ内部で浸透しきれていなかったり、といったことについてはずっと違和感を感じてきました。もちろん、クラブに関わる多くの方達との共通言語となり、一体感を生み出すことなど、スローガンをうまく活用すればとても意味のあることだと思っているんですが、その活用という意味では、栃木SCにとってはハードルが高かったような気がします。
また、クラブとして「こうだ」という考えみたいなのがない分、毎年毎年クラブの根っことなる考え方が変わっているようにも感じました。クラブとして「うちはこういう考え方だ、こういうことを追求していく」みたいなものを持っている上で、毎年の目標をスローガンとして掲げるということであればスッと腹落ちするんでしょうけど、クラブとしての根っことなるような考えがなかったため、毎年掲げられるスローガンにピンときていなかったということだと思います。この立場になってクラブ経営をするようになってみて、クラブとしてチームスタッフや選手、フロントスタッフだけではなく、ファンやサポーター、スポンサー企業や自治体などなど、関係する人達が栃木SCを語る上で共通言語となるような考え方があった方が良いだろうと漠然と思っていました。
そんなクラブ経営を始めたばかりの駆け出しの僕にもスペイン視察という機会を頂き、視察先でクラブフィロソフィーに触れることができ、お話しを聞くことができました。この経験で僕の中で、モヤッとしていたことが解消され、やはりクラブとして追求するべく考え方というのは持つべきなんだと改めて考えることができました。
フィロソフィーをどう考えるか
視察後、クラブのスタッフや選手数名とこの話しをするようになったんですが、僕の中で「勝手に作って良いものなの?」という迷いはありました。本来、もっと昔に作ってあるべきようなことだろうしな、と。ただ、このまま曖昧にしたり、何も根っこになるような考え方もなくてクラブ運営すべきではないと考えるようになり、クラブに関係している人たちとしっかり話したうえで、決めようと少しずつ頭の中を整理していきました。
まず考えたことはこのクラブがどうやってここまできたのか。
教員クラブから始まり、活動の幅を少しずつ広げ、良かったこと悪かったことも含めていろんな経験をしてJリーグに参画。その後も成功も失敗も繰り返しながらこのクラブの人格を作ってきている。多くの人達が関わって、その方達が何があってもクラブを守ろうという強い思いを持ってクラブを前に進めてくれました。
僕自身の経験でも…。
2015年、J3に降格が決まり、クラブ運営はうまくいっているとは言えないような状況だったと思います。社長に就任した2016年、シーズンの半分は自動昇格圏内で過ごし最後の2試合で首位陥落し2位となって入れ替え戦に臨んだものの2敗して、昇格失敗。絶対昇格しないといけないという状況の中で、かなり厳しい状況に追い込まれていました。
でも、多くの人達が後押ししてくれて、クラブはまた前に進むことができました。もし前に進もうという意思がなければきっと何も成し遂げられなかったし、クラブも成長できていなかったと思います。
このクラブが辿ってきたことを振り返りながら、クラブスタッフとたくさんの時間そのようなことを話合っていました。
そんな中で、「前に進む」ことの重要性を認識し始め、この「前に進む」ということはどういうことなんだろうと考え始めました。
僕が言わなくても多くの人はわかっていることだと思いますが、「前に進む」という力は物事がうまくいっている場合よりも、むしろ物事がうまくいかない時や困難な時の方が重要だと思います。
本当に大変だと思うし、場合によってはどうすれば良いのか分からなくなるようなことに陥ることもあると思います。
うまくいかない時や困難な時に「どうすれば前に進むことができるか?」ということを考える力というのは生きていく上でも、そしてクラブ運営にとっても本当に重要だなと強く思うようになりました。そしてクラブ内各部で話し合い、“KEEP MOVING FORWRAD/前に進み続ける”という考えを追求していくことをフィロソフィーとしてクラブを運営していこうという結論に至ったわけです。
KEEP MOVING FORWARDを調べてみて
フィロソフィーを決めた後に、KEEP MOVING FORWARDってどこでどんな風に使われているのか?と調べてみたんですが、やっぱり世界中で使われているし、いろんなところで映画の台詞や格言としても残ってるんですよね。いろんな使われ方を調べてる中ですごくわかりやすく表現している映画の台詞と再会しました。
ロッキーザファイナルの中の台詞です。
「え?ロッキーなの?」と思うと思うんですが、僕が説明するよりもフィロソフィーの目的を何倍もわかりやすく理解できる台詞でした。シーンはロッキーが息子に人生とは…ということを伝えるシーンです。検索すると結構動画も出てくると思います。
クラブが考えるフィロソフィーを追求するという意味が詰まってる感じです。
「Let me tell you something you already know.
The world ain't all sunshine and rainbows.
It is a very mean and nasty place
and it will beat you to your knees and keep you there permanently if you let it.
You, me, or nobody is gonna hit as hard as life.
But it ain't how hard you hit;
It's about how hard you can get hit, and keep moving forward !
How much you can take, and keep moving forward.
That's how winning is done.」
「世界(世の中)はバラ色じゃない。
とても厳しいところ。
気を抜くと這い上がれないくらいどん底に落ちる。
人生はどんなパンチよりも重く、おまえを打ちのめす。
でも大切なのはどれだけ強いパンチで殴り返すかではない。
大切なのはどれだけパンチを打たれても、前に進み続けられるか。
どれだけパンチを打たれても、前に進み続けられるか。
それが勝利するということだ。」
すみません、こんな感じの台詞になります。
映像で観ると本当にグッときますよ。
若い人にはロッキーって馴染みがないと思うので、最近の話題で言うと鬼滅の刃の煉獄さんの言葉ですかね。
「己の弱さや不甲斐なさにどれだけ打ちのめされようと、
心を燃やせ
歯を喰いしばって
前を向け」
めちゃくちゃ響きます…。
「前に進み続ける」為にどうすれば良いのか。心が折れてしまいそうになる時もこういう思考でいることは言葉にする以上に本当に難しいと思っています。
選手達はフィロソフィーを体現してくれている
うまくいかないことの方が多いのが人生だと思っています。まぁ、僕だけかもしれませんが、僕の人生はうまくいっていないことの方が圧倒的に多いです。
フィロソフィーを持つようになってから、選手達に強く期待していることは「上手くいかない状況になっても下を向かない」ということ。
もちろん勝って欲しいというのは強く思っています。ただこの世界はだいたい必ず一方は勝って、一方は負けます。勝ち続ける時もあるかもしれないけど、それを100年続けるのって至難の業だと思います。勝ったり負けたり、筋書きのないドラマがあるからスポーツは素晴らしいと思います。
その中でも応援している人が一人でもいてくれるのであれば、最後まで諦めずに戦い抜いて欲しい、全力を出し切って欲しいという思いが強いです。90分という試合の中でうまくいかないこともたくさんあると思いますし、失点して厳しい状況になることもあるかもしれないです。そんな状況でも「自分達がここから勝つにはどうしたら良いか?」ということを常に考えながらプレーができるクラブになったら強くなれるんじゃないかと思っています。そういう意味では2020シーズンは監督、スタッフ、選手ひとり一人がそういう意識でプレーしてくれていると思いますし、それが栃木のスタイルなんだということを体現してくれていると思っています。
アカデミー選手を育てる軸に
プロ選手を目指し頑張っているアカデミー選手にはしっかりとこのフィロソフィーを追求できる人材に育ってもらいたいと思っています。プロ選手を目指す選手もいれば進学する選手、就職する選手とそれぞれの道を歩んでいくことになります。そんな選手達が困難な状況を迎えた時でも「前に進み続ける」ことを考え抜ける人間形成ができれば、将来、きっと活躍し誰かに貢献できる人材になれると思っています。フィロソフィーを持ち始めてまだ3年目です。クラブとして今後アカデミー選手達の成長に貢献できるよう取り組んでいきたいと思っています。
ここまで長々と話してきましたが…
フィロソフィーについて伝えたいことが伝わってくれたらと思っています。
じゃあ、僕自身が常に前に進み続けられてるのか?というと全然です。
フィロソフィーを持っているからといってどんな時も前に進み続けられているのかっていうと、それは違います。挫けることもたくさんあります。
僕も含めてクラブに関わる全員で「前に進み続ける」ということがどういうことなのか、ということを追求していきたいと思っています。これは終わることがないです。
以前、スタッフに「こうしようと思うんだけど、どう思う?」と尋ねた案件があるんですが、そのスタッフは反対だったんですよね。その時に言われたのが「それってクラブとして前に進んでます?」と。その視点で考えたら前進というより後退の話しを僕がしていたことに気づかされました。
クラブとしてそういう軸を持って仕事ができていることがすごく嬉しかったですね。
今後も仕事もそうですが、フィロソフィーを更に体現できるようなフットボールを目指していけるようなクラブに成長できるよう前に進み続けたいと思っています。
このコロナの状況でも何とか前に進み続けられるよう、皆さん宜しくお願い致します。
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