Ⅱ.習近平新時代中国特色社会主義思想・学生読本・小学高年級 p.60-61

第十讲 绿水青山就是金山银山

第10講 美しい山河こそが〔豊かさをもたらす〕金山銀山である

典拠:2005年8月15日、習近平が浙江省湖州市安吉県余村を視察した際に提出した「両山理論」と呼ばれる思想。曰く:
我们过去讲既要绿水青山,也要金山银山,其实绿水青山就是金山银山,本身,它有含金量……要坚定不移地走这条路,有所得有所失,熊掌和鱼不可兼得的时候,要知道放弃,要知道选择。

注釈:
①绿水青山:
自然豊かな美しい山河。「青山绿水」とも。
②绿水:「緑水」は水草や藻で緑色に見える河川や湖沼。日本人的にはマイナスだが、中国人的にはプラスらしい。科学用語としては、河川水など目に見える水一般を「藍水」と呼ぶのに対して、河川・大気・土壌を循環している目に見えない水分を「緑水」と呼んでいる。
③青山:青々とした木々が生い茂った山。
④金山銀山:金鉱山と銀鉱山。地元の人々に“豊かさ”をもたらす自然資源の象徴。もともと、この“豊かさ”は経済発展を指していたが、「小康社会」の実現に伴い、抽象化しつつある。

補論:両山理論
 両山とは、「緑水青山」と「金山銀山」の二つの山を指し、「両山理論」とは環境保護と経済発展の両立を意味する。毛沢東の《矛盾論》もそうだが、「中庸」思想の影響か、陰陽思想の影響か、中国人はこうした相反する目標を同時追求する「ロジック」を好む傾向がある。
 2003年、当時浙江省の省委書記(省の最高責任者)だった習近平の指示で、省内の農村の「三生」(生産・生活・生態)を改善するプロジェクトが始まった。モデルケースに選ばれた1000の村々のなかに余村があった。余村
は、80年代の改革開放に伴うセメント需要を背景に、石灰石の採掘場とセメント工場で大いに潤っていたが、習近平のプロジェクトが始まると、自然環境回復のために鉱山と工場を自ら閉鎖した。
 習近平は余村を視察して絶賛し、このとき「緑水青山就是金山銀山
」という言葉とともに「両山理論」が誕生した。余村は「両山理論」の生まれた土地であり、最初の成功例として象徴的な存在となった。

生态

エコロジー(生態系)

本文:浙江省安吉县有一个三面环山的村庄,叫余村。20世纪80年代,为摆脱贫困,余村人炸山开矿,卖矿石、造水泥。很快,余村成为安吉县首富村。村民的“钱袋子”鼓了,大山却变得满目苍夷。村民回忆当年的情景时说:“生产的时候,抬头都看不见蓝色的天空。”“出趟门回来,眉毛、头发都是白的,全是粉尘。”“一到雨天,村里的溪水就像酱油一样”。

意訳:浙江省安吉県に三方向を山に囲まれた村落あり、余村と言います。20世紀の80年代、貧しさから逃れるために、余村の人は山を〔ダイナマイトで〕吹き飛ばして鉱山を開き、鉱石を売り、セメントを製造しました。すぐに、余村は安吉郡で一番豊かな村となりました。 村人たちの「お財布」(钱袋子)はパンパンに膨れましたが、大山は却って破壊され尽くしました。村人たちは当時の様子を思い出して、「生産している時、頭をもたげても青空は全く見えなかった」「家に帰って来たら、眉毛も髪も真っ白で、粉塵まみれだった」「いったん雨になると、村の中の小川は醤油のようだった」と言います。

注釈:
①三面环山(三面環山):
三方向を山に囲まれた地形。残る一方向が河に面していれば、「三面环山、一面环水」といい、風水的に理想的とされた。
②余村:浙江省安吉県天荒坪鎮の管轄下にある村落。中国では、環境保護と経済開発の両立に成功したモデルケースとして有名。
1980~90年代、「改革開放」による経済発展で急激に高まるセメント需要を背景に、良質な石灰石を産出して栄えたが、ひどい環境破壊を招く結果となった。2005年に習近平が現地を視察して「両山理論」(自然豊かな美しい山(環境保護)と豊富な地下資源を持つ鉱山(経済発展)の両立)を提出、これにもとづいて環境改善に取り組んだ結果、美しく住みやすい村となり、 2019年には「全国乡村旅游重点村」「全国乡村治理示范村」「第一批国家森林乡村」などに選出され、2021年12月には国連の「 ベスト・ツーリズム・ビレッジ(BTV)」に選出された。
参考:1分钟走进安吉县余村
③满目苍夷(満目蒼夷):至るところが破壊されている様子


本文:
2003年6月,浙江在全省启动“千村示范、万村整治”工程,余村停掉了矿山、关掉了水泥厂。2005年8月15日,习近平爷爷来到余村,听到村里主动关停矿山的做法后说:“你们下定决心关掉矿山,这是高明之举!过去我们讲既要绿水青山,又要金山银山,实际上,绿水青山就是金山银山。”

意訳:2003年6月、浙江省が省を挙げて「一千の村がモデルとなり、一万の村が改修する」(千村示范、万村整治)プロジェクトを開始すると、余村は鉱山を停止し、セメント工場を閉鎖しました。2005年8月15日、習近平お祖父様が余村に来られて、村内で自主的に鉱山を閉じたというやり方をお聞きになって、「皆さんが鉱山の閉じる決心を下したこと、これは見事な行い(高明之举)です!昔は、私たちは“美しい山河(绿水青山)も欲しいが、〔豊かさをもたらす〕金山銀山も欲しい”と言ったものですが、実は美しい山河こそが〔豊かさをもたらす〕金山銀山なのです」とおっしゃいました。

注釈:
①“千村示范、万村整治”工程:略称は「千万工程」。2003年に浙江省の省委書記(省の最高責任者。「省長」は行政方面の最高責任者で、省委副書記が務める。)であった習近平が、農村の生産・生活・生態の「三生」環境改善に重点を置くと宣言して始まった5ヵ年プロジェクト。省内にある4万の農村から1万村を選んで全面的な改修(整治)を施し、さらにその中から1000村をモデルケースに選んだ。


本文:关停矿山后,满山的毛竹又长了起来,从山里流出来的溪水也变得清粼粼了。现在,这里山清水秀、桃红柳绿、鸟语花香。余村成为全国首个实践“绿水青山就是金山银山”理念的生态旅游、乡村度假景区。

意訳:鉱山を閉鎖した後、山一杯に再び竹が生え始め、山から流れ出る渓流は澄んできらきらと輝くようになりました。今や、ここは山河は清らかで(山清水秀)、草木は色彩豊かで(桃红柳绿)、生き物に満ちています(鸟语花香)。余村は、中国で初めて「美しい山河こそが〔豊かさをもたらす〕金山銀山である」(绿水青山就是金山银山)という理念を実践したエコツーリズム(生态旅游)・農村型滞在リゾート景観区(乡村度假景区)となりました。

注釈:
①山清水秀:自然の風光明媚な様子。山は清らかで、河水は澄んでいる。
②桃红柳绿(桃紅柳緑):草木が生い茂り、色鮮やかな様子。桃が赤い花を咲かせ、柳が緑の葉を茂らせる。
③鸟语花香(鳥語花香):動植物の生命が満ち溢れている様子。鳥が語り、花が香る。
④生态旅游(生態旅遊):エコツーリズム、生態観光。自然環境や歴史文化を体験しながら学ぶとともに、その保存にも責任を持つ環境のあり方。
⑤乡村度假景区(郷村度仮景区):農村型休暇景観区。日本でいう「国民休暇村」。景観や環境の良い農村に、滞在型バカンスを楽しめるようにレクリエーションやスポーツ、保養を目的とした各種施設を設置したリゾート地。

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