Ⅱ.習近平新時代中国特色社会主義思想・学生読本・小学高年級 p.68-69

1.坚持总体国家安全观

1.総体的国家安全保障観を堅持する

典拠:2014年4月15日、習近平が「中央国家安全委员会第一次会议」に提出した国家安全保障全体に対する考え方。毎年4月15日は「全民国家安全教育日」である。

本文:国家安全是安邦定国的重要基石,国泰民安是人民群众最基本、最普遍的愿望。实现中华民族伟大复兴的中国梦,保证人民安居乐业,国家安全是头等大事。

意訳:国家安全保障は国を安定させる重要な礎(いしずえ)であり、国家安泰・人民安寧(国泰民安)は人民たちにとって最も基本的で、最も普遍的な願望です。「中華民族の偉大なる復興」という「チャイナ・ドリーム」(中国梦)を実現し、人民が安心して暮らし楽しく働けるよう保証するうえで、国家の安全保障は一番大事です。

注釈:
①国家安全:
日本語の「国家安全保障」よりも、対象範囲が広い。中国では、次の16種の安全分野が設定されている。すなわち政治安全、国土安全、軍事安全、経済安全、文化安全、社会安全、科技安全、网絡安全(ネットの安全)、生態安全、資源安全、核安全、海外利益安全、生物安全、太空安全、极地安全、深海安全の16種である。
②中华民族伟大复兴(中華民族偉大復興):「中華民族の偉大なる復興」。中国語の「伟大」(偉大)は基本的に形容詞であり、名詞としての用例は極めて少なく、ここの「伟大」は「复兴」(復興)を修飾している。英訳すれば”The Great revival of Chinese Nation”であり、決して”The Great China will be Back” ではない。また、この「伟大」は”繁荣”や“兴盛”の近似語であり、”强大”(力量)というニュアンスはない。
 ここでいう「复兴」がなぜ「伟大」なのかといえば、日本が大震災から復興するとか、アメリカの”Make America Great Again ”のような、ちょっと前の状態に戻すという次元の話ではなく、19世紀以降、国際社会のなかで大きく遅れをとってきた中国を建て直すこと、それは中国史上最初の近代化を達成するということであり、もはやただの「复兴」ではない、それはもう”すっごくすごい”「复兴」だからである。
中国梦(中国夢):直訳すれば「中国の夢」。だが「American Dream」を念頭に置いた概念なので、カタカナ英語に意訳した。文法的には「チャイニーズ・ドリーム」とすべきだが、すでに「チャイナ・リスク」といった表現が定着しているので、「チャイナ・ドリーム」とした。中国人によれば、「American Dream」はあくまで個人の経済的成功を指すに過ぎないが、「中国梦」は社会全体の発展と幸福実現を指す。


本文:2014年4月15日,习近平爷爷首次提出总体国家安全观, 为解决我国国家安全面临的难题、推进国家安全工作提供了基本遵循。总体国家安全观关键在“总体”,强调的是做好国家安全工作的系统思维和方法,突出的是“大安全”理念。

意訳:2014年4月15日、習近平お祖父さまは初めて総体的国家安全保障観を提出し、我が国の国家安全保障が直面している難題を解決し、国家安全保障活動を推進するために、基本的遵守を提供なさいました。総体的国家安全保障観の鍵は「総体」にあり、強調しているのは国家安全保障活動を上手く行うシステム的思考と方法であり、突出しているのは「大安全」の理念です。

注釈:
①2014年4月15日:
「中央国家安全委员会第一次会议」が開催された。
②大安全理念: ここでいう「安全」とは、人の精神と身体、それを取り巻く環境(社会秩序、文化、経済、制度、国家、自然、生態等)が良好であることを意味する。
 「大安全」とは中国政府による統一的指導の下、社会の様々な部門・分野が参加し、社会資源を合理的かつ整合的に活用して、人民や家庭、職場、社会、国家を脅かす様々な脅威に対して、総合的かつ系統的に予防と防衛を行うという理念である。
 その好例が、2022年4月に実施された上海ロックダウンである。


語録:当前我国国家安全内涵和外延比历史上任何时候都要丰富,时空领域比历史上任何时候都要宽广,内外因素比历史上任何时候都要复杂,必须坚持总体国家安全观,以人民安全为宗旨,以政治安全为根本,以经济安全为基础,以军事、文化、社会安全为保障,以促进国际安全为依托,走出一条中国特色国家安全道路。

典拠:2014年4月15日、習近平が「中央国家安全委员会第一次会议」に提出した総体国家安全重大戦略思想。

意訳:現在、我が国の「国家安全保障」という言葉の持つ「内包」(intension)と「外延」(extension)は歴史上のいかなる時代よりも豊かで、空間領域は歴史上のいかなる時代よりも広大で、その内外の因子は歴史上のいかなる時代よりも複雑であり、〔故に中国共産党は〕総体的国家安全保障観を堅持し、人民の「安全」を主旨として、政治の「安全」を根本とし、経済の「安全」を基礎とし、軍事、文化、社会の「安全」を保障とし、国際的な「安全」の促進を頼みとして、中国的特色のある国家安全保障の道を歩み出さなければならない。

注釈:
①内涵和外延:
論理学の用語で、「内包」(intension)と「外延」(extension)。ある概念が持つ共通な性質を「内包」といい、その具体的なものを「外延」という。習近平思想では「国家安全」という概念に対して 「国民安全、领土安全、主权安全、政治安全、军事安全、经济安全、文化安全、科技安全、生态安全、信息安全」という10個の「内包」が定義されている。その実現のための様々な政策が「外延」ということになる。
②安全:ここでいう「安全」の範囲は、日本語のそれより幅広いので注意を促すべく「 」を付けておいた。
③以人民安全为宗旨(以人民安全為宗旨):人民を中心とし、その合法上の権利を保障し、快適な生活環境を提供すること。
④以政治安全为根本(以政治安全為根本):中国共産党による指導の下で「中国特色社会主義」を堅持すること。
⑤以经济安全为基础(以経済安全為基礎):国家経済が阻害されずに発展し、国内に物資を安定して供給すること。
⑥以军事、文化、社会安全为保障(以軍事、文化、社会安全為保障):所謂るハードパワーとソフトパワーによる安全保障を目指す。
⑦以促进国际安全为依托(以促進国際安全為依托):国際協調による平和路線を指針とすること。

本文:贯彻落实总体国家安全观,必须既重视外部安全,又重视内部安全;既重视国土安全,又重视国民安全;既重视传统安全,又重视非传统安全;既重视发展问题,又重视安全问题;既重视自身安全,又重视共同安全。

意訳:相対的国家安全保障観を貫き通すには、外部の安全保証を重視するとともに、内部の安全保障を重視しなければなりませんし、国土の安全保障を重視するとともに、国民の安全保障を重視しなければなりませんし。伝統的な安全を重視するとともに、非伝統的な安全を重視しなければなりませんし、〔そこから〕発展した問題を重視するとともに、安全保障の問題そのものも重視しなければなりませんし、自分自身の安全を重視するとともに、みんなの安全も重視しなければなりません。

注釈:
贯彻落实(貫徹落実):
ある理念を十全に満たしつつ、かつ実行に移すこと。

図解: 政治安全、国土安全、军事安全、经济安全、文化安全、社会安全、科技安全、网络安全、生态安全、资源安全、核安全、海外利益安全、生物安全。

意訳:政治の安全、国土の安全、軍事の安全、経済の安全、文化の安全、社会の安全、科学技術の安全、ネットの安全、生態系の安全、資源の安全、核の安全、海外利益の安全、生物の安全。


注釈:
①16種安全:本書の図には13個しか記載されていないが、さらに太空安全、极地安全、深海安全の3つがある。
政治安全:中国共産党の指導下で中国特色社会主義を堅持していること
国土安全:領土保全。
军事安全(軍事安全):人民解放軍の軍事力による抑止
经济安全(経済安全):経済発展による国力増強と国内の物資供給の安定
文化安全:ソフトパワーによる抑止。
社会安全:社会秩序の安定。
科技安全:科学技術の発展による国力増強。生活水準の向上
网络安全(網絡安全):ネットの安全。(不確かな情報の遮断)
生态安全(生態安全):環境保全。
资源安全(資源安全):資源の確保。
核安全:核兵器による抑止力。
海外利益安全:領外における国益。資源の確保、交易路の安全、在外邦人・法人の安全・権利。
生物安全:厳格な防疫体制。感染症対策(コロナ封じ込め)
太空安全:宇宙開発による国家安全保障と国益追求。
极地安全(極地安全):南極開発による資源確保。
深海安全:深海開発による資源確保。


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