シベリウス 交響曲第4番 イ短調 作品63
08:26 II. Allegro molto vivace
12:35 III. Il tempo largo
21:10 IV. Allegro
再生時間 30'' 33'
#### **1. 作曲の背景と経緯**
シベリウスの交響曲第4番は、彼の交響曲の中でも最も異色で内省的な作品として知られています。作曲は1909年から1911年にかけて行われ、1911年4月3日にヘルシンキで初演されました。この交響曲の成立には、いくつかの重要な要因が影響を及ぼしました。
**① シベリウスの健康問題**
1908年、シベリウスは喉の腫瘍の疑いがあり、大きな手術を受けました。この経験は彼に死の恐怖を突きつけ、人生観にも大きな影響を与えました。その後、彼はアルコールやタバコを控え、健康に留意するようになりますが、心理的な不安が作曲にも反映されています。
**② 経済的困難と孤独**
シベリウスは1907年にフィンランド政府から終身年金を受けることになりましたが、依然として経済的な不安を抱えていました。また、国際的な成功を収めたとはいえ、当時の音楽界ではドビュッシーやストラヴィンスキーなどの新潮流が台頭しつつあり、シベリウスの作風は時代遅れと見なされることもありました。そうした状況の中で彼は、自己の芸術に対する疑念や孤独を深めていきました。
**③ スイス旅行とピラトゥス山**
1909年、シベリウスはスイスを訪れ、ルツェルン湖のほとりにある**ピラトゥス山(Mount Pilatus)**に登りました。この山の荒涼とした風景は、彼に強いインスピレーションを与え、交響曲第4番の厳しい響きや旋律の形成に影響を与えたと考えられています。
**④ 調性の探求**
この交響曲では、シベリウスは当時の前衛的な手法(特に無調に向かう流れ)を意識しつつ、独自の語法を模索しました。特に、**増四度(トライトーン)** の使用が特徴的で、冒頭のチェロの動機(A-F#-C#-E)や、旋律の不安定さが全曲の印象を決定づけています。
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### **2. 楽曲の詳細分析**
この交響曲は、全4楽章から成り、全体を通して伝統的なシンフォニックな発展を拒否するような構造を持っています。
#### **第1楽章:Tempo molto moderato, quasi adagio**
交響曲は、チェロの低い音域で始まる神秘的な下降音型(A-F#-C#-E)で幕を開けます。この動機は、増四度の不安定な響きを含み、交響曲全体の基調を形作る重要な要素です。
木管楽器と弦楽器がゆっくりと絡み合いながら、静謐でありながらも緊張感のある響きを生み出します。伝統的なソナタ形式を用いながらも、明確な主題展開はほとんどなく、フレーズは断片的で、持続的な不安定感が支配します。
#### **第2楽章:Allegro molto vivace**
第1楽章の暗さを打ち破るかのように、突然リズミカルなスケルツォが登場します。しかし、一般的なスケルツォ楽章と異なり、旋律は短く、どこか冷たく機械的な動きが特徴です。弦楽器のピチカートや木管楽器の鋭いアクセントが印象的で、全体として遊び心よりも緊張感が勝る楽章となっています。
#### **第3楽章:Il tempo largo**
この楽章は、シベリウスの交響曲の中でも最も内省的で、静かに思索を深めるような楽章です。冒頭の低弦の静かな持続音が、広大な空間を感じさせます。旋律はシンプルですが、慎重に構築されており、時間の流れが止まったかのような感覚を与えます。全体的に、孤独と静寂を表現する楽章といえるでしょう。
#### **第4楽章:Allegro**
フィナーレは、活発なリズムと短い旋律の断片が交錯する中で展開されます。しかし、通常の交響曲の終楽章のように劇的なクライマックスに至るのではなく、あくまで冷静に、抑制されたまま進行します。最後は突然の静寂が訪れ、はっきりした結論を迎えないまま曲が終わります。
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### **3. 1946年3月5日録音:アルトゥール・ロジンスキ指揮、ニューヨーク・フィルハーモニック**
#### **① 指揮者:アルトゥール・ロジンスキ(Artur Rodzinski, 1892–1958)**
ロジンスキはポーランド生まれの指揮者で、1930〜50年代にアメリカで活躍しました。彼は、リハーサルの厳格さと、明晰かつダイナミックな演奏スタイルで知られていました。特に、ニューヨーク・フィルの音楽監督を務めた1943〜1947年の間、オーケストラの技術的水準を飛躍的に向上させました。
ロジンスキの解釈は、しばしば鋭いリズム感と明快な構造を特徴とします。シベリウスの交響曲第4番のような内省的な作品では、彼の統率力がオーケストラの緊密なアンサンブルを生み出し、作品の透明な構成を際立たせています。
#### **② ニューヨーク・フィルハーモニック(New York Philharmonic)**
ニューヨーク・フィルハーモニックは、アメリカ最古のオーケストラの一つであり、20世紀にはトスカニーニ、ワルター、ロジンスキ、バーンスタインらの指揮のもとで発展しました。ロジンスキ時代のニューヨーク・フィルは、鋭い音楽的感覚と卓越したアンサンブル能力を誇り、特にロマン派や近代音楽の演奏において高い評価を受けていました。
#### **③ 1946年録音の特徴**
この録音は、第二次世界大戦直後に行われたもので、当時の録音技術としては比較的良好な音質を持っています。ロジンスキの解釈は、シベリウスの冷たい音響世界を明晰に捉えながらも、オーケストラの持つ豊かな響きを生かし、非常に緊張感のある演奏を作り上げています。特に、**第1楽章の冒頭のチェロの音色の陰影の深さや、第3楽章の静寂の表現** には、ロジンスキならではの強い統率力が感じられます。
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### **4. まとめ**
シベリウスの交響曲第4番は、作曲者の精神的な変遷を反映した孤高の傑作であり、伝統的な交響曲の形式を打ち破る前衛的な作品です。ロジンスキとニューヨーク・フィルの1946年の録音は、この交響曲の厳格さと透明感を鮮やかに表現し、特にオーケストラの精密なアンサンブルと音色の変化が際立つ演奏となっています。
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