モーツァルト：ディヴェルティメント ヘ長調 K.138(125c)
03:54 II. Andante
08:00 III. Presto
再生時間 10'' 05'
モーツァルトの《ディヴェルティメント ヘ長調 K.138/125c》は、1772年に作曲された作品で、モーツァルトが16歳の時にイタリアのミラノで作曲した3つの「ザルツブルク・シンフォニア」の1つです。この3つのディヴェルティメント（K.136-138）は、軽快な性格と明るい曲調で知られています。
### 構成
《ディヴェルティメント ヘ長調 K.138/125c》は、通常の交響曲や弦楽四重奏とは異なり、3つの楽章で構成されています。
1. **第1楽章：アレグロ（Allegro）**
- 明るく生き生きとした旋律が特徴のソナタ形式で書かれています。開放感のあるテーマが提示され、活発な展開が続きます。
2. **第2楽章：アンダンテ（Andante）**
- 穏やかで優美な楽章です。モーツァルト特有の美しい旋律線が引き立ち、静謐で抒情的な雰囲気を醸し出します。
3. **第3楽章：プレスト（Presto）**
- フィナーレにふさわしい、速く生き生きとした楽章です。軽快でエネルギッシュなリズムが全体を貫き、華やかな終結を迎えます。
### 背景と特徴
このディヴェルティメントは、もともと「ディヴェルティメント」としてよりも「弦楽のためのシンフォニア」として知られており、モーツァルトがイタリアで学んだオペラ・ブッファの影響を強く受けています。3つの作品の中でも特にこのK.138は、親しみやすい旋律と明快な形式が特徴で、聴衆に楽しさを提供します。
また、弦楽四重奏や室内楽の編成で演奏されることが多く、全体的に軽快で、複雑さよりも透明感のある音楽が魅力です。モーツァルトの若さ溢れるエネルギーと、彼の持つ自然なメロディ作りの才能がよく表れている作品です。
### 楽器編成
《ディヴェルティメント ヘ長調 K.138/125c》は、弦楽四重奏または弦楽合奏で演奏されることが一般的です。この作品は比較的小規模な編成のため、室内楽のコンサートやサロンでしばしば演奏されます。
この作品は、軽快で明るい雰囲気を持ち、リスナーにモーツァルトの初期の才能と楽器の扱い方の巧妙さを感じさせる一曲となっています。
1955年に録音されたモーツァルトの『ディヴェルティメント ヘ長調 K.138 (125c)』は、バリリ弦楽四重奏団（Barylli Quartet）によって演奏されました。この録音には、特にヴィルヘルム・ヒューブナー（Wilhelm Hübner）が第2ヴィオラ奏者として参加している点が注目されます。
### バリリ弦楽四重奏団 (Barylli Quartet)
バリリ弦楽四重奏団は、1940年代後半にオーストリアで結成された弦楽四重奏団で、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のメンバーで構成されていました。メンバーは以下の通りです：
- **第1ヴァイオリン**: ヴァルター・バリリ (Walter Barylli)
- **第2ヴァイオリン**: オットー・シュトラッサー (Otto Strasser)
- **ヴィオラ**: ルドルフ・シュルツ (Rudolf Streng)
- **チェロ**: リチャード・クロチャック (Richard Krotschak)
バリリ弦楽四重奏団は、ウィーン古典派のレパートリーを中心に活動しており、特にモーツァルトやベートーヴェンの弦楽四重奏曲の解釈で高い評価を得ました。彼らの演奏は、ウィーン特有のリリカルで豊かな音色と、アンサンブルの一体感が特徴です。
### ヴィルヘルム・ヒューブナー (Wilhelm Hübner)
この録音では、通常の四重奏編成に加え、特別にヴィルヘルム・ヒューブナーが第2ヴィオラとして参加しています。ヒューブナーはウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のメンバーであり、ヴィオラ奏者としての技量と経験により、アンサンブルに深みと柔軟性を加えています。
ヒューブナーの演奏は、特にモーツァルトの音楽に対する深い理解と、ウィーンの伝統に基づく洗練された表現力で知られています。彼が参加することで、モーツァルトのディヴェルティメントにおけるヴィオラの重要な役割が強調され、全体の響きが一層豊かになっています。
### 録音の背景と解釈
1955年のこの録音は、モノラル録音ながらも、当時の最高水準の音質を誇り、ウィーンの音楽伝統を伝える貴重な記録となっています。ディヴェルティメントK.138は、弦楽四重奏団にとっても親しみやすい作品でありながら、各パートが独立した旋律を持つことで、演奏者の技術と表現力が試される作品でもあります。
バリリ弦楽四重奏団とヒューブナーの演奏は、ウィーンの伝統的な音楽美学を体現し、作品に込められたモーツァルトのユーモアと温かみを余すところなく表現しています。
この録音は、モーツァルトの室内楽作品を探求する上で欠かせないものであり、特にバリリ弦楽四重奏団とウィーン・フィルハーモニーの関連性を考慮すると、その歴史的価値は非常に高いと言えます。
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