モーツァルト 弦楽五重奏曲第2番ハ短調 K.406 (516b)
08:38 II. Andante
12:51 III. Menuetto in canone
17:33 IV. Allegro
再生時間 23'' 10'
### モーツァルト：弦楽五重奏曲第2番 ハ短調 K.406 (516b) の解説
#### 作曲の背景と経緯
モーツァルトの弦楽五重奏曲第2番ハ短調 K.406 (516b) は、1787年に作曲されました。この五重奏曲は、モーツァルトが既に作曲していたセレナード第12番ハ短調 K.388 (384a) の編曲として知られています。セレナードから五重奏曲への編曲という形で誕生したこの作品は、モーツァルトが室内楽のジャンルでの新たな試みを行った例でもあります。
弦楽五重奏曲という形式は、通常の弦楽四重奏（2つのヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ）にヴィオラが1本追加された形態をとります。モーツァルトはこの編成を好み、特にヴィオラの柔らかい響きを活かした構成を追求しました。ハ短調という調性は、モーツァルトの作風において特に劇的で感情的な作品に使われることが多く、この五重奏曲もその例外ではありません。
この編曲が行われた時期は、モーツァルトがウィーンで活躍しながらも経済的に苦しい状況に置かれていた時期にあたります。また、同時期には彼の代表的なオペラ『ドン・ジョヴァンニ』の作曲にも取り組んでおり、五重奏曲にはこのオペラ的な表現が反映されていると考えられます。
#### 楽曲の構成
弦楽五重奏曲第2番 K.406 は、以下の4つの楽章から構成されています。
1. **第1楽章：アレグロ**
- ソナタ形式。ハ短調の劇的な主題で開始され、非常に印象的な導入を持っています。この主題は悲劇的な性格を持ち、対照的な穏やかな副主題とともに緊張感を持続させます。特に展開部では、深い感情表現が展開され、モーツァルトの巧みな対位法が見られます。
2. **第2楽章：アンダンテ**
- 変ホ長調。静謐で歌うような旋律が中心となり、穏やかな休息を提供します。この楽章では、ヴィオラが中心的な役割を果たし、柔らかな響きを際立たせています。
3. **第3楽章：メヌエット（アレグレット）**
- ハ短調。メヌエットの形式をとりながらも、通常の明るい舞曲とは異なり、陰影のある表現が特徴的です。トリオ部分では、明るいハ長調が挿入され、対照的な効果を生み出します。
4. **第4楽章：アレグロ**
- ロンド形式。この終楽章では、軽快な主題と劇的なエピソードが交互に現れます。ハ短調からハ長調への調性的な解決が見られ、最後には希望と輝きに満ちた締めくくりとなります。
#### 楽曲の特徴
- **ドラマ性と対比**：ハ短調という調性が生み出す劇的な緊張感と、穏やかな部分の対比が全体の特色です。
- **ヴィオラの活躍**：モーツァルト自身がヴィオラを得意としていたこともあり、この作品ではヴィオラが重要な役割を担っています。
- **オペラ的表現**：同時期の『ドン・ジョヴァンニ』の影響も感じられ、特に第1楽章の劇的な性格や第3楽章のメヌエットにはオペラの要素が見られます。
#### 編曲の意義
原曲であるセレナード K.388 は管楽アンサンブルのために作曲されていましたが、モーツァルトはこれを弦楽器に編曲することで、新たな表現の可能性を追求しました。このプロセスでは、単なる楽器の置き換えではなく、弦楽器ならではの色彩やテクスチャが巧みに取り入れられています。
#### 評価と意義
この作品は、モーツァルトの弦楽五重奏曲の中でも異色の存在であり、作曲者の成熟した作曲技法と感情表現の深さを示しています。同時に、原曲のセレナードから弦楽五重奏曲への変換というモーツァルトの創造的な取り組みも評価されています。
この五重奏曲は、後の作曲家にも影響を与え、弦楽五重奏というジャンルの発展において重要な位置を占めています。
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バルヒェット四重奏団は、1947年にドイツのヴァイオリニスト、ラインホルト・バルヒェットを中心に結成されました。1950年代初頭、彼らはモーツァルトの弦楽五重奏曲全集を録音し、これらの録音は現在も高く評価されています。
**演奏者構成：**
- **第1ヴァイオリン**：ラインホルト・バルヒェット（Reinhold Barchet）
- **第2ヴァイオリン**：メンバーの詳細情報は限られていますが、四重奏団の一員が担当しています。
- **第1ヴィオラ**：四重奏団のヴィオラ奏者が担当しています。
- **チェロ**：四重奏団のチェリストが担当しています。
- **第2ヴィオラ**：エミール・ケッシンガー（Emil Kessinger）
この録音は、1952年に行われたとされています。 バルヒェット四重奏団は、当時のドイツを中心に活躍し、特にモーツァルトの作品において評価を受けていました。彼らの演奏は、素朴で温かみのある音色が特徴とされています。
ラインホルト・バルヒェットは、シュトゥットガルト出身のヴァイオリニストで、シュトゥットガルト室内管弦楽団のコンサートマスターを務めた後、1952年に室内楽に専念するためにバルヒェット四重奏団を結成しました。彼は1962年に42歳で急逝しています。
バルヒェット四重奏団によるモーツァルトの弦楽五重奏曲第2番 ハ短調 K.406の録音は、当時の録音技術の制約はあるものの、彼らの解釈と演奏スタイルを知る上で貴重な資料となっています。
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