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ガキの頃に憧れた“カマキリ”で本格的にブイブイいわせた話【実践篇】
企画篇からの続き、実践篇とは
こんにちは。ピラミッドフィルム クアドラの鵜飼です。
企画篇の記事の続きを書いていきたいと思います。
実践編はあまり考えず、ゴリゴリ手を動かしていくフェーズについて深く、悪戦苦闘したことを思い出しながら書いていけたらと思います。
企画篇のおさらい
企画篇では「子供の頃にカマキリハンドルってのが流行ってて憧れてたなー」から、「あのハンドル持つと絶対右手首捻ってエアブンブンしちゃうよなー」になって、「待てよ。これは体験がわかりやすくてなんかできるんじゃないか(VRコントローラーとか楽器とか)」となって、「とりあえずマジでブンブンできるようにするか」ということに落ち着き、「リアリティーが重要だから本物のバイクのセンサーとかパーツを使わないとな!」といことでリサーチするが「バイクのセンサーとかパーツは売ってるけど詳細のデータシートや図面などの情報が皆無でやべぇ」と気を落としていたけど「考えていてもしょうがないから、とりあえず売ってるもんは買ってみて、実際に触って確かめて、ゴリゴリ手を動かしていけば何とかなるだろう」と持ち前の楽観主義スタイルで締め括ったのが企画篇まででした。
いくつか自作パーツを作る必要がある
企画篇ではいくつかセンサやパーツを買ってみてとりあえず構造を理解するところまででした。それでハンドル(スロットルキット)からセンサをワイヤーで回すにはスロットルボディなるものが必要で、売ってるセンサやスロットルボディのメーカーや機種みたいなのがまちまちで合わせることができず、いくつか自作パーツを作る必要があることがわかりました。
測っては出力、出力しては微調整
センサやスロットルボディの図面などは調べても出てこないので、測って、測れないところは大体でやりながら3Dプリンターで出力しては削ったり足したりしていってパーツを作っていきました。
まず最初は簡単そうなところから
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0.1mmずつぐらい削ってシンデレラフィットさせる。
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小さいパーツで出力に十数分程度なので、測って、モデリングして、出力してみて、はめてみて、削ったり足したりを繰り返します。
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次にワイヤでスロットルボディを繋ぐパーツを作っていきます。
バイクに関する知識なしなので説明がムズいですがお察しください。
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これがあることによってこの動画のようにアクセルの動きがセンサに伝わるようになります。
な、なんとこのパーツ、完全オリジナルで寸法とか測れないところが多くて困ってたんですが、一発の出力で完璧に機能したので、自分のことを天才なんじゃないかと過信したことを覚えています。
これで理論上、アクセルとセンサが繋がり、アクセル開度が取得できる構造になりました。
ドキドキのセンサ通電
アクセル開度が取得できる状態になったので、今度は実際にセンサの値を取得して挙動を確認していきます。売ってるセンサ(スロットルポジションセンサ )もなかなか種類が豊富で6ピンとか4ピンとかあったけど、情報は全くなかったため、どれがどの線か一か八かで当たりやすい3ピンをチョイスして購入。そのセンサに対応してそうな配線付きカプラーも併せて購入。
センサで分かっている事は12Vっていうことだけでどのピンがどれでみたいなんはわかりませんでした。なので購入した配線付きカプラーの線の色に合わせて配線してみることに。
なんと取得成功!配線付きカプラーありがとう!
これで一安心。挙動を確認してみると少し回転の最初の方にあそびがあって、ギッチギチのチューンにしたかったので、センサ取り付け位置を微調整して、ひとしきりハードウェアのシステムは完了!
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これもめちゃめちゃ測って、ギッチギチのチューンにするためにアソビとか計算して作ったので
めちゃめちゃ苦労した
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スケール感を出すとき大体タバコなのはなぜだろう
忘れてたけど、ここからどうしよう?
当初の企画ではヘッドライトに似せたプロジェクターで地面を映し出し、アクセルに合わせて地面が走っているみたいになるっていう感じでしたが、ここまでの過程で心変わりし、プロジェクターは暗くないと使えないし、視覚効果はなんかつまんないなと思い、シンプルに音と振動でリアリティ出せないかなということで、企画の細部を変更しました。
音どないしよ
音はMAX / MSPていう僕が割と昔から慣れ親しんでるソフトでググりながら作りました。(音系はあまり得意ではない)
一個の短い音声ファイルを(シリアル通信で)取得したアクセル開度に併せて音の立ち上がりとかピッチを変化させるみたいな感じのプログラムで実現しました。音声ファイルを変えるだけで音が変化します。
この時点ではまだセンサと連携しておらず、マウスでそれっぽい動きをさせています。
振動どないしょ
振動は当初、振動モーターでアクセル開度に応じてPWM制御みたいなこと考えていたんですが、割りとこの時点で疲弊してきている感と本当にそれっぽい振動になるかどうかわからなかったので、以前から気になっていたhapStakという触感デバイス体感モジュールのアナログ版を使ってみることにしました。これを使うと上で生成した音をそのまま振動に変えてくれるので時短にもなるし、リアリティーも担保できそうだったので、使えるものは使って楽することに決めました。
このhapStakをハンドルの両方の持ち手付近に装着します。装着はもちろん自作コネクタです。
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多分もっと音の周波数下げればもっと震える
見た目を整える
これでなんとか出揃ったので見た目を整えていきます。
整えると言っても、ただハンドルに部品を取り付けて配線をきれいにしていく感じです。関係ないけど髪も切りました。
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マイファーストブンブン
最高やんけ!
ってことで少し強度とか弱いところとか気になったところとかを修正して完成。
動画も企画篇でも登場したバイク好き・家電好きプロデューサーに手伝ってもらって撮って編集して完成。
成果発表!
ありがたいことに、出来立てホヤホヤの時から社内外いろいろな方に体験いただいて好評を得ることができました。また、有意義なフィードバックもいただいて、既存ゲームのコントローラーとして使えるようにしたりとか、楽器として本当にバイクのコールのようなうまく練習すればなんかの音楽が奏でられるようにアップデートしていきたいと思います。
そして最近、高校生向けにモノづくりとはなんぞやみたいな講座を行ったときにも体験してもらって、意外にも JKがノリノリで「15の夜」歌いながらやってくれたのは新たな発見でした。嬉しい。
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最後にNGシーンを成仏させる
最後に、ここまで駆け足で書いてきましたが、かなり未知のことだらけだったので、実はもっと失敗しております。
センサから煙は出たし、マイコンも一個死んだし、ハイスロを取り付けるのに勘違いして無駄にハンドルを切ったし。
なんとか完成まで漕ぎ着けれたのはいい経験&自信となりました。
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今回も骨のあるプロトタイピングができてよかったです。
「The Kamakiri」の製作過程についてはTwitterでも呟いていますので覗いて見てください。
ご精読ありがとうございました。
終わり。
また過去の他のプロトタイプ作品はこちらからご覧いただけます。