子どもは骨格標本を見ると頭が良くなる?!ティラノサウルスの骨を見るとわかること
32ページで進化の流れを学べる絵本
―― 今年7月に発売されたばかりのシリーズ最新作『わけあって絶滅したけど、すごいんです。世界一たのしい進化の歴史』は、4冊目にして初めての「絵本」です。
金井弓子(以下、金井):それまでの『わけあって絶滅しました。』シリーズ3冊は、小学校4年生を仮想読者として考えて作りましたが、実は小学校入学前の小さなお子さんに親御さんが読み聞かせてくださっている、というお話も沢山聞いたんです。だったら次は、そのまま読み聞かせにぴったりの絵本を作ろうということで、シリーズ作のイラストを描いてくださっていた絵本作家のサトウマサノリさんにまとめてもらいました。
―― 金井さんはいつも「小学校4年生の気持ちでいる」と言ってますよね(笑)。
金井:気持ちというか、自分の知性や性格が小4レベルだと心から思っているんですけど……(笑)。
子どもたちを見ていると、小学5~6年生って大人顔負けの知識や思考力を身に付けているように思います。もちろん、大人と一緒というわけではないですが「自分の興味」がはっきり、定まっている人が多いように感じます。小学4年生はその手前の柔軟な時期かなという印象があるんですね。それに、4年生までに習う漢字をマスターできると、読めるものの幅が広がるし、基礎学力が高まるということもあるので、「4年生が楽しめる本をつくる」というのは児童書をつくるうえで常に意識しています。ただ今回の絵本は3年生以下も含め、さらに幅広い層に楽しんでいただける作りになっていると思います。
―― 最新作の絵本のストーリーを一言で説明していただくと……。
生きものたちが、目やひれ、あごなど新しい機能や能力を獲得したことを、みずから「すごいでしょ」と自慢しつつ説明していきます。生きものが進化を通じて地球で生きていくうえで有利な形質を獲得していくのだけど、途中ですべてを無に帰す大絶滅が起こる! という物語です。
今回も大型付録が…
―― この絵本は、企画段階の仕込み期間がかなり長かったと聞きましたが、いちばん時間がかかったのはどの部分ですか。
金井:ストーリー案をつくるのに1年近くかかりました。わずか32ページの中で進化のストーリーを面白く伝えるのが難しく、絵本作家のサトウマサノリさんにはおそらくストーリーだけで10通りぐらい、それぞれについてラフを3通りぐらい起こしてもらったと思います。
―― ギョーーっ!!
金井:ですよね(笑)。サトウさんと1~2週間に一度お目にかかって、イラストのラフを見ながら相談して……というのを繰り返しました。サトウさんも「苦しい。すごく悩む」と仰っていましたが、ストーリーが固まってからも、ページをめくるたびに世界観が変わるよう、使用する絵具なども試行錯誤してくださるなど、色使いや構図まですごく工夫して描いてくださっています。
そのイラストのすばらしさを活かせるよう、細心の注意を払いました。カバーの色校が出たときも、色味の異なる2種類を出して、店頭で並べてみて見え方をチェックして決めました。
―― そして、この絵本にも巨大な付録が……。
金井:今回も(読者の方が物足りないといけない……)と不安に駆られて(笑)、切り取ってお部屋にも貼れる長さ1メートル弱の年表が付いています。その裏側は、生きものの体型や大きさがわかるイラストになっています。
―― これは壁に貼っていつも見ることができたら、楽しそうだし、生きもの好きにはたまらないですね。
骨を見ると頭が良くなる…?!
―― 大阪では、なんとこの書籍シリーズをベースにした大規模展示「わけあって絶滅しました。」展(関西テレビ主催/大阪南港ACTホール)が開催中です。
金井:7月に、監修の今泉忠明先生、丸山貴史さんと一緒に伺ってきました。4000平米もの広い会場に、全国からさまざまな標本や化石が一堂に会していて、すごい迫力でした。
会場でつくづく思ったんですが、骨を見ていると、子どもは頭がよくなりますよね~!
―― 骨を見ると頭がよくなる?? とは?
金井:たとえば、ティラノサウルスは肉付きした絵で見ると怪獣ぽく巨大ですけど、骨格を見ると脳みそが入るスペースはこぶし大ぐらいすごく小さくて驚きます。そんなふうに、骨を見て自分でいろいろ推理できるのが楽しいです。会場では、肉付きして動く生きものがVRで見られるので、それを体感できるのも面白いです。
それと、時代別に生きものが並べてあるので、お子さんによってどの時代に興味があるのか、すぐにわかります。どの時代や生きものにいちばん興味があるのかがわかったら、さらにその専門ミュージアムに行くこともできますから、お子さんの興味や相性を探すのに最適の展示だなと思いました。今泉先生や丸山さんも会場にある骨格標本に夢中で、写メを撮りまくってました(笑)。
最新作は、フルカラーで300ページ超の絵本
―― 金井さんが次に出す準備を進めているのも、絵本だと聞きました。書籍タイトルは最初に固める金井さんのことなので、もう決まってますか?
金井:はい!『犬のかわいいところ大全 小さい柴犬こつぶの2000日観察記録』です。イラストレーターのキリさんが飼い犬のこつぶとの二人暮らしをマンガにしたcakesの連載『豆しば こつぶ』の書籍化です。
―― 以前から、その連載『豆しば こつぶ』を読んでいたんですか?
金井:そうなんです。読者としてファンで、ずっと読んでいました。
あるとき、キリさんがTwitterで「書籍化してくれる出版社を探している」と投稿されていたのを見て、即座に「ぜひやらせてほしい!」という長文メールを送ったんです。僅差で一番に連絡をとることができたみたいで、ご一緒いただけることになりました。
―― 完成は来年でしょうか?
金井:来年……はい……来期、かな……頑張ります(笑)。
300ページ超、フルカラーの「鈍器本」(注:ダイヤモンド社の別の書籍『独学大全』は、全788ページ、厚み5センチ超と、その厚みと重みから「鈍器本」と呼ばれています)です。
―― おお、それはかなりのボリュームですね。原作の連載からすると、コミックエッセイになるんでしょうか?
金井:いえ、児童書です。
―― え! 300ページの?! 児童書?
金井:豆しばのこつぶが2歳から6歳になるまで、キリさんが24時間一緒に過ごして、あらゆる角度から見つめ続けている視線がすごく面白い。それを余すところなく伝えるために、300ページ超の分量が必要になりました。
キリさんは、もはやペットとしてこつぶを可愛がっているのではなくて、一人格と認めて、こつぶが幸せを追求できているかという目で観察している。そういう「キリさん×こつぶ」の関係性や気持ちは、人間とペットに限らず、きっと多くの方が感じたことのある普遍的なものではないかと思っています。
――キリさん×こつぶのどんな物語が展開されるのか、すごく楽しみです。現状を伺う限り「coming soon!」とはいえなさそうですが(笑)、かわいいこつぶと会えるのを待ってます!
【今回の話題書】
わけあって絶滅したけど、すごいんです。
サトウマサノリ 著/今泉忠明 監修/丸山貴史 監修
【関連書籍のご案内】
気になるだろう? なぜ、ほろんだのか…!
地球に生まれてきた以上、絶滅からは逃げられない。
絶滅したり、栄えたり。いろいろあるよね、生きてると。
こんな楽しい「図鑑」、今までなかったー!!
◎絶滅生物が、みずから「絶滅理由」を語る! シリーズ第1作!
『わけあって絶滅しました。世界一おもしろい絶滅したいきもの図鑑』
(今泉忠明・監修/丸山貴史・著
サトウマサノリ・ウエタケヨーコ・イラスト)
◎絶滅生物にくわえて、「わけあって繁栄した」動物たちも登場!
『続 わけあって絶滅しました。世界一おもしろい絶滅したいきもの図鑑』(今泉忠明・監修/丸山貴史・著
サトウマサノリ、ウエタケヨーコ、北澤平祐・イラスト)
◎地球誕生以来、生物の99.9%は絶滅していった…その絶滅原因を紹介!「絶滅全史」の付録付き。
『も~っとわけあって絶滅しました。世界一おもしろい絶滅したいきもの図鑑』
(今泉忠明・監修/丸山貴史・著
サトウマサノリ、ウエタケヨーコ、いわさきみずき・イラスト)
◎絶滅したどうぶつたちが、自分たちの「すごい」を語る、シリーズ最新作!
100万年の進化の歴史がざっくり学べて、読み聞かせに最適な絵本が登場! 2022年7月20日発売!
『わけあって絶滅したけど、すごいんです。世界一たのしい進化の歴史』(サトウマサノリ・著/今泉忠明、丸山貴史・監修)
★★★書籍編集者、募集中!★★★
ダイヤモンド社では、金井弓子さんのような児童書の編集者も絶賛募集中です!
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日々の金井さんの仕事ぶりは、こちらで詳しくご覧いただけます。
※この記事は、ダイヤモンド書籍オンライン(2022年8月18日)にて公開された記事の転載です。