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ダイヤモンド社“新人編集者”始動!「さくらももこ展」全国行脚の熱烈ファンが目指す本作りとは?
出版社・ダイヤモンド社の新入社員4人は、4月からnoteで『ひよっこ編集見聞録』を連載してくれていました。そして、この10月についに編集部に配属され、書籍編集者として本格的な一歩を踏み出しています! そのことを記念して、4人のインタビュー記事をお届けします。第1回の森遥香さんに続く第2回は、第一編集部に配属された佐藤里咲さんに来てもらいました。
――編集部への配属おめでとうございます! まずは簡単な自己紹介をお願いできますか。
佐藤里咲です。大学では心理学を専攻していて、主に子ども向けのカウンセリングのゼミに入って勉強をしてました。
好きなことは電車に乗ることで、特に「青春18きっぷ」を使って鈍行電車に乗っていろんなところに行くのが好きです。大学生のときは、地元の宇都宮から大阪や福井まで鈍行列車だけで行ってみたりしていました。いつか鈍行列車だけで日本一周をしてみたいなと思っています。よろしくお願いします。
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――ありがとうございます! では続いて、編集者になりたいと思ったきっかけについて聞かせてください。
大学生のときに、ダイヤモンド社とは別の出版社でずっとアルバイトをさせてもらった経験が大きいです。会社全体で20人ぐらいの出版社で、社員のみなさんがたくさん話しかけてくださったんです。
出版社の仕事の内容とか、なんで出版社で働こうと思ったのかとか、私が質問したら皆さんすごく丁寧に教えてくださって……。出版社で働くっていうことに興味を持ったのは、そのアルバイトの経験がきっかけかなって思っています。
そこから編集者になりたいと思ったきっかけは、横で見ていて自分でもやってみたいと思ったというのが一番大きいです。みなさんが話していたことが一つのアイディアになって、長い時間をかけて本の形にする。大変そうだけど、いろんな読者の人に届くってすごいことですし、やってみたいなって思いました。
――学生時代から出版社の仕事に触れていたんですね。そんな佐藤さんの人生に強い影響を与えたコンテンツってありますか? 書籍に限らずでいいので教えてください。
本当に一番好きなのは、さくらももこさんの作品です。小さい頃からずっと大好きで、日本全国を巡回している「さくらももこ展」を何回も見に行くくらい好きです。
横浜(そごう美術館、2023年4〜5月)と静岡(静岡市美術館、23年6〜8月)、長崎(長崎県美術館、24年1〜3月)にそれぞれ見に行きました。10月5日から都内の六本木(東京・森アーツセンターギャラリー、25年1月5日まで)での開催が始まったので、それも見に行ってきました。
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――全国行脚ですね。すごい! さくらももこさんが好きな人って熱烈なファンが多いように思うんですが、佐藤さんはどういうところが好きなんですか?
登場するキャラクターはかわいくてメルヘンチックなんですけど、話すセリフは見た目と逆でシュールな言葉というところが一番好きなのかなって思っていました。ただ、今回あらためて考えてみたら、別の理由も見えてきました。
さくらももこさんって、他の人が見たら「バカらしい」って思っちゃうようなことでも、自分が「いい」「面白い」と思ったことに対して全力で取り組んでいて、それを発信しているところが好きなんだって感じたんです。
例えば、『さくら日和』というエッセイの中に「おめでとう新福さん」という話があるのですが、いつもお世話になっている集英社の編集者を勝手に褒め称えるパーティーの様子を書きつづっていました。なんとそのパーティーには50万円もかけ、その編集者のことを知らない人も大勢招待したそう。
他にも『焼きそばうえだ』というエッセイがあって、さくらももこさんの知り合いの植田さんという人がインドネシアのバリ島で焼きそば店を開くという話なんですが、これもバカらしさ満載です。植田さんがあまりに運に見放された人生だということで、「バリで焼きそば店の店主になったらマシになるんじゃないか」という、さくらももこさんの勝手な考察で本当にバリで焼きそば店を開いてしまうんです。
文章やマンガが面白くて「さくらももこ作品」が好きっていうのはもちろんなんですけど、そういうバカらしいことも全力でやって、自分が面白いと思うことを追求してるところが好きだなって思います。
――ありがとうございます。「さくらももこ愛」が伝わってきました…! では、少し話を変えて、最近見聞きした中でオススメのコンテンツはありますか?
『ストリートファッション1980-2020』という本です。1980年代からの街角で撮影した若者のファッションスナップと、その人のインタビューがセットになった作りです。
――「定点観測40年の記録」ってサブタイトルに書いてありますね。資料集みたいな本のように感じますが、佐藤さんはこの本をどのように楽しんだんでしょうか?
ファッションスナップの多くが白黒で掲載されているんですが、そこが面白くて、色が分からないせいもあると思うんですが、80年代から90年代前半くらいまでのファッションが、最近のファッションと似ていると感じるんです。ダイヤモンド社のオフィスは原宿の近くにあるのですが、その辺りで見かける人が着ている服とそっくりだなと。逆に2010年代くらいのファッションには古さを感じました。
あと、インタビューのところにはその人の「よく読む雑誌」とか「好きなブランド」、「好きな有名人」のことなんかが載っていて、これを読むだけでも面白いんです。楽しめるポイントがいろいろある本だなと思ってオススメしました。
――なるほど。ファッションに疎い私では一生巡り会えない一冊でした。ご紹介ありがとうございました。では最後に、編集者として歩み出した佐藤さんが、作ってみたい書籍や目標にしたいと思う書籍について教えてください。
児童書やエッセイなどに興味があるんですが、その中で挙げたい一冊は『犬のかわいいところ大全』です。私の直属の上司で、今いろいろと仕事を教わっている金井弓子さんが編集を担当した本です。
この本は、絵本でもコミックエッセイでも図鑑でもありません。全部が融合されている、いいところを集めた他にはない本なんです。素晴らしい本でも、学ぶことが多すぎたり感情を揺さぶられすぎたりすると読んでいて疲れてしまうことがあります。でも、この本はかわいくて面白くて、読むだけで安心できて癒やされる点がすごいんです。
学びが深い本や面白くて感情が揺さぶられる本ももちろん作りたいです。加えて『犬のかわいいところ大全』みたいに、読んでいてタメにもなるのに安心できる本をいつか作りたいなって思っています。
――エッセイにも興味があるということでしたが、エッセイ系の本で同じように目標にしたい本はありますか?
エッセイではなくてビジネス書だとは思うのですが、テレビプロデューサーの佐久間宣行さんの著書『佐久間宣行のずるい仕事術』を就職活動中に読んでいて、こんな本を作ってみたいなと感じました。
佐久間さんがいろんな雑用を頼まれていた若手時代に「サッカー部の女子マネジャーの弁当」を作ってくるように指示されたエピソードが特に印象に残っています。最初は嫌々ながらも、工夫してサッカーボールの形をしたおにぎりを作っていったら、撮影現場で大好評で、佐久間さんも気に入ってもらえるようになって……という話です。
こんな感じで、エッセイ的な内容の中に読者にとって学びがある本を作ることに憧れるし、自分で作ってみたいなと思っています。
――なるほど。佐藤さんが編集した本が世に出て「編集者デビュー」を果たす日を楽しみにしています。今日はありがとうございました!
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