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【なぜ繰り返し悩むのか?】「疲れづらい心」をつくるたった一つの方法
「いつも疲れている」「感情を引きずってしまう」「メンタルが不調だ」……。そんなときに必要なのは、まずは休むこと。しかし、「休んでも疲れが取れない」という声は少なくない。実は、ただ休んでも脳の疲れは取れないのだ。では、本当に脳からリフレッシュするには、どうすればいいのか。イェール大学で学び、日米で30年以上診療してきた精神科医・久賀谷亮氏が書いた『世界のエリートがやっている 最高の休息法』から、「科学的に正しい脳の休め方」を紹介する。(文/上阪徹)
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「脳を休ませる」基本姿勢とは?
アメリカで爆発的に流行してきた「最高の休息法」マインドフルネス瞑想について書き、シリーズ30万部のベストセラーになっている『世界のエリートがやっている 最高の休息法』。
著者はイェール大学医学部精神神経科で学び、アメリカ屈指の精神医療の現場に従事した後に開業、最先端の治療を取り入れた診療を展開してきた久賀谷亮氏。
マインドフルネス瞑想と聞くと、なんともとっつきにくそうに思えるが、本書の大きな特色は、本編が小説仕立てになっていること。イェール大学の研究員であるナツが、ヨーダ似の教授のアドバイスのもと、経営が傾いた叔父のベーグル店の再生を成し遂げるストーリーだ。
10のレクチャーに分かれており、物語を読みながら、それぞれの学びを理解できる仕組みになっている。中でも重要な学びのひとつが、「休息の基本姿勢」。「何もしない」の練習である。まさに、どうすればまずは「脳を休ませる」ことができるか、だ。
ナツは自分の研究にも悩みを抱えていたが、叔父の店をなんとかしないといけない状況に追い込まれていた。しかし、オーナーの姪という日本人女性がいきなりやってきて、店のスタッフは困惑。そんな中でナツは騒ぎを起こしてしまう。
ベッドに横たわって暗闇の中で目をつむると、頭の中で思考の堂々巡りがはじまった。無意味だとわかっているのに、ループから抜け出せない。身体も心もクタクタなはずなのに……。
翌日、実践的なセッションが始まる。教授は、イスに楽に腰掛けるよう言った。背筋は軽く伸ばし、背もたれから離す。コツは「背中はシャッキリ、お腹はゆったり」。手は太ももの上に置く。足は組まないようにして、足の裏を地面にぺたりとつける。目は閉じても開けてもいい。
「うむ、それが基本姿勢じゃ。大事なのが何もしようとしないこと。ただここにあることを自分に許すんじゃ」
しかし、ナツは雑念を捨てきれなかった。そのことは、教授にわかってしまう。
雑念が生まれても「呼吸」を見失わない
ナツは自分の身体の感覚に意識を向けるよう教授に指摘される。それから、呼吸に注意を向けること。だが、ナツは受け入れられず、イライラしてしまう。
「呼吸をコントロールしようとしたり、変えようとする必要はない。いい呼吸も悪い呼吸もない、自然に起きるままにしたらいいんじゃ。とにかく呼吸に細かく注意を向ける。呼吸と呼吸のあいだに、短い切れ目があることには気づいたかな? 1回、1回の呼吸の深さが違うことは? 吸う息と吐く息の温度の違いもあるな? 細かなことに好奇心を持つんじゃ」
マインドフルネス瞑想では、呼吸は重要なキーワードだ。ナツは、呼吸がみな同じではないことに気がつく。普段、何気なくやっていることが、新鮮に感じられた。しかし、それも一瞬のことだった。店のこと、研究のことなどがすぐに頭に浮かんでしまう。
「ほかの考えが浮かんでくるのは自然なことじゃ。浮かんできたら、それに気づくだけでいい。そしてまた呼吸へ注意を戻す。やさしく、ゆっくりとな。呼吸は意識の錨じゃ。風が吹いたり波が荒れようと、錨があればそこから流されん。どんな雑念が心に吹き荒れようとも、呼吸を見失わなければ大丈夫じゃよ」
それでもナツは耐えられなかった。何のためにこんなことをするのか、理解できず、教授に食ってかかる。教授はナツに語った。
「呼吸を意識するのは、いまに注意を向けるためなんじゃ。これをマインドフルネス呼吸法という。ま、呼び名はどうでもいいがな」
しかし、ナツは「どうしていまがそんなに大事なのか」と教授に問う。これこそが、重要な問いだった。
疲れやストレスを生む根本原因とは?
いつもの甲高い笑い声を発してから、教授は答えた。
「それじゃよ、まさに。脳のすべての疲れやストレスは、過去や未来から生まれる。すでに終わったことを気に病んでいたり、これから起きることを不安に思っていたり、とにかく心がいまここにない。この状態が慢性化することで心が疲弊していくんじゃ(中略)」
最も大事なことは、目の前の今。ところが、多くの人が過去や未来のことばかり気に病んでしまうのだ。そうすることで、肝心の今を意識できなくなる。それだけでなく、過去や未来を考えることで大きなストレスを受ける。「過去や未来から来るストレスから解放されることこそがマインドフルネスの目的」だと教授は言う。
「小さな子どもは何かをしている最中に、別のことをくよくよと考えたりはせん。エサを食べながら、昨日のことを後悔したり、明日のことを心配する犬もおらん。マインドフルネスというのは、あたかも初めて触れるかのように世界を捉え直し、いまここを保ち続けている子どもや動物の心を取り戻すことなんじゃよ」
ナツは「言葉では表現できない感覚」を味わった。たしかにいつも自分が気にかけているのは「過ぎ去った私」と「これから来るかもしれない私」のことばかりで、「いまここにいる私」ではなかった。
「言ってみれば、これは心のストレッチじゃ。決まった方向ばかりに間接を曲げていたら、身体が固まってくるじゃろ。(中略)人間の脳も放っておくと、現在以外のことばかりに向かってしまう。ここであえて現在のほうに意識をストレッチしてみる。こうやって疲れづらい心をつくっていくわけじゃな」
「いまここ」から目をそらさないこと。そのためのメソッドのひとつ、「食事瞑想」をナツはベーグル店のスタッフに提案する。お店は少しずつ、変わり始める。
(本記事は『世界のエリートがやっている 最高の休息法』より一部を引用して解説しています)
上阪 徹(うえさか・とおる)
ブックライター
1966年兵庫県生まれ。89年早稲田大学商学部卒。ワールド、リクルート・グループなどを経て、94年よりフリーランスとして独立。書籍や雑誌、webメディアなどで幅広く執筆やインタビューを手がける。これまでの取材人数は3000人を超える。著者に代わって本を書くブックライティングは100冊以上。携わった書籍の累計売上は200万部を超える。著書に『マインド・リセット~不安・不満・不可能をプラスに変える思考習慣』(三笠書房)、『成功者3000人の言葉』(三笠書房<知的生きかた文庫>)、『10倍速く書ける 超スピード文章術』(ダイヤモンド社)ほか多数。またインタビュー集に、累計40万部を突破した『プロ論。』シリーズ(徳間書店)などがある。