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自己啓発本を「読むべき人」「読まなくていい人」決定的な差

『人生の土台となる読書』著者・phaインタビュー

「元・日本一有名なニート」としてテレビやネットで話題となった、pha(ファ)氏。「一般的な生き方のレールから外れて、独自のやり方で生きてこれたのは、本を読むのが好きだったからだ」と語り、約100冊の独特な読書体験をまとめた著書『人生の土台となる読書』を上梓しました。
今回は、本書の発売を記念し、読書の作法について特別インタビューを実施。SNS上で度々議論となる自己啓発本の読み方について、phaさんに聞いてみました。(取材・構成/川代紗生、撮影/疋田千里)

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pha(ファ)
1978年生まれ。大阪府出身。現在、東京都内に在住。京都大学総合人間学部を24歳で卒業し、25歳で就職。できるだけ働きたくなくて社内ニートになるものの、28歳のときにツイッターとプログラミングに出会った衝撃で会社を辞めて上京。以来、毎日ふらふらと暮らしている。シェアハウス「ギークハウス」発起人。新刊『人生の土台となる読書』(ダイヤモンド社)を上梓した。

自己啓発本は
「社会の中で頑張っていくための本」

──最近、SNS上で「自己啓発本ばかり読む人は本当の読書家とは呼べない」というような、「自己啓発本論争」が起きているのをたびたび目にします。phaさんは今回書かれた本の中で多種多様な読書の楽しみ方を提案されていましたが、自己啓発本についてはどうお考えですか?

pha:今回の本は「読書で人生の土台をつくる」をテーマに、僕自身が人生の中で影響を受けている本を紹介しています。一見、実用性がなさそうな小説やノンフィクション、学術書、マンガが中心のラインナップです。

 僕は自己啓発本にはあまり興味がないんですが、それは「読書の目的」の違いだと思うんですよね。

──読書の目的の違い、ですか。

pha:僕は、大きく分けて二つの読書があるな、と思っています。

「社会の中で頑張っていくための読書」と、
「自分が自分のままでいるための読書」

 前者は、「社会の中でどうすればいいか」という実用的なことを教えてくれる読書です。例えば話し方の本とか、メモのとり方の本とか。そういう本は実用的で役に立つとは思います。

──たしかに。自己啓発本はすぐに活用できる解決策をわかりやすく教えてくれますもんね。

pha:でも、そういう本に僕はあまり興味がないんですよね。

 僕は、「こうすればいい」というわかりやすい答えを教えてくれる本より、この世界はわかりやすい答えなんてない複雑なものなんだ、ということを実感させてくれる本が好きなんですよ。「人間はわかりやすい答えに飛びつきたがるけれど、それは危険だ」というのもこの本のテーマの一つです。

 あとまあ自己啓発本は、「読むとやる気が出る」というのもあると思うんですが、僕は「やる気を出したい」「仕事をがんばりたい」ということをあまり思わないので、読まないんですよね(笑)。

「成功する」「結果を出す」だけが読書の目的ではない

──では、phaさん自身は、後者の「自分が自分のままでいるための読書」をすることが多い、ということでしょうか。

pha:そうですね。今回書いた『人生の土台となる読書』も、「自分が自分のままでいるために本を読む」が大きなテーマでした。

 僕は「本を読んでなかったらもっと違う人生を歩んでいただろう」と思うけど、それは「読書によって自分自身が大きく変わった」という意味ではないんですね。むしろ、本を読むことによって、自分が自分のままでいることができた、社会によって変えられてしまうのを防ぐことができた、と思っている。

 周りに自分のことを理解してくれる人がいなかったとき、心の支えになるのは本だけだった。「周りに左右されず、自分は自分のままでいい」と肯定してくれて、自信を持たせてくれた。それが僕にとっての「本」であり、「読書」でした。

──言われてみれば、「読書」をそうやって分類したことはなかったかもしれません。

pha:本を読む目的は人によってそれぞれだけど、そのときどきによって「社会で頑張るための読書」と「社会に左右されないための読書」、両方の読書を使い分けられたらいいんじゃないでしょうか。

本は、いつだって「孤独な人間」の味方

pha:実用書で自分自身を根本的に変える、というのはなかなか難しいと思うんです。たとえばさっきの例で言うと、会話が苦手な人が会話術の本を読んで、翌日のプレゼンをなんとか乗り切るとか、話すのがちょっと得意になるとか、それくらいはできるかもしれない。けれど、もともと会話が得意な人にはどうしても敵わないですよね。

──たしかに。

pha:読み終わったあと、即効果を得られるような「すぐに効く読書」というのは、今の状況をちょっとだけ改善するのには有効だけど、大きく人生を変えるのには向いていないんですよ。自己啓発書を読んで世界のことや自分のことをわかった気になっても、その理解は浅い。本当の世界は、「こうすればいい」と簡単に言いきれるものじゃない。

 根本的に生き方を変えるには、「ゆっくり効く読書」が必要です。一見役に立つようには見えなくても、読むことで何かが自分の中に一滴ずつ溜まっていって、少しずつ、だけど根本的に、人生を変えていく。そういう読書を僕は紹介したいな、と思っています。

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──phaさんはベストセラーとなった『しないことリスト』などでも、仕事と家庭を両立して、家を買って……というような、一般的な生き方のレールからは外れた独自のライフスタイルを提案されてきましたよね。人と違う生き方をするのにはどうしても不安が付き纏うものですが、読書を通してどのように人生の土台を作ってきたのでしょう。

pha:そうですね、僕は子どもの頃からずっと、社会にあまり興味が持てなかったんですよね。

 人と仲良くしたり、社会に適応したりするよりも、一人で読書をしている方が楽しいというタイプでした。大学を卒業して就職してからも、ずっと「早く仕事を辞めたい……」と思っていました。

 僕はそんな「社会に合わせたくない自分」というのを肯定してくれるような読書ばかりしてきたな、と思います。本の中には自分よりすごいダメ人間がたくさんいたので、「ああ、こんなふうに生きてもいいんだ」と思って、自分の生き方に少し自信を持つことができました。

──すごい。目から鱗です。つい周りと違うことに不安になって、社会に馴染むためにどうすればいいか、社会で評価されるためにどうすればいいかと考えてしまいがちですが……。「社会とズレていても自分は大丈夫」と自信を持つために本を読む。それがphaさんの読み方なんですね。

pha:幼い頃から持っている基本的な性質って、大人になってもあまり変わらないと思うんですよ。生まれつき社交的じゃない人は大人になっても根本的なところは変わらない。「頑張って社会に合わせなくちゃ」と思うのも大事だけど、そんなふうに社会に自分を合わせることばかりやっていると、不安になるし、疲れてしまう。

 でも、本の中には、自分と同じように「社会に適応できない人」がたくさんいる。会ったことも見たこともない人が、なぜか自分の考えているのと同じことを上手に言葉にしてくれていたりする。読書をすれば、自分と同じ孤独を抱えている人たちがどんなふうに生きてきたか、どんなふうに行動してきたかがわかる。

 そうやって本を読むことで、自分はこの世界の中でどんなふうに生きていけばいいか、ということが少しずつ見えてくる。そうやって読書によって世界と自分を把握していくことが、他人に何を言われても揺るがない「人生の土台」を作ってくれると思うんです。

 この社会で生き抜くためには、頑張って周りに合わせなきゃならないときもあると思います。そういうときには、「すぐに効く読書」をすればいいと思います。

 ただその一方で、「自分が自分のままでいるための読書」もあるんだよ、ということも知っておいてほしい。そんな気持ちで、今回の本を書きました。社会に閉塞感を覚え、不安や息苦しさを感じている人に届いたらいいなと思います。

著者からのメッセージ

 読書には、2つの種類がある。「すぐに効く読書」「ゆっくり効く読書」だ。

 一見、すぐに効くほうがよさそうに思うけど、そうとは限らない。時間はかかってしまうけど、遅れてじわじわと、しかし確実に大きく人生を変えてくれる。

 そんな読書の仕方を紹介しようと思う。

「すぐに効く読書」は、仕事術やライフハックなどの実用書だ。そういう本を読んだあとは、「前向きに頑張ってみよう」という気持ちになる。しかし、効果が薄れていくのも速い。一瞬だけ元気になる栄養ドリンクみたいなものだ。

「ゆっくり効く読書」の例は、一見実用性がなさそうな、小説やノンフィクションや学術書などだ。「ゆっくり効く読書」は、その枠組み自体を揺さぶって変えてくれる。

・今までに見たこともないような新しい世界を教えてくれる読書
・読む前と読んだあとで、価値観がガラッと変わってしまうような読書
・人生の選択肢を増やして、今の状況からの脱出口を作ってくれる読書

 本書で紹介しているのはそういった読書だ。

「ゆっくり効く読書」は、すぐに効果は表れないけれど、読むことで自分の中に何かが一滴ずつ溜まっていって、少しずつ自分の人生を変えていく。

 今の時代は、単に何かを知っているだけではすぐに時代遅れになってしまう。単に知識を詰め込むだけじゃなく、根本的に物事を考えるための価値観や枠組みを持つことが必要だ。

 そして、新しい価値観や枠組みを手に入れるためには、「すぐに効く読書」ではなく「ゆっくり効く読書」が必要なのだ。

『人生の土台となる読書』CONTENTS

序章 読書で「人生の土台」をつくる
1章 読書で「ロールモデル」を見つける
2章 読書で「世界を動かすルール」を知る
3章 読書で「日常の暮らし」をひっくり返す
4章 読書で「自分のこと」を誰よりも知る

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【取り上げられた本】
人生の土台となる読書
 pha 著

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<内容紹介>

☆テレビやネット、ベストセラー『しないことリスト』などで大人気のpha氏。 ★「一般的な生き方のレールから外れて、独自のやり方で生きてこれたのは、本を読むのが好きだったからだーー」 ☆本書では、人生を支える「土台」になるような本の読み方を、30個のエピソードと100冊の本と共に紹介する。

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