「圧倒的に読まれる文章」の共通点
ジョン・ケープルズ『ザ・コピーライティング』を読む
「読まれて」「効果が出る」のに必要なこと
1932年にアメリカで原書初版が刊行されて以来、90年以上も読み継がれ、2008年刊行の改訂新版も26刷12万部とロングセラーとなっている『ザ・コピーライティング』。
著者のジョン・ケープルズはアメリカの広告業界で58年間も活躍し続けたコピーライターであり、テストを繰り返し、効果を検証する「科学的広告」の促進を常に目指し続けた人物。それだけに、徹底して貫かれている思想が、広告の効果を高めていく、ということだ。
本書に書かれているのは、単に効果の出る広告の考え方や広告コピーの作り方だけではない。コピーの効果をさらに高めるための取り組みが数多く紹介されているのだ。例えば、第15章「どんなレイアウトとビジュアルが1番注目されるか」。
広告で最悪なのは気づいてもらえないこと、と昔から言われている。広告に気づいてもらえるようにするのは、デザイナーやアートディレクターの仕事だ。
しかし広告デザイナーの多くが、まだこうした考え方の前段階にいる、とケープルズは警鐘を鳴らす。
この前提を踏まえたうえで、書体の効果的な使い方や見出しの中の重要な言葉を目立たせる方法、さらには注目を集めるビジュアル、売りにつながるビジュアル、なぜ写真は効果的なのか、広告に人の顔を入れる理由などが、さまざまな実例をもとに解説されていく。
効果の出る広告はコピーだけで成立しているのではない。デザインも極めて重要になるということだ。
「地味な商品」で売上を上げる方法
なかには、広告効果を高めていくことが簡単ではないと思える商品やサービスもある。そんな広告についても、ケープルズは真正面から向き合う。
実際に統計サービス、除菌剤、のど飴、ペーパータオル、ハンドローション、セロハンラップ、地下納体堂、飲料、ミシンの広告実例が紹介されている。例えばペーパータオルの広告は、こんなふうに料理されている。
また、予算などもあって大きな広告スペースを取れないケースも少なくない。しかし、小スペース広告でも利益を上げる方法はあると説く。「小スペース広告の10の制約」と「小スペース広告10のメリット」を並べ、小スペース広告で利益を上げるヒントを見出しやビジュアルの例を挙げながら解説している。
こうすればもっと問合せが増える32の方法
効果を高めるための取り組みは、コピーそのものにも向けられる。第11章は「コピーの売込み効果を高める20の方法」。
「現在形で相手を中心にして書く」「小見出しをうまく使う」「ビジュアルの下にキャプションを入れる」「わかりやすい表現を使う」「簡単な言葉を選ぶ」など、ベテランコピーライターならではの貴重なアドバイスが、さまざまな広告実例とともに示されているが、なんとも絶妙な指摘にあふれているのだ。例えば、「情報を無料提供する」を紹介しよう。
第13章では「こうすればもっと問合せが増える32の方法」が展開される。広告を出したなら、必要なのはリアクションだ。それを増やすための取り組みである。
「オファーを見出しに入れる」「無料という言葉を強調する」「オファーを小見出しに入れる」「パンフレットやサンプルを写真で見せる」などがある。こちらもまた、広告の作り手を意識した鋭いアドバイスが続く。例えば、「オファーをコピーの冒頭で説明する」。
そして何より効果を高めるために必要と説くのが、テストである。宣伝効果テストを行い、最も効果的なコピーを使うのだ。最終章では「広告をテストする17の方法」が展開される。
章タイトルを見てもらっただけでも、おわかりいただけるかもしれない。すでに広告の仕事、あるいはモノやサービスの販売に関わる仕事をしている人には、読めば明日から仕事が変わる、と言っても過言ではない内容なのだ。しかも、効果を伴って、である。
(本記事は『ザ・コピーライティング 心の琴線にふれる言葉の法則』より一部を引用して解説しています)