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ダイヤモンド社“新人編集者”始動!「朝ドラ&参考書マニア」は今からどんな本を作る?

出版社・ダイヤモンド社の新入社員4人は、4月からnoteで『ひよっこ編集見聞録』を連載してくれていました。そして、この10月についに編集部に配属され、書籍編集者として本格的な一歩を踏み出しています! そのことを記念して、4人のインタビュー記事をお届けします。その第1回は、第二編集部に配属された森遥香さんが登場です。


――編集部への配属おめでとうございます! 最初に簡単な自己紹介と、編集者になりたいと思ったきっかけについて教えてもらえないでしょうか。

 今年の4月にダイヤモンド社に入社した森遥香です。奈良県出身で、今年の3月まで関西に住んでいました。英語などの外国語が好きなので、大学では外国語学部に入って、国際色豊かな学生生活を送っていました。

 編集者になりたいと思った大きなきっかけの一つは、アメリカ留学での経験です。就職活動の時期に7カ月ほど留学していたのですが、アメリカの学生は大学で学んだことを直接的に生かして就職していました。経済学部だったら金融系の職業に就いて、といった感じで、大学の専攻を選ぶ段階でもう就職を強く意識していたんです。

 でも私は「外国語が好きだから外国語学部に入った」ってだけで、その先のことまで考えていなくて……。留学先では「Linguistics(言語学)」を専攻していたのですが、現地の学生と話すたびに「何で就職先が少ないLinguisticsを選んだの?」って聞かれて、「好きやから」という理由が一切通用しないんだと痛感しました。

 ただ、そのときに「言葉が好き」ってことは小学校の頃から変わっていないなと気付いたんです。それで言葉に触れる仕事に就きたいという思いが強くなって、編集者になりたいと考えるようになりました。

「言葉が好き」な森さんは、「知人の名言」を書きためているそうです。
その中からお気に入りの一つを紹介してくれました。
「『満員電車は嫌』っていう人もいるけど、私は生きてるって実感する」

――結果的に、就職と大学での専攻がつながったんですね。

 そうですね。あと、編集者になりたいと思った直接的なきっかけではないんですが、私「参考書マニア」やったんです(笑)。「勉強は自分の力でやってやる」なんて思っちゃう斜に構えた生徒だったので、書店に行くと参考書コーナーの棚を見漁っていました。

「どういう力を身に付けたら私は志望校の高校・大学に行けるんやろう」って考えて、一番効率よく勉強できる参考書を選ぶのにめっちゃ試行錯誤して、参考書棚の一画だけはプロみたいに詳しくなっていました。それで結局、高校も大学も第一志望校に行くことができたんです。

 参考書だけじゃなくて、自分が目指す人生のステージに連れて行ってくれたのが本でした。本には人生のステージを上げてくれる力があると感じていました。そのことが編集者を目指した根底にあるかもしれません。

――「第一志望校に合格できる参考書マニア」って塾講師を仕事に選んでも成功していそうですね…! 他にも森さんの人生に強い影響を与えたコンテンツってありますか? 書籍に限らずでいいので教えてください。

 実は私、「朝ドラマニア」でもあるんです(笑)。小学生のときは、奈良からNHK大阪放送局まで1時間以上かけて通い詰めて、ドラマの撮影を見学していました。ファン感謝祭に参加するくらい大ファンです!

 幼少期に見た中でのベストは、尾野真千子さんが主演した「カーネーション」(NHK連続テレビ小説85作目、2011年10月〜12年3月放送)です。世界で活躍するデザイナー、コシノ三姉妹を育てた肝っ玉母ちゃんの小篠綾子さんをモデルにした物語です。着物の時代に洋服に目覚めた人。商売人としての利益感覚を磨きながら、自分のやりたい道に向かって愚直に突き進む姿がめっちゃかっこいいなと思いました。

「カーネーション」を見て、幼いながら「自分のやりたいことをやって生きていきたい」と行動の軸が定まったような気がします。今、ちょうどNHK BSで再放送しているので、みなさんもぜひ見てみてください!

「カーネーション」の再放送を見て、また号泣しているそうです。

――参考書だけじゃなく朝ドラもマニアなんですか(笑)。少し前に「虎に翼」(NHK連続テレビ小説110作目、24年4〜9月放送)が最終回を迎えましたよね。

「虎に翼」は、「カーネーション」と同じくらい傑作でした! 脚本家の吉田恵里香さんは、多くの人が密かに思っていることを言語化する力を持っていると感じました。

「虎に翼」で伊藤沙莉さんが演じた主人公・佐田寅子(さだ・ともこ)のモデルは、三淵嘉子さんという日本初の女性弁護士の一人で、裁判官としても活躍した人物。「女性」ということで特別扱いされてきた時代を生きた人でした。

 最終回で、寅子の上司役だった桂場等一郎(松山ケンイチさん)が、「君のようなご婦人が特別だった時代はもう終わったんだな」と語るシーンがあります。それに対して寅子は、「はて? いつだって私のような女はごまんといますよ。ただ時代がそれを許さず、特別にしただけです」って答えるんです。

 この「時代が特別にしていた」という言葉に「重みがあるな」と思いました。1人になるといろいろ考え込んじゃうタイプなんですが、「その時代が特別にしていたことって他にもいろいろあるよな」って、考えを巡らせてしまいました。

 ……まずい。このままだと朝ドラの話ばっかりになっちゃいますね。

――朝ドラマニアということはよく分かったので、別の話題に移りましょうか! 他にはどんなコンテンツの影響を受けましたか?

 音楽でいうとテイラー・スウィフトですね。アルバムごとのコンセプトの作り方が天才的なんです。カントリーソングでデビューした後、「ポップス→インディ・フォーク→オルタナティブ・スタイル(ロックの一種)」と、さまざまなジャンルを開拓しています。それによって昔のファンを惹きつけながら、新しいファンもどんどん取り込んでいく。その探究心がすごく好きです。

 あと、歌詞も素敵なんです。等身大のありのままの感情をつづった歌詞で、聞き手のライフステージに合わせて、刺さる曲が異なるのも魅力です。

 ちなみに、テイラー・スウィフトの歌詞には英文学も取り入れられています。例えば「Reputation」というアルバムでは、アメリカの小説家、スコット・フィッツジェラルドの代表作『グレート・ギャツビー』の豪華絢爛だけどどこか孤独を感じる世界観がそのまま曲に反映されています。好きになればなるほど沼にハマるアーティストです。

 今年の2月に東京ドームで4日間、テイラー・スウィフトのライブがあったんですが、そのうちの3日間通い詰めて、チケット代に10万円以上つぎ込んじゃいました。

――3日で10万円! それはのめり込みっぷりがすごいですね…! では、「書籍」で影響を受けたものってありますか?

 まずは『「育ちがいい人」だけが知っていること』ですね。「お上品になりたい欲求」が出てきた大学時代に読んで、強い影響を受けました。

 これについてはnoteで記事を書いたので、詳しくはぜひそちらをご覧ください。

>>森さんのnote記事『まだ後ろ向いてクツ脱いでんの?「育ちがいい人」に憧れた女子大生が上品さを手にした日』を読む

 他には、高野秀行さんが書いた『幻獣ムベンベを追え』も影響を受けた一冊です。大学の生協でちょこんと面陳で置かれていたのをたまたま目にして、買いました。

 コンゴに生息しているといわれる幻の獣「ムベンベ」を発見しようと、高野さんたち早稲田大学探検部の一行が挑むというノンフィクションです。コンゴの現地の言葉も分からないのに、企業から出資を募ってスポンサーになってもらったりして、チームを組んで出発するんです。

 その行動力や目標に向かって突き進んでいく感じとか、文字に詰め込まれている情熱がひしひしと伝わってきます。コロナ禍でどこにも行けない中で読んだので、この本は私を別の世界に連れて行ってくれました。

 私はずっとノンフィクションとかドキュメンタリーが好きで、マンガやアニメをあまり見てこなかったのですが、この本を読んで、私が知らない現実世界の物語にこそファンタジーが詰まっていると感じました。ノンフィクションこそ心躍ります!

ノンフィクションへの熱い思いを語ってくれました。

――「現実世界にファンタジーが詰まっている」ってすごい視点ですね。では最後に、編集者として歩み出した森さんが、作ってみたい書籍や目標にしたいと思う書籍について教えてください。

「作ってみたい本」は大きく3テーマあって、「語学」「旅」「起業家」に関する本です。この三つは、私が好きな「知らない世界を見せてくれる」という点で共通しています。

 語学系だと、自社本ですが、『会話もメールも 英語は3語で伝わります』が好きです。アメリカへの留学前、留学中に読んでいました。解説がしっかりしているし、載っている例文は簡潔ですぐに覚えられることが特徴です。しかも、実際にアメリカでネイティブがよく使うフレーズが豊富に載っているんです。内心、「本に載ってた表現や!」と興奮しながら会話していました。

 この本のように、実生活に役立つ道筋がハッキリしている本を作ってみたいです。

 それと、「語学」と「旅」が融合したような『語学の天才まで1億光年』という本も目標にしたいと思いました。さっきご紹介した『幻獣ムベンベを追え』の著者、高野さんの本です。語学本だけど参考書ではなく、高野さんが世界中のいろんな場所でのフィールドワークを通して、いくつもの現地の言葉を身に付けていく体験記でもあります。

 高野さんしか知らない、私が一生知ることのなかったような世界を見せてくれた一冊です。この本が持っているような、読んだときのワクワク感を読者に与えられる本を私も作れたらいいなと思いました。

 最後の「起業家」のテーマだと、サイボウズの創業者の一人で社長を務める青野慶久さんが書いた、『チームのことだけ、考えた。』を目標の本として挙げたいと思います。起業家の考え方を一般読者に広げられる本を作ってみたいんです。テレビ番組の「情熱大陸」とか「ガイアの夜明け」とかがめっちゃ好きで、番組ですごい経営者を見るたびに企画書を書いちゃって……(苦笑)。

 私はまだ社会人になりたてで、会社での働き方というものがどういうものかよく分かっていませんでした。でも、『チームのことだけ、考えた。』を読んで、起業家がゼロからどうやって働きやすい職場を目指すかを真剣に考えている姿に感化されました。

――「語学」「旅」「起業家」の3テーマですね。森さんが編集した書籍が書店さんに並ぶ日を楽しみにしています! 今日はありがとうございました。