kotoba(ことば)の玉手箱ーお薦めの古典紹介 Vol.3(1)『孫子』ー
皆さん、こんにちは。
連休はいかがお過ごしでしょうか。普段の活動や日常の生活から離れてぼうっとするもよし、この機会にたまっていた本を読む時間にあてている方もいらっしゃるかもしれませんね。いやいや、普段より忙しいという方もいらっしゃるかもしれません。いずれにしても健康第一で過ごせればいいですね。
さて、今回は少し戦争に関連した本を、ということで、紀元前500年~同400年頃の中国、春秋時代などと呼ばれる時代に書かれた『孫氏』(孫武の作と言われます)という兵法書を紹介してみたいと思います。
この本の名前は聞いたことがあるという方もいらっしゃるかと思います。この本は後でご紹介する通り、単に戦争に関する戦術の説明にとどまらず、現代の経営やビジネスにもヒントがあったり、人生そのものへの示唆もあるということで昔から今に至るまで読み継がれている古典の一つだと思います。
孫武とその時代
中国の春秋時代と言われる時代に呉という国がありました。一時、その王様に仕えた軍事戦略家の孫武(紀元前500年頃、生没年不詳)といわれる人物か、その子孫で戦国時代に活躍した孫臏(そんびん)のどちらがこの『孫氏』を書いたかと論争があったようです。ただ、1972年に中国山東省銀雀山というところのお墓から出土した兵書の竹簡によって、孫武作ではないかとされるようになっています。
ところで、中国のこの春秋、戦国時代という時代について簡単に説明をしたいと思います。
中国最古の王朝とされる殷(いん)は紀元前16世紀ごろから紀元前11世紀ごろまで続いた神権政治(神の意思を占う政治)を行っていましたが、その殷王朝を周(しゅう)が滅ぼします。周は封建制という統治体制を打ち立てたので有名ですが、その周も紀元前8世紀ごろから衰退を始めます。
まだ諸侯が王に仕えながらも力を持つようになった時代が紀元前400年ごろまで続くのですが、その時代を「春秋時代」といいます。その後、大半の諸侯が王を名乗り、周王朝が権威を失ってしまった時代、紀元前220年ごろまでの時代を「戦国時代」といいます。
経済も都市や商業の発展がみられ、社会も様々な変化があらわれ始めたようです。戦争も、それまで戦車を中心にしていた貴族の戦いはしだいに歩兵を中心とした総力戦へと変貌したとも言われています。
人々の生活圏や帰属意識も大きく変わり、より大きな地域や国家に属するようになると、「人はいかに生きるべきか」という問いも生まれるようになったと言います。この春秋・戦国時代には、孔子などを筆頭に「諸子百家」とよばれる多くの思想家が登場します。孫武はそういった中の一人として位置づけられます。
それでは次回は『孫氏』の内容面に入っていきたいと思います。