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転職エージェント・人事出身の僕が「対話」にたどり着いた理由

こんにちは、『ダイアローグキャンプ』オーナーのzaneです。

今日はダイアローグキャンプというサービスの裏側にある僕の思いや価値観についてお話できればと思います。ややディープな内容になるかもしれませんが、気持ちが伝わると嬉しいです。

こちらの記事でも書きましたが、ダイアローグキャンプは、僕にとっての「あったらいいな」を形にしたサービスです。

数あるこだわりのなかでも、「対話」というアプローチには強い思い入れを持っています。

なぜ僕が「対話」という手法にたどりついたのか。それは、これまで仕事を通じて人を恣意的に誘導してきた経験があること、そして心のどこかに、その誘導に対する罪悪感のような気持ちがあるからかもしれません。


恣意的に人を動かしていた、転職エージェント時代

僕は24歳のころ、業界最大手の人材会社に入社しました。都内の高層ビルで、人材紹介事業の部署に配属され、転職したい人と企業を繋げるという仕事をしていました。いわゆる転職エージェント、というやつです。

転職をしたい候補者と、人材を採用したい企業を繋げる。

非常にシンプルなビジネスモデルですが、そこには「人をどう誘導させるか?」という緻密な仕組みがあふれていました。

企業側の営業担当は、求人の魅力を最大限に表現します。その企業・求人ならではの魅力を言語化し、その求人を受けてほしい人に向けてメッセージを磨き込みます。魅力を感じた候補者たちは、その求人に応募してくれます。

応募をしてくれた後は、いかにその企業への転職意向を段階的に高めていくかをマネジメントしていきます。最終意思決定はあくまで本人に委ねられていますが、カウンセラーや営業担当が言葉巧みに候補者を誘導していきます。誘導の結果、見事に企業への転職が決まってゆくのです。

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僕自身、最初はその誘導に高揚感がありました。僕が考えた通りに、転職希望者が動いていくのです。

「人の心をどう動かしていくか?」を考えるのは、一種のゲームのような感覚すらありました。

また、社内では「決める」という言葉が日常的に使われていました。

「この人をどこで決める?」
「どこで決めたい?」

今思うと、とても怖いことです。

人の人生の決断において、より多くの情報を持っている人たちが、ものの見事に誘導していき、想定された通りの転職決定がなされていくのです。

こんなことをいうと、転職エージェントを否定しているように思われるかもしれません。ですが、まったくそうではありません。プロフェッショナル意識を持って転職エージェントをやっている人を何人も知っていますし、良き介在を心がけ、高い倫理観と使命感を持っている人も本当にたくさんいます。


疑問を感じ始めた、人事時代

その後、僕は急成長中のITベンチャーに人事責任者として転職しました。そこでは年間50名の採用と組織づくりを任され、より抽象度の高いレベルで人や組織について考える日々が続きました。

どうすれば悩める社員を1on1面談の中でモチベートできるのか。あの優秀な社員が辞めないようにするには、どうマネジメントすべきか。そんな問いが日常の大半を占めていました。

あの頃の僕は、仕事人生でもっとも輝いていたと思います。一緒に働く仲間たち、組織、カルチャー、経営理念、どれもが素晴らしかった。

一方で、組織の論理だけで社員を誘導し続けていくことに対し、人事としてどこか違和感を抱いていました。

果たしてこの誘導は正しいことなのだろうか…と。

自分のあり方に疑問を感じ始めた僕は、独学でコーチングやマインドフルネスを学び、2年の構想期間を経て、『ダイアローグキャンプ』というサービスをリリースするに至りました。


本当の声を引き出すのは「対話」である

僕がここで伝えたいことは、恣意的な誘導ではなく、その人の本音やありたい姿を引き出してあげるコミュニケーションにこそ、価値があるということです。

僕は今、本業で学校法人の経営に携わっているのですが、子どもの教育に関わるほど、この「引き出すこと」の重要性を感じています。

学校の先生たちの仕事は、子どもに「あれしなさい、これしなさい」とTeachするだけではありません。どうすればその子たちの「やりたい」を引き出せるか、どうすれば子どもたちが主体性を持って、自分の意思で決断できるようになるか。それを手助けすることが、先生の仕事です。

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大人にも同じことがいえます。意図する方向に誘導するのではなく、自らの力によって気付くことを支援する。この根幹にあるものが人と人との「対話」であり、本当の声を引き出すことそのものだと思っています。

人は、自らの力で気づきを得られたとき、大きな前進をすると感じています。短期的には誘導されたほうがそのときはラクでしょうが、その人の人生にとってより価値があるのは、自分自身の力で気づきを得られたときであるはずです。


本当に聞こえなくなってしまう、その前に


スラムダンクの著者・井上雄彦さんが描く、障がい者バスケットボールを題材にした『リアル』という漫画には、このような場面があります。

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出典:『リアル』6巻172ページ(井上雄彦)

「公務員になったほうがいい」
「大企業で働いたほうがいい」
「こちらの会社がオススメですよ」
「こういうキャリアを歩むべきです」

こんなことを言われると、そんな気がしてきてしまうものです。そうやって誰かの意図した言葉に惑わされていると、いつしか"本当に聞こえなくなってしまう"といつも自分にも言い聞かせています。 

誘導される人生ではなく、自分自身の人生を生きる人が増えてほしい

『ダイアローグキャンプ』というサービスが、少しでもそういう人たちが増えるきっかけになればと願っています。


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