僕たちはあの日家族になった7
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近所迷惑など無視して
蝉が鳴きはじめた新緑の季節
○○:ウルサイし、熱い〜
それはこの男の苦手な季節だ
先生:○○静かにしろ!
○○:うぃ…
美月:笑
全校生徒が体育館に集められ各部活のインターハイでの活躍を願って激励会が行われていた
颯斗:まだ夏本番じゃないんだから今のうちに身体慣らしとけよ。
○○:無理!
颯斗:お前な……夏は暑くて無理で冬は寒くて無理ってお前日本住めないだろ。笑
美月:本当にそう。
○○の場合それを理由に部活サボろうとするし。
○○:…すみませんご迷惑をお掛けしてます…
だからお詫びに…日本を離れようと思う!
美月颯斗:は!?
壇上では校長が堂々とリーグ戦が8勝1分と好調なサッカー部の自慢話をしていた
颯斗:どう言う事だよ今の。
○○:まぁ、俺も一昨日聞いたばっかでさ…
美月:…卒業前に…海外行くって事?
高校までは一緒にいれると思っていた美月は分かりやすく悲しい顔をした
校長:最後になりますが当校の3年サッカー部の○○君が夏休みを利用してオランダのアヤックスの練習に参加するそうです。
ザワザワ
校長:彼は当校の…
校長はまだ話ししているが話題はもうそこに無かった
○○:そういう訳です。
颯斗:マジかよ!
美月:(夏休みだけで良かった…)
○○:うん。
颯斗:アヤックスとか超名門じゃん!
なんで黙ってたんだよ!!
○○:俺も急に父さんから電話で聞かされたんだ。
美月:○○パパから?
○○:そう、なんかチームのフロントが契約前に直接プレーが見たいって言ってるけど
どうする?って。
美月:……やっぱり○○達って凄いね。
颯斗だってJリーグから話し来てるんだもんね…
颯斗:まぁな。
とは言え○○の場合レベルが違う話し 苦笑
○○:美月?
美月:ん?
○○:美月は美月だからな?笑
美月:……うん。
その言葉は美月にとっての救いだった
颯斗:そういえば夏休み利用してって校長言ってたけどインターハイはもちろん出れるんだろうな?
○○:それはちゃんと父さんが調整してくれたらしい。その代わり出発が早まって終業式は出れないけど。
颯斗:○○パパさすが分かってる!
美月:ちゃんと18年間○○の事ちゃんと見てたんだね。
○○:ここ1年間、連絡寄越すだけの父親だけど 笑
颯斗:もうそんなか…
○○:俺も分かってる…俺を1人にしたくなくて断り続けたツケを回収中だってな。
美月:そんな良いパパがいたから、こんな良い子に育ったんだね 笑
○○:良い"子"って同い年だろ。
美月:○○は私より精神年齢お子ちゃまでちゅからね?笑
○○:そうすると…美月はBBAだな?
美月:ババ…BBAって何よ!
○○:先に言ったのそっちだろ!?
先生:そこイチャイチャしない!
○○:はい…
美月:///
颯斗:2人ともガキだな
その後もうるさいと何度も怒られはしたが無事に激励会も終わり各々がクラスの教室に戻る
柚菜:お兄さん!!
すると体育館を出てすぐの場所で出待ちしていた柚菜に呼び止められた
○○:…どうしたの柚菜ちゃん。
柚菜: おめでとうを言いたくて待ってました!
○○:なんか照れ臭いな…練習参加するだけなのに大騒ぎされると。苦笑
柚菜:シダックスですよね?
○○:シダックス…俺の思ってた話しと違う?
ってかそのカラオケの誘い受けてないんだけど妹達と行くの?
柚菜:??
会話が成立してない2人の背後にいたもう2人がツッコミをいれる
遥香:シダックスじゃなくてアヤックスだよ…柚菜。
翔太:相変わらず馬鹿だな…
柚菜:馬鹿って言うな不登校!!
○○:お!賀喜兄妹!
並んでるの初めて見た 笑
遥香:///
公園での個人練習中に部活に復帰したいと言う相談をされていた○○は、勉強が学生の本文だからまず学校に来てからねと言った。
そうすると次の日から、翔太に来るようになった。
○○:学校慣れたか?
翔太:そうですね…
○○:なんだ…イジメでもされてんのか?
快適そうな雰囲気ではないのを察して
来るように誘った手前、心配していた。
翔太:それはないです 笑
ただ1年もサボってると共同生活ってのにまだ慣れなくて。
○○:そっか。
でも、そこら辺は遥香ちゃんとかウチの妹とかがサポートしてくれてんだろ?
翔太:はい。助かってます。
○○:っかよくよく考えたらさ…1年も学校来なかったのによく進級出来たね。
翔太:それは…まぁ…先輩より頭良いんで。
○○:…ムカつく……もう一回引きこもれ!!
柚菜:そうだそうだ!
翔太:苦笑
翔太の頭の良さに嫉妬するバカ2人
惨めだ…笑
遥香:そういえば先輩オランダ1人で行くんですか?
○○:そうだけど、どうして?
遥香:妹達が連れてけって言ってたので 苦笑
柚菜:言ってた言ってた 笑
○○:まぁ、夏休みだし連れて行きたいのは山々だけどさ、タダじゃないからね。
翔太:旅費はチーム持ちなんですか?
○○:そうだよ。
もちろん遊びじゃないから観光できる時間あるか分からないけどちゃんとそれぞれに合うお土産選んで来るから楽しみにしててね。
3人:ありがとうございます!!
学校と部活を終えて家に帰る
ガチャ
○○:ただいま〜
蓮加:おかえり…ボソ
玄関には蓮加がいたが元気のない感じだった
○○:どうした?
蓮加:お客さんが来てるの。
○○:誰に?
蓮加:○○に。
○○:俺?
不機嫌な蓮加は伝えるだけ伝えて自分の部屋に向かった
そんな蓮加を不思議に思いながらリビングに行くと母さんとさくらの座るイスの向かいに知らない女性が座っていた
さく:あ、お兄ちゃん帰って来た。
○○:ただいま。
○母:おかえりなさい。
ちょっとここ座ってくれる?
そう言われて母さんの座っていた席に座る
○母:私は一通り聞いたから後は本人が話し聞いて。
訳が分からないせいで適当に返事をする
○母:じゃあ私はパパに電話してくるから梅澤さん○○にも分かりやすい説明お願いしますね
美波:分かりました。
母さんは自分の部屋に戻って行き
リビングには3人が残った
美波:○○くんですね?
○○:そうですけど……あなたは?
美波:お父様から何も伺ってませんか?
○○:何も…
さく:パパらしいね 苦笑
美波:それではお母様方からすると最初からの説明になってしまいますが。
まずは自己紹介から。
私、□□エージェントLtdの梅澤美波と言います。
○○:エージェント……代理人って事ですか?
美波:そうです。
○○:…なるほど。
美波:ここからはお父様からの依頼内容と当社の会社説明をさせていただきます。
ヨーロッパを中心にサッカー選手だけでなく様々なスポーツのスーパースターを顧客に抱えているらしく、その中には知ってる選手の名前も多くあった
美波:お父様から○○くんを預ける条件としてチームとの契約関係やヨーロッパにおける生活のサポートをする事、そして……
○○:…質問良いですか?
美波:なんでも、どうぞ。
○○:そんな有名な会社がどうして俺なんかに目を付けたんですか?
美波:…目をつけたのは○○くんが先発出場していたU-16のヨーロッパ遠征の試合です。
○○:……よくあんなの見て誘う気になりましたね。
さく:!?
美波:そうですね。
あの遠征は○○くんにとっては嫌な思い出でしょう。
さく:どういう事ですか?
さくらは気になり過ぎて堪らず声をあげてしまった
美波:話しても宜しいですか?
○○:…どうぞ。
美波:当時、私は上司と共に5大リーグで活躍出来る可能性を秘めたダイヤの原石を探すためある試合を見に行きました。
それが○○くんの出ていた試合です。
さく:それでお兄ちゃんを見つけたって事ですか?
美波:そうです。でもその試合…
○○:俺に一本もパスは来なかった。
さく:…ッ…
美波:後々調べたら○○くんの飛び級での召集にチーム内で反感を持った人が多かったらしく練習でも蚊帳の外、簡単に言えばハブられていたんです。
さく:代表でしょ?
そんな事があっていいの!?
美波:もちろん良くありません。
だから前半25分に○○くんは交代させられました。
さく:なんでお兄ちゃんが!?
○○:サッカーってのは交代枠が決まってる。
その中で変化させるには俺を替えるのが手っ取り早いだろ?
さく:最低…
美波:日本という国は普通が好きでなんです。
その中で本当の天才は必ずマイノリティになる…
○○:…そんな試合を観てなんで俺なんかを…尚更不思議です。
美波:サッカーを楽しんでない天才をあるべき場所に送り出す。
それが我々の会社の使命です。
○○:楽しんでない?
…そんな出会ってすぐの人に分かる訳ないでしょ。もし分かるならストーカーですよ?
美波:それに近いかもしれませんね 苦笑
君のお父さんにプレゼンする為にどれだけ映像や周囲を限界まで調べたので。
例えばさくらちゃんと蓮加ちゃんは○○の事が好きとかね。
さく:そりゃ…兄妹ですから当たり前じゃないですか///
美波:兄妹… 笑
本当にそれだけかしら?
さく:…………
○○:周囲から固める人嫌いです。
美波:冗談よ。苦笑
○○:冗談で済ませれる様な仲になったつもりもないです。
美波:………
○○:帰って来てから不機嫌な妹がもう1人いるんですけど、同じ事話しました?
美波:……はい…
○○:弱みを握って交渉………この話しは無かった事にしましょう。
美波:イヤ…それは…
○○:多分アヤックスの話しも梅澤さん経由だと思うんで、もしその話しが立ち消えになったらまた連絡して下さい。
美波:…待って下さい!
○○:確か…今のルールだとFIFAの公認をもらってる人なら誰でも代理人出来ますよね?
梅澤さんじゃなくても
なのでわざわざ来ていただいたのに申し訳ないのですがお帰りいただいてもよろしいですか?
美波:……分かりました今日は帰ります。
ですが…
○○:妹達に圧力かける様な人に依頼する事は一生ないです。
○○に徹底的に言われた美波は落ち込んだ様子で帰って行った
○○:…偉そうに言い過ぎたな……ボソ
さく:お兄ちゃんごめんなさい…私のせいで…
○○:気にしない気にしない。苦笑
妹を不快な嫌な思いさせるような代理人とは契約できないよ。
さく:でも…
○母:あら…玄関で音がすると思ったら梅澤さん帰っちゃったのね。
○○:ごめんなさい…オレ断っちゃいました…
○母:…そうなの…
○○:父さんにもオレからちゃんと報告します。
○母:その前になにがあったか話してくれる?
○○は今あった事をありのまま伝えた
○○:だから…
○母:…本当にさくらと蓮加を傷つけようとしてそんなこと言ったのかしら…
○○:?
○○は走って美波を追いかけた
車で来たのか電車で来たのかは分からないそれでも追いかけた
すると、公園のブランコに座る影を見つけた
○○:…ハァ……ブランコとかするんですね?
別の事を考えていたのか足音に気づかなかった美波はビクッと肩が上がっていた
美波:ビックリした!!…心臓に悪いですよ 苦笑
○○:…なんかすみません。
美波:いえ私の方こそさっきはなんの配慮もしなくてすみません。
○○:母さんから聞きました。
オレと妹たちが帰って来る前に話してた事。
-------------------
美波:一応ここまでが当契約の概要になってます。
○母:内容は分かりました。
でも、母親として責任は取るつもりですけど決定はやっぱり○○に任せたいわね。
美波:同じことをお父様もおっしゃっていました。
○母:似た者同士だから再婚したのよ。笑
美波:承知しています。
○○くんの本当のお母様は出産の時に亡くなっている事、そして○○くん自体も失顔症を患っているのも。
○母:怖いのね代理人の調査力って 笑
美波:もちろん個人情報の扱いは十分気をつけているので漏洩はさせません。
○母:じゃあ、娘が○○の事を好きな事も知ってるわよね?
美波:…はい。
○母:梅澤さんはどう思う?
血の繋がりはないとは言え兄妹で関係を持つこと。
美波:………私の初恋は兄でした。
血の繋がりがある実の兄です。
○母:………
美波:なのでさくらちゃんと蓮加ちゃんがすごく羨ましいと思ってしまいます。笑
○母:そのお兄さんとその後は?
美波:連絡先すら知りません…
○母:そうなの…いつか普通に会えると良いわね。
美波:はい!
-------------------
○○:オレが早とちりしたみたいで…
本当にごめんなさい!
○○は90度にまげて頭を下げる
美波:頭を上げてください…
私が妹さんたちの気持ちが分からなかっただけですから…
○○:追い出した身で言えた義理ではないのは分かってます。
でも良かったら戻って続き話しませんか?
美波:…良いんですか?
○○:はい。
お願いします!
美波: ……実は私…今年資格取ったばかりの新人なんです。
○○:そうなんですか?
美波:○○くんのアンダーの試合も先輩代理人の見学って形で付いてっただけで、もし今後不満があれば他の人を呼ばせてもらいますけど…
家での美波は自信満々だった
それは先輩代理人から学んだ姿で本当の彼女ではなかったのかもしれない
でも今の弱々しい美波の方が○○に取って信頼に値する人物だと思った
○○:梅澤さんがオレの初めての代理人ですから同じですね。
初めて同士頑張りましょ?笑
美波:はい!
任せて下さい!!
○○:じゃあ家帰ったら妹2人と仲良くしてあげてください。
美波:…嫌われてる可能性ありますけど…
○○: オレもそうだったけど妹達も梅澤さんの事知れば仲良くなれるはずです。
美波:頑張ります…苦笑
そして美波は正式に○○の代理人になった
公園には朝、雑音だと思っていた音が夕方になっても鳴り響いている
でも今はその音も心地よく聞こえる
今後もし同じ音を聞いたら今日の日を思い出すだろう
新たな家族の誕生の日を
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