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落合陽一ゼミ初の展覧会「笑裏蔵刀」。5名のアーティストが作品に込めた思い。|デジタルハリウッド大学


「大学に入学して人とよく話すようになってから、描くものが変わっていったんです。」

4年間の大学生活を振り返ってこう話すのは、2022年3月にデジタルハリウッド大学(DHU)を卒業した藤田 モネさんです。1年次に受講した落合陽一特任教授監修の集中講義「メディアアート」をきっかけに、制作活動に没頭した藤田さん。2019年秋、落合教授が指導を務めるメディアアートゼミの1期生となりました。

2021年度のメンバーはゼミ長の藤田さん、2期生の小村井 万友奈(おむらい まゆな)さん、何様 シランさん、小川 陽大(おがわ はるお)さん、髙橋 篤太郎(たかはし あつたろう)さんの5名。

note班は、2022年2月22日〜3月4日に駿河台キャンパスそばの「Gallery蔵」で開催された、初のゼミ展覧会「笑裏蔵刀」に密着。メディアアートゼミ生の5名に、制作時の話や展覧会で感じたことなどを聞きました。

笑裏蔵刀
笑顔の裏で刀を隠し持っているような、見た目と内心に秘めたものが異なることを意味する。アーティストの奥底にある表現したいものが、作品という形としてあらわれることを「笑裏蔵刀」という四字熟語に重ねた。 このテーマと展覧会タイトルにふさわしい、もともと書籍商の書庫蔵として使われていた「Gallery蔵」で展示。会場のレンタル費や作品制作費などは、クラウドファンディングによって集まった34名のスポンサーの方からの支援があった。

「聖橋から北東を眺める」小村井 万友奈さん

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作品紹介
ギャラリー蔵で展示するにあたり、風景を描きたいなと思って明け方に聖橋を歩きました。柔らかく湿度が高い日の御茶ノ水です。国土交通省 Project PLATEAU データをもとにモデルを配置しています。
Cinema4D, Photoshop, After Effects
2022

小村井さんが制作したのは、御茶ノ水の聖橋(ひじりばし)から見た景色をもとにしたメディアアート。聖橋は神田川をまたぐ美しいアーチが特徴的な橋で、そこから中央線や総武線が走っていくのを眺めることができます。

展覧会場やDHUのキャンパスからほど近い聖橋。小村井さんにとって日常的な風景を、空想的に再現したかったそうです。

もともと別の大学で建築を学んでいた小村井さんは、デジタルコミュニケーションにも関心があったためDHUへ編入。3DCGやVFXを学び、これまで学んできた知識を組み合わせて、今回の作品を完成させました。

小村井さん

今回はリアルな会場での展示だったため、展覧会ならではの魅力や大変なことなど、新たな発見があったといいます。

小村井:設置場所の都合上プロジェクターを床に置かなければならず、プロジェクターに内蔵されているゆがみ補正では対応しきれないくらい、投影された映像がゆがんでしまいました。そのため、ゆがみを考慮した上で急きょ映像を作り直したんです。

ほかにも修正したくなる部分がでてきたので、会期中にブラッシュアップを続けました。一見大変そうな作業に思えるかもしれませんが、デジタルデータなので完成後も作品のアップデートができるのがメディアアートの良さでもあります。

「Sho w(笑)me 期限」何様 シランさん

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作品紹介(一部抜粋)
自分だけじゃなくてあらゆるものの死を想像した時、いつも私はとてつもなく哀しいのですべての瞬間を保存したかった。本展覧会の開催が決まった時、今つくらなきゃと思って細かいことは考えずに冷蔵庫を買った。どうやってつくろうか、どんな仕上がりにしたいか、なんて考えない。ぐちゃぐちゃにして乾かす、埋めて保存する。そこにある面積すべてを瞬間の産物で埋めたら、この作品は生まれる。

何様 シランさんが制作したのは、過去の瞬間を保存するための冷蔵庫。ゲームセンターで獲得した景品、薬を使用した後のゴミ、お金など、シランさんの過去の「瞬間」が保存されています。冷蔵庫の扉を開けると、シランさんの音声が流れる演出も。

シラン:この冷蔵庫はリサイクルショップで購入しました。その中には、私が集めたモノだけでなく、Twitterの私の裏アカウントでつぶやいたことを朗読した音声も流れています。誰にも見られない場所で、たまったものを吐き出したい瞬間があったことも、音声として残しているんです。

裏の出来事をことをあえて表に出す、実験的な試みをしたと話すシランさん。その背景には、「人生をコンテンツにして制作する」というテーマがあるそうです。

保存手段として冷蔵庫を選んだ理由は「冷たい感覚を通じて、保存されていることを体感してほしいから」。見て、聴いて、肌で感じられるものすべてが詰め込まれた作品です。

シランさん作品
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「GPGPU Fractal」小川 陽大さん

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作品紹介
自分で開発したエンジンで作ったデジタルアートです。今回はレイマーチングとポリゴンのハイブリッドレンダリングをやってみました。
C++, OpenGL, GPGPU, Raymarching, Visual Studio2019
2022

小川さんは、学生でありながらIT企業で仕事もしているグラフィックエンジニア。プログラミングを描くことが好きで、その技術を活用し、コーディングのみで作品をつくるアート活動も行っています。

小川:作品の分野としては、プログラミングで表現をする「クリエイティブコーデング」や、アートを生み出すシステム自体をつくる「ジェネラティブアート」などが当てはまります。

もともと、作品を生み出すためのツールの仕組みそのものに興味がありました。現在はPhotoshopやBlenderなどの既存のソフトで創作活動をするのではなく、オリジナルのシステムから開発を進めています。

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▲リモートで作品解説する小川さん

作者の思いが作品に乗せられているアートが多い一方で、小川さんは作品自体にメッセージを込めていないとのこと。あくまで自分にしかできない新しい表現を追求している過程で、出力されたものを展示したのだと語りました。

「偽物本物」髙橋 篤太郎さん

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作品紹介
偽物の死をより本物らしく加工し、本物の死姿を別物まで美しく加工した作品。画面向こうの死と眼前の死との乖離が創作の切っ掛け。
骨格透標本 / トウゴロウイワシ
ホルマリン、トリプシン、グリセリン、エタノール、精製水、アリアザンレッド、アルシアンブルー
骨格標本 / Zbrush, Maya, 3d print
動画 / Zbrush, Maya, AfterEffect, Premier Pro, iPhone13mini
2022

髙橋さんが制作したのは「透明骨格標本」。静岡県南伊豆町で釣り上げた魚を、食品として扱うのではなく、鮮やかに染め上げ作品として昇華しました。

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これまでは3DCGで「死」をテーマに創作活動をしていた高橋さん。標本の制作は今回が初めてだったといいます。デジタルの世界で死と向き合う中、本物の魚の命を使うことによって、より現実的に死と向き合いたかったと話します。

髙橋:身内の死というショックな出来事を機に、死に対して「むごい」「触りたくない」といった、ネガティブなイメージを持ってしまいました。

今までは3DCGで偽物の死を扱ってきて、自分なりに身内の死を受け入れていきましたが、今回は生物学に詳しい友人のサポートもあり、標本という形で本物の死に触れることができました。

命と向き合おう!ということをメッセージにしたかったわけではなく、この作品を通じて「死」について何かしら考えるきっかけになってもらえれば嬉しいです。

「あまねき」藤田 モネさん

モネさん

作品紹介(一部抜粋)
自分の意識と無意識な部分の気づき、デジタルを通した時に起こり得る自然現象や原理また作品を通じた人間の内部共鳴を数百年後にも残していけるのかどうかを試行錯誤してどうあるべきなのかを探求していく意思の上で制作を行った。

ゼミ長の藤田さんは、2022年3月でDHUを卒業し、来年度からはフリーのアーティストとして活動予定。DHUでの最後の展覧会となった「笑裏蔵刀」では、卒業制作作品を含む計38点が展示されました。

38の作品ひとつひとつにタイトルはなく、全体で「あまねき」。広く広く、いろいろな人にこの作品や思いが伝わるように願いを込めたそうです。

藤田:過去に描いたデジタル作品の解像度を落としていき、色しか情報がなくなったものが、壁の下側に展示している小さい作品。それをもとに、自分の想像力のみでアナログの作品としてふたたび描いたのが、上側にある大きな作品です。

デジタルの作品はいつまでも残ると思いがちですが、人に渡す途中で解像度が落ちたり、他の情報に埋もれて存在自体を忘れてしまったりすることはあると思います。でも人間の想像力は忘れないでほしい、忘れたくないという思いから、このような制作過程になりました。

制作中は「作品それ自体が朽ちていく事が先か、人々の想像が朽ちていく事が先であるのか」を考えながら筆を走らせました。

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モネさん作品
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「笑裏蔵刀」は、企画の立ち上げ、クラウドファンディングの実施、展覧会の運営など、ゼミ生を中心としてが進められ、2022年3月4日に会期が無事終了。今回の展覧会を含め、DHUでの4年間を藤田さんは以下のように振り返りました。

藤田:クラウドファンディングや展覧会が成功に終わり、協力していただいた方への感謝の気持ちでいっぱいです。

もともと自分はゲームの背景やコンセプトアートの制作に興味があったのですが、DHUで人と話す機会が増えたことで、自分の作品に人が出てくることが多くなりました。

入学からもう4年がたち、その中でいろいろな人と出会えたことで、私にとって代え難い時間になりました。ここで良かったと改めて思っています。

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▲「笑裏蔵刀」を案内してくれた藤田 モネさん(左)、小村井 万友奈さん(右)

以上、初の展示会に臨んだ5名のインタビューをお届けしました。いずれのゼミ生も落合先生からの指導を受け、自己への洞察を深め、作品づくりに取り組んでいる様子がありありと伝わってきました。来年のゼミ展も楽しみです!

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デジタルハリウッド大学では、メディアアートや映像制作など、デジタル分野の専門スキルを幅広く学ぶことができ、現役で活躍するプロの教員陣があなたを待っています。

大学のカリキュラムや他の在学生・卒業生について詳しく知りたいという方は、下記リンクへどうぞ!

▼デジタルハリウッド大学HP
https://www.dhw.ac.jp

▼在学生紹介
https://www.dhw.ac.jp/life/student/

▼デジタルハリウッド校友会(卒業生インタビュー)
https://dhaa.jp/interview

▼落合陽一ゼミ「笑裏蔵刀」HP
https://www.artdpc.com/






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