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【学園祭レポ】創造性と独創性。DHU学園祭2024は“新しいレトロ”に溢れていた。
“多くの革新があった日本の「レトロ」と呼ばれる時代。行動経済成長期を支えたのは、当時の人々の旺盛な好奇心とチャレンジ精神でした。
一方、私たちが生きる現代社会は情報化社会の成熟期。便利さや効率性を追求するあまり、創造性や独創性が失われつつあります。
その創造性、独創性を掲げ、日々追い求めている私たちDHU生。今回の学園祭では来場される皆様へ、私たちの思う「レトロ」をお届けいたします!”
2024年11月23日~24日に開催されたデジタルハリウッド大学(DHU)の学園祭のテーマは、「レトロ」でした。
デジタルとは真逆にも見えるレトロというテーマには、単なる過去の再現ではなく、特に昭和時代に代表される「革新と挑戦」の精神を受け継ぎ、新たな価値を与えようという壮大なテーマが込められています。
DHU生たちの描くレトロとは?そして、レトロから生まれる創造性と独創性とは?
今回のnoteでは、DHU学園祭2024当日の様子をレポート形式でお伝えします!
実行委員長が語る「レトロ」
会場に足を踏み入れると、テーマ通りの「レトロ」な光景が広がっていました。“ジャポニズム”をテーマとして2024年4月に改装されたばかりのエントランス・ラウンジの正面にはブラウン管テレビ。階段状のしつらえの上には、黒電話やタイプライターなどが置かれ、昭和にタイムスリップしたかのような雰囲気です。
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会場を巡る前に、実行委員長の竹内さん(2年)にお話を聞いてみました。
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——どういう経緯で実行委員長になられたのですか?
2023年度は、キャンパスPRプロジェクトとしてオープンキャンパスの運営に携わったあと、学園祭の実行委員にも参加ました。もともとイベント運営が好きでしたし、1年次に培ったスキルをここで活かせたらと思い、2024年度の実行委員長に立候補しました。
——オープンキャンパス、学園祭とさまざまなイベントを見させてもらっていますが、今年は特に力が入っていますね。
来場する方が最初に目にする場所なので、ここに一番を力を入れたいと思っていたんです。昭和の時代に実際に使われていたものをレンタルして置いたり、描き下ろしのイラストパネルを置いたりしました。
また、キャンパスの狭い廊下を人が行き交う様子が商店街のようだなと感じ、廊下や教室前の表示も木目調にし、商店街らしさを表しました。
実は、蛍光灯にもオレンジのフィルムを張って、光をオレンジにしているんです。毎年装飾には力を入れていますが、光にまで気を配ったのは今年が初めてだと思います。
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——キービジュアルもレトロなタッチで素敵です。
学園祭2024に出展もしている若草フクロウさんに制作いただきました。初稿をご提出いただいたあと、何度かやりとりをして、最終的にテイストがガラッと変わりました。どんなプロセスを経たのかは、ぜひ若草さんに聞いてみてほしいです!
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——今回は出展希望の個人や団体の数が非常に多く、選考を行ったと聞きました。
選考は実行委員全員で行いました。その際に大切にしていたのは、「体験」と「バランス」です。昨年度は作品展示をするブースが多く、来場してくれた方から「遊びに来たものの、何をしていいかわからない…」という声も挙がっていました。
そこで今年度は、お客様を巻き込むような展示、双方向のコミュニケーションが発生する出展者を中心に選考させていただきました。すべての希望者を出展させることができずとても心苦しかったのですが、イベントコンセプトを一貫させるための決断でした。
——実行委員長として心がけていたことは?
学園祭に関わるすべての人が「レトロ」を意識し、自分なりに表現してくれていたからこそ、それがテーマから逸れていないかを常に確認していました。装飾、キービジュアルとの統一感への意識を持ってもらうのに苦労しましたが、最終的にはいいものが出来上がったと思います。
また、実行委員メンバーからの意見を聞いていろいろな判断をする中で、全体を俯瞰して考えるマインドが必要で、その点も大変でした。
——今回の学園祭は成功と言えそうでしょうか?
反省点、改善点はたくさんあります。でも、装飾や全体の運営には満足していますし、来場者も大勢来ていただいているので嬉しいです。note編集部のみなさんも楽しんでいってください!
飲食ブース:制作とは違った大変さ
実行委員長に見送られ、会場に向かったnote編集部。まずは、飲食ブースの集まるカフェテリアからインタビュースタートです。
最初に話を聞いたのは、仲良し3人組で運営される「Me’s」。抹茶をメインに据えたカフェメニューを提供していました。
みゆ、みゆう、みう、と名前が似ていたことがきっかけで仲良くなったという3人。それぞれの頭文字を取り店名を「Me’s」(ミーズ)にしたといいます。
本物の飲食店のようなポスターが目を引きますが、デザインしたのはみゆさん。普段はディレクターやイベント運営を行っていて、デザインは”かじった程度”だと言います。
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グッズ制作は3人で担当。カラーを決め、1人1つずつキャラクターを描きました。アクリルキーホルダーも、ポストカードも、シールも、すべてラボプロト(学内の工房)で制作したそうです。
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「3人体制で飲食と物販を両立するのはかなり大変で、本番まで本当に忙しかった!でも、その分お客さんの声を直接聞けるのが嬉しくて。自分のグッズがたくさん買われているのを見ると、すごく嬉しい気持ちになります」(みゆさん)
続いて、マシュマロとノンアルカクテルを販売するDADSへ。「Digital Hollywood University Advertising Society」という名の通り、普段は広告研究・雑誌制作などを行うサークルですが、学園祭では例年飲食店を出展しています。
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おや、スモア(焼きマシュマロとチョコレートをビスケットで挟んだお菓子)の入ったコップに何か書かれていますね…?
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「これですか?メッセージに特に意味はないです。それぞれが面白いなと思うことを書いていただけで…。」と運営メンバー。そうなんですね…!
普段と違うことをする2日間はいかがですか?と聞くと、思わぬ答えが返ってきました。
「上手くいかないことのほうが多いですね。今も材料が足りなくなって一人買い出しにいってくれているんですが、売れないものはずーっと売れない。ちゃんと見積もって、計画しながら飲食を運営するのって難しいんだなって思います。制作も難しいですが、違った難しさがありますね」。
作品展示:4年間の制作過程が見える
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週4日活動し、年に1回30~40秒ほどのアニメを制作するサークル「AniWay」。「デジタルハリウッドに関連すること」というテーマだけが毎年共通で、ストーリーも、画風も、毎年新しく作られていると言います。
例年の学園祭では制作したアニメーションを流すだけでしたが、今年から制作の過程をパネルにして展示。訪れたOB / OGからも「今までと違うね」と声をかけられたそうです。
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AniWayメンバーの方に意図を伺いました。
「今年は、制作をする中でどんな迷いがあったか、どう試行錯誤したのかという工夫の過程を見せようと考えました。昨日来てくれた2人組のお客さんがたくさん質問をしてくれて、1時間半も話をしました。それだけ興味を持ってくれる人がいただけで、価値ある展示ができたんだと思えました」
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続いて、初出展となったクリエイティブチーム「STUDIO.zip」のブースへ。リーダーでVTuberのカゲPさんが“センスが良く、一緒に創作をしたい!”と思ったメンバーを集め、VTuberやアーティストからの仕事を受けていると言います。
学園祭では、これまでにチームで制作したミュージックビデオ、クリエイティブ、Webサイトなどが展示されていました。
「DHUには、すごく制作が上手くて仕事も受けたいと思っているのに、実際には受けていない人がたくさんいて。もったいないから一緒に作ろうよ!と誘って、いろいろ皆でやっています。仕事は、SNSや公式Webサイトからの問い合わせを通して獲得しています」
直前まで、なかなか展示準備に手を付けられなかったというカゲPさん。販売していたグッズは直前の1週間ほどでIllustratorとラボプロトで制作しました。
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「初めて学園祭に出られて嬉しかったです!このチームだったら、クリエイティブ系でできないことはないと思うくらい、自信のあるチームです。学園祭だけでなく、他のイベントにも積極的に出展したいと思います」(カゲPさん)。
続いて訪れたのは、ド派手なピンクのヒョウ柄に飾られていたこちらのブース。近年、にわかにトレンドとなっているY2K(2000年代の意)に生まれた2002年をテーマに、姫ギャルを令和にリバイバルした展示「2002’s PrincessGAL」です。
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「今回の学園祭のテーマはレトロ。過去を思い出すだけではなく、過去のものを活かして革新を生みだそうというコピーに則って、失われつつある文化である『姫ギャル』の文化に私たちのエッセンスを加えて発信しました」
過去の雑誌やPinterestなどから情報を集め、オリジナルグッズの制作に生かしたという二人。ポスターやグッズ制作は楽しく進められたといいますが、ブースの背景は「本当に大変だった」と語ります。
「こだわりを詰めすぎて、想像以上に時間がかかってしまいました。でも、私たちの実現したかった世界観を表現できて、満足です!」
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コラボレーションの生まれる場
メディア・ライブラリーの前で光を放ちながら回るのは、星野裕之先生率いる「デザイン&プロトタイピングゼミ」の学生の作品です。
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これは一体……?と困惑するnote編集部メンバーに、作者の学生はこう話してくれました。
「このセットリストに書いてある45曲の音楽は、すべて私の母親に『私が死んだらお葬式で流して!』と言われているものです。明るく送り出してほしい、湿っぽくしないでほしいとずっと言われていて、その気持ちを何か形にできないかとずっと思ってきました」
今年の夏にシアスター・ゲイツ展に訪れたという作者。展示全体からは暗い印象を受けたそうですが、最後にミラーボールを大きく飾り明るく送り出す様子に感銘を受け、今回の作品制作につながったのだとか。
「自分のお葬式にもほしい、量産してほしい、なんて声をかけてくれるお客さんもいて、明るく見送ってほしい人は意外と多いのかもなと思いました」
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ゼミの担当教員である星野先生は言います。
「昨日、このセットリストを作った張本人のお母さんもいらっしゃっていたんですよ。たまたま学長が近くを通ったタイミングで『いいプレイリストだ』と言ったら、隣にいたお母さんが『私のセットリストです』と(笑)。言語化し得ない、問答無用の“心惹かれる感”があるのはなぜなんでしょうね」
作者の学生は、普段は映像や脚本を中心に学んでおり、立体制作をしたのは初めてとのこと。しかし、今回の展示を通して、卒業制作も誰かの気持ちを昇華できる立体制作を行いたいと思い始めたそうです。
「一押しの作品があって……」と星野先生に導かれたのは、「人辞任ゲーム」。自動運転などに用いられる物体検出のアルゴリズム、「YOLO」の技術を利用したものです。
「これは、AIに『自分が人間でないこと』を証明するゲームです。枠の中に立っていただき、そこにある仮装道具を使ってなるべく多く人を辞めてください。20秒でいかにたくさん人を辞められるかが勝負です。それではスタート!」。
いきなり始まりました。人辞任。わけがわかりませんが、とにかく用意されたグッズを身に着けて「人辞め」にチャレンジしていきます。
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まずは熊耳。残念、人認定です…。
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かの有名な恐竜の被り物に加え、サングラスをかけてみます。お!無事に人を辞められたようです。サクサクといろんなトライをしてみると……?
「おめでとうございます!7回人を辞められました!」
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「本来は、自動運転で人をはねないために使われている技術をゲームに応用しました。たくさん人を辞めるコツは、人間になるのと人間を辞めるのを繰り返すこと。飛び道具は恐竜とワンちゃんの被り物で、お面だと人だと認識されてしまいがちです。今回は黒い服を着ているので、アウトラインが誤認されて、辞任の回数が多くカウントされたのだと思います」
『はぁって言うゲーム』の考案者でDHU教授の米光一成先生もこのゲームを気に入ったそうで、「近く、我々2名の新作ゲームが出るかもしれません」と笑う星野先生。このような展示を通して、学生と学生だけではなく、教員と学生、教員と教員の新たなコラボレーションが生まれるのも、DHUらしい光景です。
レトロに“DHUらしさ”を織り交ぜてーーメインビジュアルが生まれるまで
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最後に、2024年度のメインビジュアルを担当した若草フクロウさんにお話を伺いました。
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——今回、若草さんがメインビジュアルを担当することになった経緯を教えてください。
今年の学園祭のデザイン担当はコンペで選ばれました。改装されたばかりのエントランス・ラウンジが、どんなテーマだったら映えるかを考えたとき、もっとも合うものが「レトロ」だと思った、と実行委員から聞きました。テーマに作風が合う作家を探すコンペが開催され、その結果、選んでいただいたのが私でした。
——これまでの若草さんの作品は、ご自身の生みだした「街」に登場するオリジナルキャラクターを描くものでした。今回のように、学校イベントのメインビジュアルに起用された経験はありましたか?
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イベントのメインビジュアルを担当するのは初めての経験でした。これまでは二頭身のオリジナルキャラクターをメインで描いていたのですが、少し前から、四~五頭身のキャラクターを描けるようになり、自分らしいテイストはそのままに、新しい画風にチャレンジしてみました。
——初稿から二稿で、デザインが大きく変わったと聞いています。その背景は?
最初は「商店街」というキーワードをプッシュしてもらっていたので、下町のにぎやかさを表現した絵を描きました。ですがその後、「押し出したいのが商店街だったとしても、そのなかにDHUらしさを出したい」と思い直し、二稿として原案を作成しました。
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そのときに浮かんだのが、総合芸術とも言える漫画です。漫画の原稿用紙、コマ割りなどを用いて、コマの中にはガンマイクを持った音声担当やカメラマンを、ビジュアルの中心には漫画家を描き、DHUらしさを表現しました。
いろいろなクリエイターをビジュアルの中に登場させることで、DHUが昭和にタイムスリップしたような姿を描けると考えました。
——ご自身のイラストやデザインが会場中に展開されているのを見て、いかがでしたか?
制作中は、体調や納期との戦いで正直大変なこともありました。ですが、こうして印刷物やグッズに展開できたのを見ると、頑張って作ってよかったなと思います。今回だけではなく、これまで長い時間をかけて作ってきたものが身を結んだので、これまで自主制作を続けてきてよかったなと思います。初めてのコンペも、とても良い経験でした。
*
実行委員会、デザイナー、各ブースのクリエイターたちが一丸となって作り上げた「DHU×レトロ」。熱気溢れる会場を後にする来場者の顔には、たくさんの笑みがあふれていました。
DHU公式noteでは、学園祭などの学生主体のイベントのほか、オープンキャンパスや卒業制作展などのイベントレポートを多数公開しています。過去記事含め、この機会にぜひチェックしてみてください。
以上、「DHU学園祭2024」潜入レポートでした!
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