MV(ミュージックビデオ)制作を通じて撮影・編集・納品までのプロセスを学ぶ。「映像制作演習応用A」ってどんな授業?
YouTubeやNetflixなどの映像配信プラットフォームがユーザーにとって当たり前のものとなった昨今、映像の作り手の需要も高まっています。在学中に実践的な学びを積み重ね、卒業後は即戦力として映像制作に携わってほしい——そんな思いから、デジタルハリウッド大学(DHU)では、授業の中で企業やアーティストの方とタイアップを行い撮影や編集を行う授業もあります。
今回のnoteではPV(プロモーションビデオ)やCM(コマーシャル)を題材にして映像制作を学べる授業「映像制作演習応用A」を紹介します。
担当教員であり、現役の映像プロデューサーである髙野良和先生に、「映像制作演習応用A」で学べる内容や、DHUで学んだ学生がどのような場所で活躍できるのかを聞きました。
【担当教員】
髙野 良和(たかの よしかず)准教授
埼玉県川口市出身&在住。GROUNDRIDDIM/Producer、GROUNDRIDDIM BOX代表。SEGA、namcoにてCGデザイナー、Microsoftでのアシスタントプロデューサーを経て2009年よりGROUNDRIDDIMに参加。HIFANAやYellow Magic Orchestra等のライブVJを担当。2021年、Spikey John監督の藤井風「きらり」Music Video制作にプロデューサーとして参加。
映像制作演習応用Aってどんな授業?
——「映像制作演習応用A」は年度ごとに課題のテーマが異なり、過去にはミュージシャンのライブの撮影や広告映像の制作などを行っていますよね。2021年度はどのような内容になったのでしょうか。
今年度はアーティスト・Keishi TanakaさんのMV(ミュージックビデオ)を制作させていただきました。Keishiさんには以前にも私の授業でライブの撮影をお願いされたことがあり、今回は2回目のタイアップでした。
▲オンラインで学生と顔を合わせたKeishi Tanakaさん
授業の流れとしては、まずはKeishiさんと学生がオンラインで顔合わせをし、楽曲について質疑応答。その後グループに分かれて企画を立案、ロケハン、撮影、編集、最終発表という内容です。
グループは大きくふたつ。演奏シーンを撮影し、それを編集する実写コース。リリックをアニメーションで表現するモーションコース。どちらか一方を選択できます。
学生の皆さんにはディレクターとして撮影や編集を担当するだけでなく、スケジュールを気にかけながら、作品のクオリティも追求してもらいました。
——学生自身が学ぶ内容を選べるんですね。
そうですね。得意な分野で制作してもいいですし、新たな表現方法に挑戦することもできます。ただ今回、課題のコースを分けた理由はそれだけではありません。
新型コロナウィルス感染症拡大の影響により海外から授業を受ける学生もいるため、ロケハンや撮影への参加という障壁によって、受講の機会を奪いたくない。そういうわけで、実地の撮影に参加できない学生でも自宅で作業ができるようにモーションコースも用意してみたんです。
実際に課題のコースの希望を取ってみると、多くの学生が実写コースを選択していました。実際のアーティストを撮影をする貴重な体験をしてみたい、と思った学生が多かったのではないでしょうか。
ただ、大学の教室で対面で授業を行うと同時にライブ配信もしているので、遠方に住んでいる学生でも自宅で気軽に受講できます。
▲2021年度は対面とオンラインの授業を同時に実施。学生によって自由に出席スタイルを選ぶことができた。
都内の音楽スペースでロケハンと撮影を実施
——ロケハン(会場下見)はどのように行われたのでしょうか?
都内の音楽スペースを準備していただきました。事前にKeishiさんから曲に関する説明を受け、下見のために学生たちは一度スタジオに足を運び、撮影当日のイメージを膨らませていました。
▲ロケハンで撮影のイメージを膨らませる
——アーティストのKeishiさんからは、こんなMVにしたいというオーダーはありましたか?
特にありませんでした。社会に染まってない学生の自由な発想に任せてくれたみたいです。撮影の様子を見ていると、きちんと主導権を握って現場を仕切れている学生もいました。
演者であるバンドのメンバーと積極的にコミュニケーションを取っていて、作品のクオリティの責任者として前のめりな学生が多かったですね。
▲MV撮影当日の様子
——皆さん活発にコミュニケーションを取っていることがうかがえます。撮影に関して、ほかに先生が注目していた部分はありますか?
今回の授業では、スケジュールを守ったり、準備を万端にしたり、簡単なようで実は難しい基本的な部分を見ていました。
実地で撮影をするのが初めてという学生が多かったのでテクニックが未熟なところもありますが、技術的な面はこれから回数を重ねる中で上達していくはずです。
一方、集合時間を守る、納期前に提出する、カメラを充電する、メモリーカードを入れ忘れない、といった基本的なことは技術力がなくてもできます。逆に言えば、そういった基本的なところができている人が撮影クルーとして選抜されていく。当たり前にできなくてはいけないところは、細かく突っ込むことにしています。
▲撮影が無事終了。教室へ戻り、編集作業やブラッシュアップ、作品発表を行った。
——今回のKeishiさんのように、授業を通してアーティストの方とタイアップできるのは魅力的ですね。
必ずしも外部の方にご協力いただくわけではなく、架空のクライアントを想定したオリジナルの映像制作や、動くCDジャケットを制作することもあります。今回のようにアーティストさんとのタイミングが合えば、MVの制作を体験できます。
Keishiさんのほかにも、面白そうだからと声をかけてくださるアーティストや企業の方たちはいらっしゃいます。実際の社会と映像制作をリンクさせることで、映像の仕事が面白いと思えるような場がDHUで実現できているのではないかと思っています。
映像制作の楽しさを実感できれば、自ずとスキルも身についてくる
——最後に、髙野先生が授業をする上で大切にしていることを教えてください。
やはり学生には映像制作を楽しんでほしいので、それを体感できる場を提供しつづけたいです。
今はインターネットで検索すればある程度の情報は出てきますよね。そのためスキルを上達させることよりも、制作意欲をどう高めるか、その意欲をぶつけてもいい環境をどう整えるかが大学や教員の役目になっていると感じています。
クリエイターを志す学生は、不安を抱えながら学んでいます。この勉強を続けて、この作品のために没頭して、果たして将来の自分のためになっているのか。私自身もデジタルハリウッドの専門スクールでCGを学んだのですが、当時は同じような不安がありました。
DHUのようなクリエイターを輩出する大学だと、自分より優秀な学生はゴロゴロいます。学生時代、私は今勉強していることで生活できるほど自分なんて優秀じゃないと思っていました。しかし、いざ就職をしてみると自分がニッチな存在だったと気づいたんです。
——たしかに、WordやExcelを使える人は多いかもしれませんが、MayaやAfter Effectsを使える人はそう多くはないですよね。
たとえば、大手企業の場合だと独自の広報部を持っているところがあります。そういう企業が、広告代理店を通さずに自社でPR活動をしているケースも最近は増えてきているんです。
映像制作会社へ入社することにハードルを感じている人は、好きなブランドの広報部で自分のクリエイティビティを発揮するという選択もある。多くの就活生が履歴書やエントリーシートで戦う中、ポートフォリオを武器として自分を雇ってください!とアプローチする。こういった進路の探し方も、今後は増えてくるのではないでしょうか。
つまり、自分よりすごいクリエイターを見つけて不安になる必要はないということです。なぜなら、飛び込む環境によっては希少な人材になり得るから。
だからこそ、まずはみんなで作品をつくることの楽しさを実感して、制作することを続けてほしい。そうすれば自ずとスキルも身についてくるので、これからも映像制作を楽しめる場をDHUで提供していきたいと思っています。
*
今回紹介した「映像制作演習応用A」のほかにも、映像制作に関する授業はたくさんあり、それらに付随したデジタルコミュニケーションについての授業など、DHUでは幅広く受講することが可能です。
「興味がわいた」「もっと詳しい話を聞きたい」という方は、ぜひDHUのオープンキャンパスや説明会にご参加ください!
▼デジタルハリウッド大学公式HP
https://www.dhw.ac.jp
▼OPEN CAMPUS GUIDE
https://www.dhw.ac.jp/p/ocguide
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?