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ワイヤレス充電の仕組み

はじめに

ワイヤレス充電の仕組みについて不思議に思われたことはありませんか?

ワイヤレス充電は、充電器からスマートフォンへ電力を効率的に伝えるために、電磁誘導と電磁共鳴という2つの原理を利用しています。

これらの技術が進化したことで、充電効率が大幅に向上し、今では多くのスマートフォンやデバイスでワイヤレス充電が利用されています。

本記事では、この2つの原理を理解するために、まず基本的な仕組みから解説します。


ワイヤレス充電の2つの基本原理

ワイヤレス充電には、主に「電磁誘導」と「電磁共鳴」の2つの仕組みが使われています。

  • 電磁誘導は、コイルに電流を流すことで磁場を作り出し、その磁場がもう一方のコイルに電流を生み出すというもの。スマートフォンの充電に最も一般的に使われています。

  • 電磁共鳴は、充電器とスマートフォンのコイルが同じ周波数で共鳴することで、エネルギーを効率的に伝える仕組みです。

これらの2つの原理が組み合わさることで、ワイヤレス充電は効率的にエネルギーを伝えられるようになりました。


電磁誘導によるワイヤレス充電の基本的な仕組み

電磁誘導は、最も基本的なワイヤレス充電の仕組みです。

充電器の中には、銅線がぐるぐる巻かれた「コイル」があります。ここに電流を流すと、その周りに磁場が発生します。

スマートフォンにも同様にコイルが内蔵されており、充電器の上に置くと、その磁場がスマートフォンのコイルに電流を生み出し、バッテリーが充電されるのです。

しかし、磁場は効率的に伝わるわけではありません。

ここで登場するのがフェライト素材です。フェライト素材は、磁場を効率よく通す特性があり、コイルの背面に貼ることで磁場を無駄なくスマートフォンに誘導します。

これにより、充電効率が高まり、ワイヤレス充電が実用的になったのです。


電磁共鳴によるワイヤレス充電の仕組み

電磁誘導だけでなく、電磁共鳴もワイヤレス充電の重要な要素です。

これは、充電器のコイルとスマートフォンのコイルが同じ周波数で振動(共鳴)することで、エネルギーを効率的に伝える仕組みです。

例として、ラジオのチューニングを考えてみてください。ラジオは、特定の周波数に合わせることで放送をクリアに受信します。

同じように、充電器とスマートフォンのコイルが同じ周波数で共鳴することで、エネルギーが効率よく伝わります。このため、電磁共鳴を利用することで、多少離れた距離でも充電が可能になります。


磁場が届く距離

  • 電磁誘導の場合、充電効率が高い距離は数ミリから数センチ程度です。この範囲内でなければ、充電がほとんど行われません。

  • 一方で、電磁共鳴を利用することで、数センチから十数センチの範囲までエネルギーを伝えることが可能です。

例えば、Apple MagSafe充電器は、充電効率を最大化するために約1~2センチ以内での接続を想定しています。このような製品例からも、実用的な充電距離が数センチ程度であることがわかります。

この磁場の強さは一般的に0.1~0.2ミリテスラ(mT)程度であり、これは冷蔵庫の磁石(約5~50ミリテスラ)や、地球の自然な磁場(約0.03~0.06ミリテスラ)と比較しても非常に弱いものです。

世界保健機関(WHO)は、100ミリテスラ以下の磁場は健康に影響を与えないとしていますので、MagSafeや一般的なワイヤレス充電器から発生する磁場は、人体への影響を心配する必要はありません。

フェライト素材が充電効率を向上させた理由

フェライト素材が登場する以前、ワイヤレス充電にはエネルギーロス発熱などの課題がありました。

充電器とスマートフォンの間でエネルギーがうまく伝わらず、充電効率が悪かったのです。

フェライト素材は、この問題を解決しました。フェライトは、磁場を通しやすい性質を持っており、充電器側のコイルに貼ることで、磁場をスマートフォンに効率的に誘導します。

この結果、エネルギーの無駄が減り、充電効率や速度が向上しました。


電磁共鳴のメリットと限界

電磁共鳴は、ワイヤレス充電の効率性を高めるために重要な役割を果たします。そのメリットと限界を見てみましょう。

  • メリット: 電磁共鳴を利用することで、充電器とスマートフォンが多少離れていても充電が可能になります。また、磁場のエネルギーを効率よく伝えられるため、充電速度も速くなります。

  • 限界: ただし、充電器とスマートフォンのコイルが同じ周波数で共鳴しなければ、エネルギー伝達は効率的に行えません。共鳴しなければ充電はほとんどされないため、設置位置や距離が重要になります。


まとめ

ワイヤレス充電は、電磁誘導と電磁共鳴の2つの技術が進化したことで、今や日常生活で広く利用されています。

フェライト素材の導入により、充電効率や安全性も向上しました。

将来的には、さらに長距離での充電や、多数のデバイスを同時に効率よく充電できる技術の開発が期待されています。

ワイヤレス充電は、これからも進化を続け、私たちの生活をさらに便利にしていくでしょう。

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