2023年10月27日、日本株式市況
27日の国内債券市場で長期金利は低下(債券価格は上昇)した。指標となる新発10年物国債の利回りは前日比0.005%低い0.870%で推移している。前日の欧米金利の低下を受けて国内債にも買いが優勢だった。だが、日銀が近く長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)を再修正するとの警戒感が根強く、長期金利は0.875%と横ばい圏まで戻す場面もあった。
長期金利は一時0.865%に低下した。26日は7~9月期の米個人消費支出(PCE)物価指数の伸びが4~6月期を下回ったのを受け、米長期金利が低下した。11会合ぶりに欧州中央銀行(ECB)が利上げを見送ったことでドイツなど欧州主要国の国債利回りも下がり、国内金利の低下圧力となった。
もっとも、長期金利の低下幅は限られた。27日発表された10月の東京都区部の消費者物価指数(CPI)で生鮮食品を除く総合の伸び率が市場予想(2.5%上昇)を上回り、日銀の政策正常化を後押しする材料と意識された。長期金利が事実上の上限である1%に近づいていることで、来週30~31日の金融政策決定会合では日銀がYCCを再び見直すとの思惑も根強く、長期債に買いの勢いは乏しかった。
超長期債にも買いが優勢だった。新発20年物国債の利回りは前日比0.005%低い1.660%、新発30年債利回りは同0.010%低い1.840%で推移している。中期債は小動きで、新発2年債利回りは前日と同じ0.085%で取引されている。
日銀が27日実施した5本の国債買い入れオペ(公開市場操作)では、残存期間「5年超10年以下」などで応札額を落札額で割った応札倍率が前回を下回った。ただ、落札された利回りは市場実勢に近く「総じて無難な結果だった」(国内証券の債券ストラテジスト)といい、債券相場を方向付ける材料にはならなかった。
27日の東京株式市場で日経平均株価は反発し、大引けは前日比389円91銭(1.27%)高の3万0991円69銭だった。前日の米株式相場は下落したが、前日の日経平均が668円安と大きく下げていたこともあり、自律反発を狙った海外短期筋による株価指数先物への買いが優勢だった。米長期金利の上昇一服のほか、半導体関連株やアジア株式相場の上昇も追い風となり、終日高い水準で推移した。日経平均の上げ幅は470円を超え、節目の3万1000円を上回る場面があった。
日本時間27日の取引でハイテク株が多い米ナスダック100株価指数の先物が堅調に推移し、東エレクやアドテストなど東京市場の半導体関連株も軒並み高となった。米半導体大手のインテルが米国時間26日の取引終了後に発表した決算内容が好感され、時間外取引で大幅高となったことが連想買いを誘った。
来週は日米で金融政策決定会合が開かれる。結果次第で相場が急変する可能性があるため、結果を見極めたいとの雰囲気は一段の上値を抑えた。日経平均は前引けにかけて一方的に上げ幅を拡大したが、午後は高い水準での一進一退が続いた。3万1000円を下回る水準では国内勢の押し目買い意欲が強いとの見方が聞かれた一方、3万1000円を上回る水準では戻り待ちの売りも出やすかった。
東証プライムの売買代金は概算で3兆5383億円。売買高は13億8026万株だった。東証プライムの値上がり銘柄数は1555と、全体の9割強を占めた。値下がりは92、変わらずは12銘柄だった。
<4587> PD 1103 -174.5
急落。ブリストル・マイヤーズから、P1試験進行中の免疫チェックポイント阻害剤について、P2試験以降の開発を自社で行わないと通知を受けたと発表している。P1試験は11月に終了する予定だが、同社では治験結果を基に今後の開発を再検討する必要が生じる形に。開発中止は安全性の懸念点ではないとされているが、同製品の先行きに対する不透明感などは高まる状況となっている。
<7518> ネットワン 2162 -443
一時ストップ安。前日に業績予想の下方修正を発表している。上半期営業利益は従来予想の85億円から63億円、前年同期比24.3%減に、通期では246億円から165億円、前期比20.0%減にそれぞれ引き下げ。通信事業者市場・パブリック市場・パートナー事業などの上半期受注が低調に推移したことで、下半期中心に売上が下振れとなるもよう。年間配当金も従来計画の86円から74円に引き下げている。
<6262> ペガサス 512 -100
ストップ安。前日に上半期決算を発表、営業利益は1.2億円で前年同期比93.7%減となり、従来予想の3.1億円を大きく下振れた。また、通期予想は従来の13.2億円から一転、2.3億円の赤字に下方修正した。工業用ミシンの需要低下が背景、下期にかけて一段と縫製産業の設備投資は慎重な姿勢が予測されるとしている。中間配当金は従来計画の9円から5円に引き下げ、未定としていた期末配当金は無配としている。
<6305> 日立建機 3923 -187
大幅続落。前日に第2四半期決算を発表。7-9月期営業利益は447億円で前年同期比42.2%増となり、通期予想は従来の1360億円から1560億円に上方修正した。北米売上見通しの引き上げなどが主因とみられる。ただ、通期の市場コンセンサスは1600億円強の水準であり、業績上振れは想定線と捉えられているようだ。135円の為替前提など保守的とみられるが、短期的な出尽くし感が優勢に。
<6723> ルネサス 2053 -53
もみ合い。前日に第3四半期決算を発表、7-9月期のNon-GAAPベースの営業利益は1323億円で、会社計画中央値の1200億円を上回り、ほぼ市場予想線上での着地。一方、10-12月期の見通しは、売上高レンジ中央値で前四半期比5.6%減収、営業利益率30.5%を想定しており、市場予想を下回る水準と。PC・スマホ・白物家電向けの落ち込みを想定し、車載向けも慎重に見ている。ただ、保守的との見方も。
<9697> カプコン 4800 -483
大幅続落。前日に第2四半期の決算を発表、営業利益は98億円で前年同期比0.5%減となり、125億円程度の市場コンセンサスを大きく下振れている。ゲームソフト仕掛品に対する評価減の計上が下振れの主因とみられる。パチスロ機の販売価格などもやや想定を下振れたようだ。通期予想は560億円、前期比10.2%増を据え置いているが、第2四半期決算を受けて、大幅な上振れ期待は後退する形に。
<4062> イビデン 6553 -650
大幅続落。前日に第2四半期決算を発表、7-9月期営業利益は159億円で前年同期比31.8%減となったが、110億円程度の市場予想は大きく上振れ。一方、通期予想は従来の520億円から490億円、前期比32.3%減に下方修正している。市場コンセンサスは560億円水準であり、想定外の下方修正と受けとめられている。サーバー向けやPC向けの回復が緩慢な中で、競争激化も強まる状況とみられる。
<6702> 富士通 18770 +2010
急伸。前日に第2四半期決算を発表、7-9月期営業利益は464億円で前年同期比38.4%減となり、コンセンサス水準は30億円程度上振れた。通期予想は従来の3400億円から3200億円に下方修正した。デバイスソリューションが下振れとなるもよう。ただ、業績下振れは想定線、市場予想は3000億円程度の水準であったため、想定以上の底堅さと受けとめられた。低迷してきた株価はあく抜け感が優勢に。
<4502> 武田薬 4070 -277
大幅続落。前日に第2四半期決算を発表、7-9月期営業損益は493億円の赤字に転じており、通期営業利益予想は従来の3490億円から2250億円に下方修正した。開発中である肛門の病気の治療薬「アロフィセル」と肺がん治療薬「エクスキビティ」がいずれも臨床試験で想定した結果が得られず、減損損失を計上したことが要因に。また、こうした一過性費用を除いたベースでも、利益率の低下傾向などが意識されたようだ。
<7751> キヤノン 3465 -171
大幅続落。前日に第3四半期決算を発表、7-9月期営業利益は826億円で前年同期比1.5%増となり、1000億円程度の市場予想を下回った。前四半期比では減益に転じた。為替前提を円安方向に修正したものの、売上予想を下方修正しており、通期営業利益予想の4000億円は据え置いた。とりわけ、LBPの台数見通し下方修正などをネガティブに捉える動きが先行。今回は自社株買いや増配の発表もなかった。
来週はビッグイベントが目白押しだ。なかでも、日米の金融政策決定会合に視線が集中している。30~31日に日銀金融政策決定会合、31日~11月1日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催される。FOMCに関しては、政策金利は据え置かれる見通しだ。となると、関心が高まるのは日銀金融政策決定会合だ。7月の日銀会合では長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)は修正され、長期金利1%が事実上のメドとされた。
今回の会合では「上限1.25%あるいは1.5%への再修正はあり得るのではないか」(アナリスト)との声も出ている。日本の消費者物価指数(CPI)は3%前後の水準が続き、長期金利も0.87%前後に上昇している。それだけに、上限金利のメドの引き上げは考えられる。更に「より注視すべきは展望レポートで、24年度のCPI見通しが前回の1.9%から2%以上に修正されるかが焦点だ」(同)とも指摘されている。来年度のCPI見通しが2%を超えてくれば、マイナス金利政策の根拠が薄れ、マイナス金利解除への思惑が急浮上する。
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