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研修医のための”一般内科”

割引あり

はじめに

こんにちは😀私はちょびっとブランド病院で働く総合内科医です。
総合内科はとにかくいろんなことを”広く浅く”勉強します。だから私も各科をローテートして、いろんな教科書を読み漁ってきました。でも市販の教科書って、どれも研修医にはちょっと難しすぎる。かといっていかにも研修医向けの教科書には「身体所見が大事!」「チーム医療!」みたいなことしか書いてなくてクソの役にも立たない。
ということで、自分が研修医の時に知りたかった内容をまとめた教科書を自分で作りました。
当院の研修医の先生は、「消化器内科になるつもりだけど、専門以外のことを研修医のうちに勉強しておきたい」と言って総合内科を回ってくれることが多いです。このnoteは、そういう研修医や、専門外の知識を見直したい各科のDr、意識の高い医学生向けに書いています。

研修医の勉強としては、大量の教科書を読み込むよりもついている指導医から口頭で教えられる”耳学問”の方が頭に残りやすく、理解も早いです。そんな”耳学問”を集めたのがこのnote。「ざっくりこんなもん」「普通はこんな感じ」というイメージ、常識を詰め合わせました。エビデンス、出典の記載は省いていますがご了承下さい。

研修医が本当に学ぶべきこと
 研修医が終わって初めてわかるんですが、ケツ持ちの指導医がいる状態で病棟管理ができる初期研修という期間はめちゃくちゃ貴重です。でも短い。循環器内科ローテで「ラシックスっていうのはね〜」というところから始めるのと、「この人のMRはうっ血解除後に経食道エコーで評価してみようか」という話をするのとでは最終到達点が全然違います。初期研修で一番大事なことはcommonな疾患の臨床経過を”経験”すること。でも臨床経験を積むには知識が必要。その臨床経験を積むチャンスを得るための勉強として、このnoteを活用してもらえると嬉しいです。

誰も教えてくれないのに誰でも診られて当然みたいな風潮のある”一般内科”
 肺炎、(単純性)尿路感染、血栓溶解適応のない脳梗塞、軽度の心不全。別の病気で入院した患者の基礎疾患としての糖尿病、高血圧症、脂質異常症。こういった疾患は誰もちゃんと教えてくれないのに、3年目以降になるといきなり”誰でも診られて当たり前”みたいな風潮がある。この辺を研修医のうちにしっかり学べるかどうかは、今後の医者生活を大きく左右すると思っています。

<この記事を読んでほしい人>
・成書を読むほどではないけど最低限の知識をサクッと学びたい研修医1年目。
・自分がヤバくないかチェックしたい研修医2年目。
・専門外領域の最低限の病棟管理はできるようになりたい専攻医。
・難しすぎることは省いてざっくりと医者の考えを知りたい看護師、薬剤師。
・今まで専門科のことばっかりやってきて常識から取り残された退官後の偉い人。
・開業して一般内科を見る羽目になった開業医の先生。

※注意事項
・私は各領域の専門ではありません。ご自身が所属先施設の先生から習ったことを優先してください。ただしその分(専門外に求められる)偏りのない知識量であることを自負しています。
・この記事の根拠は私自身が指導医から習ったこと+論文、ガイドライン+(少ないですが)経験から、私自身が正しい常識だと考えているものになります。たまにとんでもない勘違いがあるかもしれません。もしお気づきの点があれば教えてください。
・この記事は30,000字超えで長いです。目次を活用してください。
・今後も加筆修正予定です。


一般内科医が受け持つ感染症総論

感染症診療の基本

・「とりあえずセフトリ」は正解ではないが間違いではない。
・「とりあえず」で選ぶならこう。肺炎→セフトリアキソン、尿路感染→セフトリアキソン、蜂窩織炎→セファゾリン、胆道系・腹腔内感染→アンピシリン/スルバクタム、院内感染→タゾピぺ、ショックで死にそう→メロぺネム、デバイス感染→バンコマイシン。
・絶対に怒られるし正しいとは言わないが、結局これがベースであるのは事実。
・感染症診療の原則:感染臓器、微生物、抗菌薬+患者背景。
・治療の原則はドレナージ+抗菌薬。ドレナージとは、胆嚢炎なら胆嚢摘出やPTGBD、胆管炎ならERCP。(単純性)尿路感染、肺炎が「誰でも診られて当たり前」なのはつまりドレナージが必要な感染巣がないから。
・一般的な感染症診療の流れは下記。

感染症の診断からの流れ例


【抗菌薬の概要】
・現代の抗菌薬のメインはβラクタム系。

βラクタム系抗菌薬のまとめ。色が変わっているのがEmpiricによく使う薬

・CTRXは腎機能による調節が不要、1日1回投与、髄液移行性もありで使いやすい。しかも″濫用″と言われるほどは広域でもない(まあ広域に分類されるのは事実だけど)。ただし副作用の偽胆石は忘れた頃に遭遇するので忘れずに。
・そこから″SPACE″や嫌気性菌のカバーが必要かどうかでさらに広域にすればいい。嫌気性菌カバーが必要ならABPC/SBTやCMZ、さらに緑膿菌も考えられるならTAZ/PIPC、外したら死ぬならMEPMというイメージ。その他、咽頭炎にはABPC(内服AMPC)、蜂窩織炎にはCEZを最初から使うが、それ以外の抗菌薬はは感受性試験の結果を見て使うものと理解すればOK。
・「Empiricに使う薬」と「感受性結果判明後に使う薬」を分けて理解する。例えば「緑膿菌カバーをするためにEmpiricにCAZを選択する」ということは基本的にない(GPCなどのもっとコモンな起炎菌への効果がいまいちだから)。
・”SPACE”は院内感染で問題になるGNR。Serratia marcescens、Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌)、Acinetobacter、Citrobacter、Enterobacter。特に緑膿菌は耐性が多くて厄介。
・もう一つの厄介な菌が腸球菌(Enterococcus属)。セフェム系が無効なので”普通に”抗菌薬を選択すると外す可能性がある。よく腸球菌感染が問題になるのは感染性心内膜炎、菌血症、腹腔・骨盤内膿瘍、皮膚・軟部組織感染、尿路感染。
・ABPC感受性があるかどうかが問題になる(黄色ブドウ球菌がMSSAかMRSAかを気にするのに近い感覚)。培養から生えた時は感受性が出るまでVCM、感受性結果を見てVCM継続か、ABPCへde-escalation。
・E.faeciumとE.faecalisがありfaeciumの方が耐性が強い。VRE:バンコマイシン耐性腸球菌は最悪なので院内の感染症部門と相談。

【βラクタム系以外の抗菌薬】
・βラクタム系以外の抗菌薬については”普通の”市中感染症では使わない。強いて言うなら、非定型肺炎に対するAZM、デバイス感染に対する培養結果判明までのVCM、セフェム系アレルギーの時のCEZの代替としてのCLDMは一般内科医でも使う薬。
・嫌気性カバー、CDI治療薬としてメトロニダゾール(MNZ)も。
・セフェム系の抗菌薬にアレルギーがある場合、2世代以上離れていればOKとは言われているもののセフェム系自体を避けることが多い。

βラクタム系以外の代表的な抗菌薬。基本的に非定型菌、SPACE、MRSAへの対策薬。

【培養について】
・一般的には血液、尿、喀痰培養をルーチンで採取。
・培養は抗菌薬投与前に採取する。菌が消えてしまう可能性があるため。特に尿。容易に陰性化する→尿路感染を疑っていなくても尿培養はとっておくべき。
・「菌が消えるってことは効いてるってことだからいいじゃん」ということでもない。多くの抗菌薬は腎排泄されるので、感受性がなくても濃縮されて排泄される抗菌薬によって陰性化してしまう。菌交代現象により起炎菌ではない菌が生えるかも。
・血液培養は2セットが前提。IEを疑う時は3セット。
・血液培養の適応は?→理想は全例。ただしコストや患者負担を考えて適宜”サボる”。私の中の適応は「血培が頭をよぎった時」。
・その他明らかな創部感染などであればそこの培養±血液培養でOK。

【Empiric Therapy】
・”経験的”治療ということ。診断に応じて抗菌薬を選択する。
・Empiricな抗菌薬選択の背景には「たぶん効くはず」と「外れても大丈夫」がある。
・大きな声で言えないが、一般的な肺炎、尿路感染であればセフトリアキソン(CTRX)を選んでおけばいい。
・CTRXのポイント:1日1回投与。胆汁排泄なので腎機能を気にしなくて良い。髄液移行性もある。というとても使いやすい薬。副作用:偽胆石。
・そこから緑膿菌カバーの必要がある場合(院内発症、免疫抑制状態、抗菌薬曝露歴あり)はタゾバクタムピペラシリン(TAZ/PIPC)。嫌気性カバーの必要がある場合(腹腔内の感染症、膿瘍形成)はアンピシリンスルバクタム(ABPC/SBT)、セフメタゾール(CMZ)。両方カバーが必要かつ、”外したら死ぬ”場合にMEPMを選択すればいい。
・蜂窩織炎はセファゾリン(CEZ)、咽頭炎はアモキシシリン(AMPC)など、もっと狭くていい場合もある。

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