研修医のための集中治療
はじめに
noteの内容
このnoteは集中治療が好きな総合内科医が非専門医向けに書いたものです。主に研修医、集中治療に興味のある学生、たま〜に自分の患者がICUに入ったときに困ってる先生向けに、私が研修医の頃こんな教科書がほしかったというものを作りました。
※注意事項
・私はただの内科医であり、救急・集中治療の専門医ではありません。ご自身が所属先施設の先生から習ったことを優先してください。ただしその分(専門外に求められる)偏りのない知識量であることを自負しています。
・この記事の根拠は私自身が指導医から習ったこと+論文、ガイドライン+(少ないですが)経験から、私自身が正しい常識だと考えているものになります。たまにとんでもない勘違いがあるかもしれません。もしお気づきの点があれば教えてください。
・以前別のnoteでも感染症内科の先生からご指摘をいただき修正したように、今後も加筆修正予定です。
集中治療とはなんなのか
一般病棟とICU管理で何が違うのか。どちらも「病気を治療する」のは同じ。集中治療とは、「病気を治す間に死なないように管理する」ことだと思っています。重症肺炎に抗菌薬治療をする間、死なないように人工呼吸器管理をする。敗血症に抗菌薬が効くまでの間、死なないように循環管理をする。
一般病棟の管理に加えて、意識、呼吸、循環、腎臓、感染、栄養、などの"by system"の管理をするのがICU。集中治療のメインである呼吸・循環管理を中心に、ICU患者を受け持つことでルーチンで評価すべきことをまとめました。
では、本題へ参ります。
呼吸
人工呼吸器管理
まず前提として、人工呼吸器管理の勉強は直接触るのが一番。結局「酸素化と換気に問題がなくて患者が楽そう」な設定を模索する。理論と実際が乖離することも珍しくなく、座学だけでは全体像が掴みにくい。最低限の知識を持って、実際に呼吸器を触って、数字や患者の呼吸様式がどう変わるかを見て学ぶのが一番早く身につく。難しいことは抜きにして、「とりあえず呼吸器を触れる」状態に
なるための情報をまとめました。
✅まず結論
「導入初期はPC-A/C、離脱するときCPAP」
これで9割は問題なく管理できる。
ただ、「うちの病院ではSIMVが多いけどなあ」と思った人もいるはず。上記結論ではSIMVは使わないけど、実際はSIMVがメインの病院も少なくない。個人的にもSIMVは普通に使っていて、最後に”おにだるま式70点の人工呼吸器設定”も紹介します。
ただ研修医がこれから勉強するならやっぱり「導入初期はPC-A/C、落ち着いてきたらCPAP」の方が望ましいので、とりあえずこっちで勉強しください。
✅前提:そもそも人工呼吸器をつける目的は?
まず人工呼吸器は治療ではない。人工呼吸器は、呼吸が良くなるまで”もたせる”装置。肺炎なら抗菌薬、心不全なら利尿薬などが治療であり、人工呼吸器は肺に対してはむしろ害しかない。人工呼吸器が不要となったなら可及的に外すべきだし、人工呼吸器管理中は常に必要性の吟味を行う必要がある。
人工呼吸器がやっていることは①酸素化、②換気、③呼吸筋のサポート3つ。
①酸素化と②換気をごちゃごちゃにしないように注意。酸素化は酸素に、換気は二酸化炭素に関わる。
[モード]
モードの解説に入る前に前提として理解してほしいこと。
「モードは患者の予後に寄与しない」
人工呼吸器でこだわるべきなのはモードよりも細かい設定。これを頭の片隅において勉強してください。
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