ノーウェイホームの温かみ
スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム観ました。その感想を。
もちろんネタバレありです。
観終わった後の心情は「久々にいい映画みたなあ」で、その後色々考えていると「すごい」というシンプルなものになりました。
ここで書くのは客観的ではなく主観的なことなので、全く意味がわからないかもしれませんが、そういう見方をした人もいたんだなあと思ってもらえると嬉しいです。
まず観るにあたって、僕は歴代のスパイダーマンを観ていないし、MCU版の二作(ホームカミングとファー・フロム・ホーム)は観たけど、そもそもMCUに触れ始めたのはエタナールズ公開(21/11/05)の数週間前という超にわか。
でも楽しめたし、すごかった。
今まで観た映画と何が違ったかというと、観た後にとても温かい気持ちになった。
温かい気持ちにさせるには、温かい映画かつ面白い映画でなければならない。なぜなら、つまらないという感情は映画においては強烈だから。面白いと思って映画を観に行っているんだから、裏切りのようなもの。温かいかとか関係なくなる。期待すればするほど、裏に隠れた失望も大きくなっていく。
で、ノーウェイホームは面白いし、温かい。
何が温かいかというと、仲間たちが温かい。
恋人も親友も二人のスパイダーマンもトムホランド・スパイダーマンにとても温かい。
特に二人のスパイダーマンの優しさがグッときた。同じ目線かつ共に闘ってくれる信頼できる存在。頼れるお兄さん。会って間もないのに、あの信頼感、仲間感。
それは学校の屋上でのそれぞれのスパイダーマンの失った人たちの話からもわかるように、彼の気持ちや立場やそういうことが痛いほどわかるからなんだろうなあと思った。
非常に羨ましく思った。
今までそういう映画を自分は観てこなかったのか。あるなら観たいけど、想像してみると、仲間とか友とかそういうのを描く映画は途中でその仲間内で揉めたりすることが多い印象がある。それを乗り越えた絆が何かを成し遂げさせるみたいな。でないと、起承転結が作れなかったりするのだろう。
でもそういう描き方は好きじゃない。仲間は仲良くあって欲しいというゆるゆるな考えがその根拠なのだが。
そこを今回の映画ではショートカットすることができていて、だから純粋に温かい気持ちになれたのだと思う。その描写がなくとも同じピーター・パーカーというだけで絆はできるものね。
パンデミック下というのも何か影響していそうだ。
ここ最近すごくいいなと思った映画はJOKER(2019)とパラサイト(2019)だった。この二つも同じく観た後に衝撃が残った映画だ。
でもノーウェイホームと違うのは、この時はすごく沈んだ気持ちにさせられたという点である。
楔を打ち込まれたというか、「お前は今幸せかもしれんが、こういう奴らもいるんだぞ」というメッセージを受け取ったというか。その衝撃が強いのもあってこの二本は好きなのである。
でも今日においては、現実も不安定になっていてなかなかフィクションに負けず劣らずの世界になっているのではないか。
リアリティのあるノンフィクション(現実)とリアリティの薄いフィクション(映画)があった時にパンデミック前は映画の方が悲惨に描けただろうが、今はどっちが悲惨かという話になってくるわけである。
じゃあ今どういう映画が刺さってくるかというと、温かみのある映画、つまりは真逆の方になってきているのではないかと思った。少なくとも個人的にはそうだった。温かい映画の方が今は現実との落差が大きくなるからすごく刺さる気がする。そして、僕の嫌いな「喧嘩するほど仲がいい」を使わない方法で描かれた押し付けがましくない、必然的な温かみに感動したというわけである。
温かみに関することだけで結構書けてしまったので、後の気に入った部分は箇条書きで。
・グリーンゴブリンの俳優の顔の善と悪での差。悪が特にすごい。露骨に悪。その時のトムホランドの表情もめっちゃよかった。
・三作目だから余計に頭を働かせなくて良い。キャラクターの名前覚えるとかね。
・マット・マードック(デアデビル)と二人のスパイダーマンの登場の仕方が良い。弁護士というワードを散々見せた後に、マットの杖から見せるところとか、来た!!!ってなるよね。
・力を失って解放されたヴィランたちの顔が皆なんともいい。悲しさというか、安堵というか。
・動機がちょうどいい。地球を守るとか、愛する人を守るとか規模が大きすぎて耐えられない。動機は些細なことでいいのかも。
・トム・ハーディの出し方最高。
・仲間は信頼できるという見方から動かさなくていい。こいつはどういう思惑なんだ?とか考えるエネルギーがいらなくて没入度上がった。
っていう感じですかね。
思いのほか自分の心に響いて、映画そのものを深く観れていないような気がするので、二回目行きたいですね。
ってことはやっぱりいい映画なんだ。
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