中南米移住者の生活事情。
アメリカ移民事情 違法移住仲介業者 コヨーテ
仕事柄、ラテン系移民にはよく会う。というかこの業界(食品、飲食業)又はその他生活に必要な工務員、土木作業員、サービス、清掃、普通に生活していてよく目に入るものに、この地域の人種が関わっていない業種というのは存在しないのではと思う。特に西海岸ではあり得ない。
自分が知っているレストラン関係のような職種でも、ミシュラン星付き高級店から、ダイナーの様な大衆食堂のようなところでも、7割から8割近くは彼または彼女らが労働者の大多数を占める。
高級店、ホテル、などのユニオンが存在する所と、個人店などの違いを挙げるとすればその連中が、違法滞在者か合法かとの違いぐらいではないか? 違法で何年もいるなんてのも良くいて、全員が一気にいなくなれば経済が機能しなくなるだろうと思う。
出身国は、カリフォルニア州から近場という事もあり、中南米諸国、すなわち、メキシコ、グァテマラ、エルサルバドル、ホンヂュラス、が主となる。
中南米出身で違法でここに来た連中に共通していることは、アメリカに来た手段。少ない例外を除けば、ほぼ全員違法移民仲介業者コヨーテを使って来ている。20年以上ここにいて、今まで会ったラテン移民の中で正規のルートでここに来た人々は1割を超えないと思う。
コヨーテ。
最初にコヨーテの事を知ったのは、あるレストランで働いていて仲良くなったメキシコ、ユカタン半島出身の連中が発端だった。
ある日彼らが次の日の朝が早いとこぼしていた。店が閉まってから(夜11時)次の日の朝は4時起きとの事。どういった事だと言うと、ある市内の駅まで三人の内の一人の兄弟を迎えに行かなければならないといった話。
しかもよく聞いてみるとそこに朝四時に小型のバンで何人かと一緒だと言う。向こうの英語はまあ通じれば良いか程度で、こちらののスペイン語も小学生以下といった状況だったので、説明されて理解出来るまで少し時間を要したが、どうも違法で来るようだ。
よく聞くいてみると、その乗合バンは毎朝同じ時間に決まった場所に来るという。ということは毎朝南の方から違法移民が来てるってことか?
ちょっと信じられなかったがその日はそれで終わりになった。
次の日、彼らに職場であった時に兄が来ると言っていた張本人に、どうだったか聞いたところ、特に問題はなかったようだ。
その後いろいろと驚くことを教えてくれた。
まずその旅費?というか移動費用。その当時(2007)で3500$ もちろん現金。彼らにとっては大金だが数ヶ月も働けば元手が取れるらしい。確かに彼らの生活の仕方なら可能だと思った。ワンベッドルームに十人単位で住み込んだりする彼ら。仕事を二つかけ持つのも、珍しくはない。
なんと今日到着した彼の兄の職場は、すでに決まっているらしい。
レストランの皿洗い兼ジャニターらしいが、彼ら中南米出身者の、その横のつながりに唖然とした。
違法で来てもう次の週から仕事をして収入を得ることが出来る。もちろんこっちでいう、アンダー ザ テーブル、といったキャッシュだけの支払いでIRS( 米国国税庁)には後は残らない。しかし、その後実はもっと巧妙なやり方でこの国に堂々と違法で滞在して、そんな簡単には捕まらず生きていけるといった方法もあるということを彼ら”ユカテコ”(ユカタン出身者のニックネーム)から知った。それらに付いては別の機会に書こうと思う。世界には結構いろんな方法で、正規の証明書の違法コピーが出回っているんだと思った。
さらに、元コヨーテをやっていたというメキシカンとも別の店で一緒に働く機会があった。
コヨーテを辞めるからは、レストランで調理人とし働いていた彼は、話を聞いた時には、こいつ大丈夫か?と思ったが、外見はいたって普通、仕事もきっちりこなすメキシコ中部の出身者だった。
彼が話してくれたところによると、コヨーテはそんなに儲からないらしい。末端の、違法移住者運び人のような彼のところには、上にいる、運営者である犯罪カルテルに、経費その他を差し引かれるとそこまで残らなかったようだ。
コヨーテにもいろんなレベルがあって、ビジネスクラス、ファーストクラスではないが金額でいろいろとサービスが変わるようだ。
このことを教えてくれた彼はテキサス経由サンフランシスコだったが5000$でロサンゼルスまでの道を選んだ。6000$だったら自分運転の車がサンフランシスコまでオプションでついていたらしい。ここに来たのはまだ19才の時。
すでに先に移住していた父親と一緒に生活していた。出会ったときでもまだ21歳だった。
じゃあ、一番安いやつってのは?と聞いたら1500$でアメリカ国境(テキサス近辺が多いらしい) を案内人コヨーテと一緒に、しかも徒歩で乾燥地帯をわたり、こちらアメリカ側に来た後はご自由にといったもの。ボトルの水はサービスでついてくる。なんだか冗談のようだが、日中移動中に、脱水症状にかかり、死ぬこともあるらしいが、移動は主に涼しくなってボーダーパトロールのチェックも薄くなる夜間。
しかし、来たはいいが英語分からず、広大なアメリカでどうやって生きていくんだと聞いたら、かなりの確率ですでに来ている親族などと初めは一緒に暮らすらしい。
さすがアメリカ、ここに住んで、何年経っても驚かされることがある。