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「海外に行く日本人」は時代とともに変わっていく! 出稼ぎからノマドまで

ツイッターを何気なく見ていたら先日、下の趣旨の投稿を目にしました。ツイートしたのはおそらく、海外ノマドを謳歌中の日本の若者。

「(日本では)なぜ海外に行く人=無職だと思われているのだろう。海外はあくまで旅行する場所だ、という認識がまだまだ根強いのでしょうか。この感じ、日本人特有だと思う」

時代の最先端を行く日本の若者の「感覚」が垣間見えて興味深かったので、シェアします。と同時に、「海外に行く日本人」が時代とともにどう変わってきたのかについても考えてみます。

まず、言わずもがな、観光(ツーリズム)は世界の一大産業です。世界の国内総生産(GDP)に観光が占める割合は、コロナ禍の間こそ5%台に落ち込みましたが、通常はだいたい10%前後。これは農業(4%)の倍以上です。

つまり、観光業の「顧客」である旅行者は世界的(主に先進国出身者)に多く、日本人だけではありません。

ただし、途上国の庶民に限ると、出稼ぎだったり、難民だったり、また海外に行くのが難しいケースも少なくないのは周知のとおりですよね。

▽ご参考
https://statista.com/statistics/1099933/travel-and-tourism-share-of-gdp/https://data.oecd.org/industry/tourism-gdp.htm

次に、「海外に行く日本人」が時代とともにどう変わってきたのかをみてみましょう。私(ganas編集長)の主観も多少混じっていますので、そこはご容赦ください。皆さまからのご意見をいただけると嬉しいです。

①戦前:出稼ぎ・移民の時代

かつては東南アジアはもとより、アフリカのザンジバルまで行って、売春していた日本人女性(からゆきさん)もいた(ザンジバルの宿はまだ残っている=トップ画面の写真)。からゆきさんについては「サンダカン八番娼館」(山崎朋子)という本に詳しい。

とはいえ日本人全体からみると、出稼ぎ・移民は少数派。日本は島国ということもあって、大半の日本人にとって海外は遠い存在だったと想像する。個人的には、いち早く海外へ行った先駆者に敬意を表したい。

②戦中:兵士として戦場へ行く時代

「近代日本戦争史事典」によると、第2次世界大戦が終わった時点の日本軍の兵力は外地で340万人(陸軍300万人、海軍40万人)といわれる。このなかにはインドネシアにとどまり、オランダとの独立戦争を戦うインドネシア軍に加わった旧日本兵もいた。これについては映画「ムルデカ MERDEKA 17805」をご覧あれ。

ちなみに外務省の統計では、現在(2022年10月1日時点)の海外在留邦人は130万8515人。これは日本人のおよそ1%。戦中はある意味、海外との接点が多かった。

③終戦~1950年代:移民の時代

貧しかった日本(要は途上国だった)。国策としての口減らしが、南米へを中心とする海外移住を促すことだった(ただ二世・三世がその後、バブルに入った日本に“出稼ぎ労働者”として逆流するように)。

ただ全体としては少数派。ほとんどの日本人にとっては日々の糧を得るのに精いっぱいで、海外に興味を抱く余裕すらなかったのではないか。

④1950年代~1985年:日本企業が海外進出し始めた時代

「ポスト・移民の時代」が到来。日本の大企業は60~70年代から海外(北米、東南アジアなど)に進出し始めたが、これに伴い、海外出張に行くサラリーマンや駐在員(とその家族)が増えてきた。

ただ当時は、多くの日本人にとって海外に行くことは一大事。わざわざネクタイを締めて飛行機に乗り込む人もいた。余談だが、日本の60~70年代は、いまのベトナムやタイと重なって見えないこともない。

⑤1985年~:いきなりやってきた海外旅行の時代

85年8月のプラザ合意(1ドル240円が一気に100円を切っていく円高に)、その後のバブル景気の恩恵を受け、日本人にとって海外は一気に身近になった。「海外旅行の時代」の幕開けだ。バックパッカーも徐々に出てきた。彼らにとってのバイブルは、言わずと知れた「深夜特急」(沢木耕太郎)だ。

私が最初に海外(アメリカ・カリフォルニア州)に住んだのは1985~89年だったが、日本人観光客が年々増えていくことに驚いたし、彼らの振る舞いに恥ずかしさを感じたことを覚えている(まるでかつての中国のよう)。

とはいえ、海外旅行はこの時点ではまだまだ、海外に興味がある人/お金に余裕がある人が主流だった気がする。その証拠にツアー客が多かった。

ちなみにこのころはすでに、ロサンゼルス近郊だけでも4つの日本人学校の補習校(土曜のみ通う)の校舎があった。海外(生活者)といえば駐在員とその家族というのが私のイメージ。日本企業がイケイケドンドンの時代でもあった。日本では「国際人」「国際化」という言葉が流行っていた。

⑥1990年代:海外旅行が一般化&脱アメリカ一辺倒の時代

私の周りをみる限り、多くの普通の日本人(海外にさほど興味がなかった人たちも含め)が気軽に海外へ行き始めたのがこのころだ(ただ実際は、海外に行かない/ほぼ行かない人も少なくなかったのが現実)。

と言っても、90年代前半はアメリカ一辺倒。90年代の中ごろから東南アジアなどへ行く人も増えていった気がする。鈴木保奈美や唐沢寿明、江口洋介らが勢ぞろいした連ドラ「愛という名のもとに」には、東京のフィリピンハブにハマる証券マンが出てくる。

私は94~99年に東南アジア(タイ、フィリピン、インドネシア)に住んでいたが、タイ・バンコクはすでに、日本人観光客であふれていた(いまはスクンビット界隈に駐在員家族があふれている)。

また、タイで暮らす日本人も当時から数万人はいた。すでに現地でビジネスを立ち上げる日本人も(もちろん少数派)。ただネットがそこまで普及していなかったので、ノマド的な人は皆無だった。

⑦2000年代:途上国への留学&スタツアの時代

米国、東南アジア以外の国にも行く日本人(旅行者)が増えてきたように思う。ラテンアメリカを旅していても90年代前半とは比較にならないぐらい日本人と会うようになった(ただし行った場所が違うので、厳密にはわからない)。

海外旅行がより一般化してきた印象。と同時に、途上国へ留学する日本人も増え、珍しくなくなった(日本全体ではもちろん少数派)。スタディツアーも登場した。

私は2006~08年に南米(ベネズエラ)に住んでいたが、海外で暮らすことも珍しい時代ではなくなったなと実感した。

⑧2010年~:アフリカで起業する人も出てきた時代

全体から見るとものすごく少数派だが、アフリカで起業する人が目につくようになった。しかも80年代に東南アジアで起業した日本人とは異なり、「志の高い人」が多い印象。

85年から続いてきた「海外旅行の時代」が少しずつ変わり始めたといえるかもしれない。もちろんまだまだ旅行者のほうが圧倒的に多い。ただこの傾向(数字的な意味で)はおそらく、観光が世界の一大産業である限り(言い方を変えれば平和である限り=観光業は平和の象徴)、または日本経済が没落しない限り変わらない気がする。

⑨2020年~:ノマドが出てきた時代

もちろんまだまだ少数派だが、私の周りを見渡しても、海外ノマドがちらほら出てきた。コロナ禍が拍車をかけた。この最新トレンドはしばらくは拡大していく気がする。私もいろいろ落ち着いたら、この選択をするかもしれない。ただいまは日本の生活コストが安いので、そこは悩みどころ。

また、日本より給料の高い海外へ“出稼ぎ”(海外就職)に行く若者も出てきた。出稼ぎ労働者を受け入れる国から出す国へ。これは、プラザ合意とバブル景気を端緒に始まったひとつの時代が終焉に向かっていくことを意味するのかもしれない。

⑩これから:どうなる/する日本人?

日本経済の弱体化と、それに伴う円安‥‥。海外(旅行なり、生活なり)=安い、という時代は終わりつつある。だれもが海外に気軽に行ける時代はいつまで続くのか。海外志向の日本人と内向きの日本人の二極化がますます進むかもしれない。

皆さんはどう思いますか?

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