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どこよりもシンプルなタイ総選挙の解説

きょうはタイ総選挙(下院議員選挙)。ごくごく簡単に解説すると、こんな感じ。
 
タイは上院と下院の二院制。今回は下院の500議席を争う。ちなみに上院の250議席は国軍が事実上指名する(選挙はない)。
 
タイの政党は大別すると、下の3つのグループに分かれる。

①タクシン派


タクシン元首相を支持するグループ。党名は「タイ貢献党」。北部が地盤、貧困層が主な支持基盤。貧困層へのバラマキを得意とする。なので選挙にとても強い政党。2000年代に入ってから、タイの政治は良くも悪くもタクシン派を中心に回ってきた(それまでは民主党)。
 
タイ貢献党の首相候補はぺートンタン氏。彼女はついこないだ(5月1日)、第2子を出産したばかり。父はタクシン元首相、おばはインラック元首相。タクシン家から3人目の首相(しかもここ20年という短い期間で!)が出るかどうかに注目。

②親軍政党


元軍人が率いる政党。王室を支持するのが特徴。バンコクが主な地盤。王室好きのタイ人から支持を得てきた。ただ現在の国王(ラマ10世)は、前国王(ラマ9世)と異なり、評判は芳しくない。
  
現在は「国民国家の力党」と「タイ国家開発建設党」に分かれる。プラユット現首相はもともと、国民国家の力党に所属していた。ところが、党首・副首相・軍人時代の元上官であるプラウィット氏との党内での権力闘争に敗れ、国民国家の力党は首相候補にプラウィット氏を指名した。
 
このためプラユット氏は、自身の支持派が立ち上げた新党「タイ団結国家建設党」に参加し、首相の続投を狙う。ちなみにプラユット氏は2014年の軍事クーデター(タクシン派から政権を奪った)を起こした張本人。彼が国民国家の力党から抜けた事実に注目。

③革新系


今回の選挙で台風の目になると見られているのが、革新系の「前進党」。若者から絶大な支持を受ける。前身となる政党は「新未来党」で、前回(4年前)の選挙では旋風を巻き起こした。ただ巻き起こしすぎたことから、解党命令を受ける羽目に。
 
前進党が革新系といわれるゆえんは、王室改革、不敬罪の罪を軽くすることなどを公約に掲げているため。これはある意味、王室を敵に回すことを意味する。
 
こうした3つのグループを軸に選挙戦が行われているのがタイの総選挙。タイの首相は750人の上下両院議員(上院の250議席は親軍政党が事実上指名する)の投票で決まる。
 
大方の見立てでは過半数をとれる党は出ず、タクシン派と親軍政党(クーデターを起こしたプラユット氏が抜けた国民国家の力党)が連立政権を組むのでは、というのが現実的。早い話、民主派と親軍というイデオロギーが異なる政党(クーデターを起こされた人たちと起こした人たち)が一緒に政権を運営するということ。これは可能なのだろうか?
 
ただもし前進党が大躍進を遂げればどうなるのだろうか?
 
以上、選挙の注目ポイントをシンプルに解説してみました。投票日はきょう5月14日(日)。トルコの大統領選と同じ日。

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