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ニジェールのクーデターから考えたこと、旧フランス領の運命なのか

オンラインで現在開講中の人気プログラム途上国ニュースの深読みゼミ(8月)。受講者のみんなでいろいろ調べてシェアし、わかったことをもとに考えを言い合うこのプログラムで今週取り上げたのは、下の「ニジェールで起きたクーデター」の記事(8月4日付の日経新聞)。

ニジェール、フランスとの軍協定破棄 過激派対策停滞も

深読みを通じて「わかったこと&考えたこと」の一部を下に書きとめます。こんな読み方をすると国際ニュースは劇的に興味深くなると思いませんか?

・旧フランス領は旧英領などと比べて発展が遅れている。
1人当たりのGDPのランキングをみても一目瞭然。またその最たる例が、アフリカではなくカリブ海の国ですがハイチ<旧フランス領>です。同じ島にあるドミニカ共和国<旧スペイン領>と比べて著しく貧しい)

・上の理由として、植民地支配の名残が影響している可能性も(統治方法、鉄道をはじめとするインフラなど)。どこの植民地になったかがその後の発展度合いが変わるとすれば、なんともいえない不条理。

・マリやブルキナファソなどの西アフリカでテロ掃討作戦(セルバル作戦、バルカン作戦)を展開してきたフランスが成果を出せなかったため軍を引き上げると決めたことが逆に、アフリカ諸国の嫌仏感情にさらに火をつけた。
(普通は逆になりそうだが違う。日本の原子力発電所をとりまく立地地域の状況もかつてはこんな感じだった)

・テロ掃討作戦を展開してきたフランスはイスラム過激派の怒りを買い、2014年(セルバル作戦が始まったのは2013年)ぐらいから本国でテロ攻撃を受けてきた。

・フランス軍の撤退という間隙を縫って、ロシアのワグネルが入ってきた。フランス嫌いをあおる偽情報を流す。アフリカの独裁者からするとワグネルに守ってもらえる。独裁者とロシアの利害の一致(ロシアは見返りに資源を得る。このお金がウクライナとの戦争に使われているとも)。

・民間軍事会社はワグネル以外にもある。米国のアカデミ(旧ブラックウォーター)、南アフリカのエグゼキュティブ・アウトカムズなどが有名。ほかにもある。鉄道や通信、郵便局のように、将来は軍が民営化される時代が来るかもしれない(軍事サービスを提供して稼ぐ)。

ニジェールの貿易相手国をみると、アラブ首長国連邦(UAE)、中国、フランス、米国、ナイジェリアなどが上位を占める。金をはじめ鉱物資源もとれる。経済は政治の方向性に強い影響を与えるので、ニジェールが本当に脱フランスを進められるのか注視したい。西アフリカの共通通貨であるCFAフランの行く末も含め。 

・ニジェールは国家予算のおよそ65%をODAが占める。ODAが止まることは避けたいと考えるのが自然。西側から完全に離れる決断はとりにくい? どちらかに完全につくのではなく、バランスをとっていくのではないか? ただアフガニスタンは2017年のデータで国家予算に占めるODAの比率は51.4%だった(タリバン政権はこれをどう考えていたのだろう)。

・フランスだけではないが、旧宗主国は旧植民地への支配力を維持したい(得したい)。ODAの配分も旧植民地を重視。ただフランスが国別で最も援助しているのはブラジルとモロッコだった。西アフリカには小さい国が多いとはいえ、気になるデータ。 

・脱フランスを進める代表的な国がルワンダ。学校での教授言語をフランス語から英語に変更。旧英領ではないのに英連邦にも加盟。貿易相手国を見てもフランスのプレゼンスはほぼ皆無

・アフリカでは実は隣国同士の戦争は少ない(コンゴ紛争をはじめ、資源をめぐる紛争は大国も絡んでいる)。これをどうみるか?

・ODAをどう考えるか? 計算方法にもよるが、日本の場合はだいたい軍事費の10分の1。1人当たり年間2万円。しかも人道支援だけでなく、国益につながるプロジェクト(港湾設備や工業団地をつくったり)もたくさんある。

・ちなみに経済協力開発機構(OECD)傘下の開発援助委員会(DAC)は国民総所得(GNI)の0.7%を援助に振り向けるというルール(国際公約)を策定し、日本も批准している。だが日本の数字は年にもよるがだいたい0.2~0.3%。2022年の暫定値をみると0.39%にアップしていた(これでも公約の半分ちょっと)。

などです。ほかにもたくさん出ました。

途上国ニュースの深読みゼミでは毎回(全4回)、2時間超という短い時間でこんなことをみんなで調べ、考えます。国際ニュースは「筋書きのない大河ドラマ」みたいなもの。途上国ウォッチは勉強というより好奇心を刺激してくれます。

ご関心のある方は次回の募集をお待ちください。秋・冬に開講する方向で現在、日程を調整中。ganasのウェブサイトの「お知らせ欄」で告知します。